笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

ミルクボーイの漫才を分解したらレジェンドが出てきた。

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こんばんちは、スーパー太っちょWebディレクターです。
スーパーは太っちょにかかります。

分解したんですよ。
いま・・・じゃなくて、これを書いたときに。

toksato.hatenablog.com

 

当時、ミルクボーイ漫才フォーマットのブログ記事が結構出てたましたねぇ。

他の人はどうか知らないけど、僕は↑の記事を書くために、録画してあったM-1のミルクボーイ決勝ネタ、何十回も観ました。
通しでみたり、止めて・巻き戻してを繰り返したりしてもうほんと何度も何度も何度も。

そこで笑いのド素人なりに、そのとき気づいたことをまとめておこうかなと。
そうやって、「ミルクボーイはやっぱりすごいなー」って思ってる人が、これを読むことによって「ミルクボーイってやっぱりすごいなー」と思ってもらう記事です。

そういう、Webディレクターが漫才ネタを分析するという意味不明というか、建築家がAKBを分析するみたいなよくわからない回ですヨロシクシクヨロ。

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。

 

■目次

 



 

ミルクボーイ漫才の真髄は「ほな〜とちゃうやないかい」ではなかった

ミルクボーイ漫才といえば、「おかんが名前を忘れた」からスタートする
「それはもう、○○やないか」
「ほな、○○と違うか〜」
という駒場さんのつぶやきに対する内海さんのYes/No。
これが非常に特徴的で、こここそがミルクボーイのミルクボーイたる由縁な部分だと思ってたんよ。

でも違ったんよ。

なんでかっていうと、それで一度記事を書いてみたらクソつまんなかったからw

いや、たしかにわかりやすくはなる。
わかりやすくはなるんだけど、それたぶんミルクボーイの漫才スタイルじゃなくてもわかりやすくなるはず。
ハライチでもいいし、スピードワゴンでもいいかもしれない。
要するに型が決まってるから、読者が余計なことを考えずに内容が入ってくる。

つまり、ミルクボーイ漫才で表現するとわかりやすくなってるのは、実はネタそのものじゃなくて「みんながその型をすでに知っているから」っていうのがとても大きいのではなかろうか、と。
だから、たぶんやろうと思えばハライチでもできる。「○○なやーつ」に対してノリツッコミで正誤の両パターンを説明していけば良い。しいて言えばミルクボーイ漫才は否定と肯定というシンプルな返しが起点になってる、ぐらいか。※まあ、それただのQ&Aもそうなんだけど。

 

ミルクボーイ漫才メソッドはYes/Noを発射台としたパワーワード

いったい何が違う?

自分の書いたブログ原稿と実際のミルクボーイ漫才と、何が違うんだ?
と、何度も何度も録画を見返したわけですよ。

で、わかったこと。
ミルクボーイは実は「強烈なあるあるネタ」なんだと。
たとえばコーンフレークネタの「パッケージにかいてる五角形むちゃくちゃデカイ」は典型的。あ!たしかに!そうそうそう!w・・・っていう。

ミルクボーイ漫才のメソッドとしての中心は、駒場さんのつぶやきに対する内海さんのYes/Noじゃなくて、そこを発射台とする内海さんの振り回しとあるある型パワーワードの方である、と思ったわけなんよ。

一見すると「ほな○○ちゃうやないかい」が面白く感じてしまうんだけど、実はフレーズだけみたらそんなに面白くない。あれが面白く感じるのはその後の内海さんのまわしがすごくて、そこへの期待がその手前の「ほな〜ちゃうやないかい」にのってるだけで。

だから、どんなに

「それはもう、○○やないか」
「ほな、○○と違うか〜」

の形で原稿をつくっても面白くならない。*1
そりゃ肝心のパワーワードの方が練られてないんだから。

それに気づかず、うわべだけなぞってた僕はおバカさんだったなぁと、あとで思ったりもしたわけで・・・。

 

かといって、ミルクボーイはただのあるあるネタ漫才ではないのよ

でも、エンタの神様に出てるような凡百のあるある芸人とはだいぶ違う。

何が違うか。
ミルクボーイのネタはあるあるネタをそのまま出すだけにせず、それを材料としてどう料理したら良いかまでをセットにしてるところ。

といっても、基本的な形としては2種類しかない。

  1. 誰もが気づいてない目の覚めるような"あるある"→そこから妄想を広げてシチュエーションネタに持っていく
  2. 先に明らかにおかしいフックを置く→誰もが認識している"あるある"と先に置いたフックを絡めた例え話に持っていく

1が"あるある"自体が強い場合。
この場合はそのあるあるを発するだけで笑いになるので、次にそれを妄想や例えで広げて大きな笑いをつくる。つまり、すでにある程度の大きな火力があるので、そこに追加の油を注ぐだけでもっと大きな火になるという感じ。

たとえばコーフレークのネタでいうと先にも出した「パッケージにかいてる五角形むちゃくちゃデカイ」とか「生産者さんの顔が浮かばへん」がこれにあたる。これ単体で「たしかにそうだwwwww」という笑いの強さを持ってる。

 

