そうなのだ。
それでいいのだ。
ではさようなら。
うそー、うそだからーもどってきてーもうちっとだけつづくんじゃ。
久しぶりに思いっきりWebとかデザインのお話。
「デザインには目的や意図がある」とは、さすがにもう多くの人が認識していることであろう。拙者、そう思うんよ。さすがにいまどき「社長の顔とメッセージをトップページにドカーンと!」とかいうサイトオーナーも、それを引き受けるWebデザイナーもそうそういないかなと。
だがしかーし「誰のために」「どういう目的で」「このデザインをつくるのか」ということをきちんと確認し、そこからデザインの仕様(方向性とか形状とかいろいろ)を固めても、こういうことが起きてしまう。
クライアント「こちらの意図をくみ取ってくれない」
デザイナー「がんばってデザインしたのに後から違うことを言われる」
おおなんとかなしいことか。
もう仕事なんてやめよう。そしてみんなビール片手にホルモンを食べに行こうではないか。発注者も受注者もホルモンの前では関係ない。シマチョウの前ではみな平等なのである。そうやって、来週の自分に期待をして週末のビール活動に勤しんだこと、数えきれないこと山のごとし。
やめましょう。ビールに逃げずにデザインに向き合いましょう(謎)
さて、なんでしっかりと目的や意図を共有し、仕様もある程度決めたのに認識の齟齬が起きてしまうのか。
それは、目的の向こう側を共有してないからなんよ。
そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。
"目的"や"意図"は「ゴール」でしかない。
「デザイン*1は機能であり、手段でしかない」
これはもうだいぶ世間で言われてきて、デザインの素人であるクライアント側もそれを理解してデザイナーや制作会社に発注していると思う。たぶん。
なんのためにそのデザインをつくるのか。どこの誰に向けて、どんなアクションを起こしてもらうためにつくるのか。ひいては、ビジネスにおけるどこの部分に貢献するために、そのクリエイティブが存在するのか。
ゴールを共有することは間違いなく一番大事なこと。
けれども、それだけで事足りるのかといえばそんなはずはない。
「ターゲットからの問い合わせを増やしたいから、よろしく」
うん、うまくいくわけがない(笑)
デザインの"仕様"はプロセスでしかない。
ゴールに足りないのはプロセス。
「どうやってそのゴールに向かうのか」
を決めるのはとても大事。
どういうコンセプトで、どういうトンマナで、どういう形状でターゲットユーザーにアプローチするのか。これを決めないで制作に取り掛かるのは、勢いよく失敗にダイブするようなもの。失敗さんにフライング・ボディ・アタック。そういうもの。
けれども、これでもやはり上手くいかないことは多い。
それはなぜか。
それは、人はそもそもすべてを共有するなんて不可能だから。
路線検索(乗換案内)アプリは、適切なルートを教えてはくれない。
いやいや、教えてくれるんけどね。
たとえば東京から熱海に行くとしましょうか。
路線検索アプリは、おそらく何も設定しなければ新幹線のルートが表示されるはず。
では、そのとおりに行動すれば良いかというと、必ずしもそうじゃない。新幹線を使わず在来線で行くこともじゅうぶん可能だし、なんならそっちの方が大幅に運賃が安くなる。
ただ、路線検索アプリならここまではカバーしてくれるんよね。こっちが指示すれば。でも、アプリが対応してくれるのはここまで。路線検索アプリは基本的に「最速」「最安」しか出てこない。
極端な話、東京から熱海まで歩いて行くことだってできるし、たとえば「小田原駅で下車し、箱根で観光して熱海へ」というルートだって間違いじゃない。
では、最適なルートはどうやって決めるかというと、「何のために熱海へ行くのか」によるんよね。もっと正確に言うと「誰が、何のために熱海へ向かい、なにを達成したいのか」。商談に行くのにチンタラと在来線で向かってる場合ではないし、おサイフが寂しい状態なのに新幹線の指定席で行くのも良くない。
これをしっかりとプランニングするためには、「どういう状態で熱海の地に立っていたいのか」をできるかぎり詳細に描く必要がある。
というと
「なんだゴールの"あるべき姿"をより鮮明に描くって話か」
と捉えられたりしがち。
それはそのとおりだけど、そういう話じゃないんだわ。
そもそも、クリエイティブとは思考や発想ありきの仕事だということを理解すべき
たとえば、旅行代理店に「お祖母ちゃんと熱海旅行に行きたいので、プランニングお願いします!」とお願いしたとして、どういうプランがあがってくるか。
年配の女性と20代の孫の二人旅として満喫できる旅行プランを提案してくれるんでしょう。
「お祖母ちゃん、温泉も好きだけどお酒も好きなので、お酒が楽しめるプランでお願いします!」
きっと、お酒の美味しい旅館とか、利き酒ができるプランを組んでくれるんでしょう。
「途中、小田