2は、逆に"あるある"が弱い時。
「人生の最後がコーンフレークでええ訳ないもんね」とか「精進料理にカタカナのメニューなんか出ぇへんのよ」がこれ。もともと、聞く側もはじめからそんなことわかってる。だからこれ単体では笑いにならない。ゆえに、先に駒場さんの方が「お坊さんが修行のときも食べてるっていうねん」っていう、大げさなフックを仕込む。そしてこのフックがあるからこそ、

「コーンフレークはね 朝から楽して腹を満たしたいという煩悩の塊やねん」

っていうのが活きてくる。
基本的にはこの2つのパターンであり、さらにいうと2が多い。

なんでかっていうと、1はそもそも「もの凄く強いあるある」を探さないといけないから難しい。それに比べて2のパターンはすでに見つかってるあるあるに対して、前後でフックと回収を置けばいいのでつくりやすい。

ミルクボーイのネタがよくできてるのは、この仕組みをつくったことなんだなと思って。この仕組みによって内海さんの語彙力とか展開力がきっちりハマるようになってるんだろうなと。

 

すごいのは仕組みだけじゃない

そして、リズムや言葉選び、スタンスにいたるまですべてそこに向かうようにつくられてる。

大きな枠組みとしてあるのは、

"ちょっとトボけた兄ちゃん"である駒場さん

 と、

"おせっかいでなんだかちょっとズレた物知りおじさん"の内海さん


だから、内海さんはネタが進むにつれて勢いや声は大きくなるんだけど、決して汚い言葉は使わない。あくまでも"優しくてちょっとズレたおじさん"なので、どこまでいっても丁寧に、一緒に考えながら教えていく形。だから、いわゆるボケとツッコミの関係である「おかしなボケを正す」みたいな言葉はまったく出てこない

勢いが増しても、あくまでも”優しいおじさんがだんだんヒートアップしているだけ”なので
「〜なのよ」
「〜と思うで俺は」
「〜もんな」
みたいな優しい言葉を使う。

一方で、何もしてないように見える駒場さんも結構重要で、実はしっかり聞いてると、意外と肯定する相槌を打ってる。「そやねんそやねん」とか「せやねんな」とか。

これが、一見無駄なようでとても強い働きをしているなと、録画を何度も見て思った。

 

どういう機能か。

それは、内海さんがだんだんヒートアップしていく中で、彼を怖い存在にしないようにすること

内海さんがずーっと喋っちゃうと、どうしても説教に見えてしまう。いくら強い言葉を使わなくても、大きな声で説教してるように見えちゃったら駒場さんがいじめられてるように見えて笑えない。

しかし、今度はそのままだとヒートアップして声を大きくしたりできない。

でもそれだと漫才が終盤に向けて大きく力強くなっていかない。

だから、内海さんの感情を見せるためには、逆に駒場さんが途中途中で相槌打って流れを切り、そして二人があくまで対等であることを見せる必要がある。そうしないと、リズムがでないしキャラ作りが失敗しちゃうから。

 

文字の詰め方も研究されてるっぽい

ミルクボーイのメソッド使った記事書いてて、いつもの何倍も1文字のレベルまでウンウンうなってたんだけど、ほんと分析すればするほど芸人さんはすごいなと思ったんよ。

たとえば、僕が書いた記事の

「Webディレクターはデザインもしなければコーディングもせぇへんねん」

っていう内海さん側一発目のフレーズ。

これ、普通なら(そして内海さんみたいな人の喋り方なら)こうした方がいいんよ。

「Webディレクターはな、デザインもしなければコーディングもせぇへんねん」
※「〜はな、〜やねん」と一回切ってます。

こうした方が絶対に内容が入ってくるし、故に言ってることの理解もしやすい。

実際、僕ははじめこうしてました。
でも読んでみるとぜんぜんダメ。

内海さんの口調は、長めの文章を区切らずに一気に喋ることが多いんだけど、あれはたぶん「素早く一番肝となる部分へ持っていくため」。

内海さんの口調で以下を脳内再生してみてほしいんだけど、

「あの回るテーブルの上にコーンフレーク置いたら回した時全部飛び散るがな!」

とか、
実際読もうとすると

「あの回るテーブルの上にコーンフレーク置いたら、回した時全部飛び散るがな」

の方がわかりやすいし、
口頭だとしても

「あの回るテーブルの上にコーンフレーク置いたらな、回した時全部飛び散るがな」

の方が頭に入りやすい。

でもそうすると受け取る側に一拍できてしまって流れが切れる。すると一瞬であろうとも少し冷静になって後半のインパクトが弱くなる。

だから、一気に流れるように

「あの回るテーブルの上にコーンフレーク置いたら回した時全部飛び散るがな!」

になる。

逆に言えば、内海さんのツッコミは流れで持っていって相手の脳みそが冴える前にパワーワードを打ち込む、という形にしてる。
「あー、ほーーあーあーあー!!!!なるほど!!!(笑)」
という風に。

そのためにあえて長いセリフを区切らずに一気に喋ってるっぽい。
そういう意味でいうと、僕の記事で書いた
「何かを作ってるようで、何も作ってない!」
は間違いで、ミルクボーイ仕組みに沿うなら読点は無いのが正しい

しかし
「何かを作ってるようで何も作ってない!」
だと、どうも内容が入って来づらい。

たぶん、これは実際にミルクボーイがネタとして喋るときには気にならない。抑揚や声の大小を変えることで伝えられる。だが文章はそうはいかない。どれだけ脳内再生できるように書いても、やっぱり読む人によって違いが出てしまう。

また、このへんはWebディレクターという専門職をネタに取り扱ってるジレンマなんだけど、どうしても先に「デザインもコーディングもしない」ということを出しておかないといけない。

これがたとえばお互いがWebディレクターでこういう前提がもうセットされた状態なら、そして会話なら「Webディレクターなんて何かを作ってるようで何も作ってない」でじゅうぶん笑いになる・・・と思うw。

しかし文章にしてより幅広い人を対象にするとなるとどうしても前提を書いておかなきゃいけなくなる。すると、
「Webディレクターはデザインもしなければコーディングもせぇへんねん。何かを作ってるようで何も作ってない!」
になり、さすがに長すぎる

そして長い割に、ドカンとさせたい後半の部分が短すぎてインパクトが与えられない。
なので、実ははじめは「何かを作ってるようで何も作ってない」しかなかったんだけど、この部分をもっと強くするために後ろにさらに追加して、こうなったわけ。

==========

内海: あー、ほな、Webディレクターと違うかー。Webディレクターはデザインもしなければコーディングもせぇへんねん。何かを作ってるようで、何も作ってない!しかし不思議と何かを作った気はする!それがWebディレクターやねん。

==========

ここ、じつは今でも納得いってないw
もっとうまい言い回しがあったんではないかと、悶々としている。

でも、こうやって芸人さんのネタを切ったりつけたりして分析することで、いやーやっぱ笑いをつくるひとはすげーんだなーって思ったですよ。今回はそれが一番の収穫だと思っていたり。

 

分解してみてるうちに出てきたレジェンド芸人

ミルクボーイ漫才の構造、分析してて誰かに似てるんだよなぁと思ったんよ。

そして、僕なりの結論。

ミルクボーイ漫才の構造は、島田紳助さんのトークの構造とよく似てる。

1つ例を出すと、「コーンフレークが煩悩の塊」って、紳助さんも言いそうだなぁと。

たとえばこんな感じに。
※以下、島田紳助さんが「行列のできる〜」で喋ってると思って脳内再生してみてください。

「朝からコーンフレークとかオートミールとか食うてるやつ、おるやん。若い女性な。朝からヘルシー手軽で私スマート女子代表ですーみたいな顔してな?皆もスマートでオシャレな人やなーとか思てるやろ?ちゃうねんで。あんなんぜんぜんスマートやないで。考えてみぃ、この国で一番スマートなんは誰や」

 

「な?世の中欲望だらけやがな。星の数ほどあるわ。そんな欲望に負けず、質素に、シンプルに、そして健康に、きちっとしながら粋なやつが、これがスマートやないか。な?おるやないか、我がこの日本に。坊さんや!お坊さんこそほんまのスマートやないか!」

 

「ほなおまえな、彼らが食うてるのは精進料理や、な?精進料理にコーンフレーク出ると思うか?でぇへんでぇへん!コーンフレークなんておまえ、箱から皿に出して牛乳かけるだけやで?あんなんおまえ、手抜きの極みやんけ。コーンフレークはな、朝から楽して腹を満たしたいという煩悩の塊やで」

 

「そんなもんをな?、朝からヘルシーなスマート女子ですぅーな顔してな、ぜんぜんちゃうねん。あいつら毎朝煩悩に牛乳かけて食うてるだけやねんて!おまえらは騙されとる!気付け!」

これね、つまり例え話と一緒なんだけど、その物事や事象を構造化して、そしてそれと似た構造のものを持ってきて説明する。
さらにそれを腹抱えて笑えるレベルまで面白くするっていうことなんよね。おそらくミルクボーイがネタを作る時もそうやってるんじゃないかなと思ったり。いやぁ、すごい。

いや、だからこれ逆にいうと、台本を事前に練ってるわけでもないのに即興でそれがポンポン出せる島田紳助という人が、どれだけの天才だったかっていう話でもあるんですけどね。

 

最後に

という感じでWebディレクターが分解して分析してみたよ、という記事なんだけども。
本当はこれ公開するつもりありませんでした。
だから、元の「ミルクボーイが「Webディレクター」を説明したら」の記事から半年以上も経ってるんだけど。

自分の分析が間違いなく当たってるなんて微塵も思わないけど、もし当たってたら、そして万が一にもバズったら(まあこんなオタク記事バズらないだろうけど)ミルクボーイさんに迷惑かけかねないと思って控えてました。

でも、彼らはやっぱりとんでもない才能のあるひとで、M-1の時のスタイルからきっちりアレンジを入れてきたり、何より僕が今でもミルクボーイを見て笑えてるので、大丈夫かなと。

なので公開してみました。

さー、もっとみよう(何を)

 

*1:わかりやすくはなるだろうけど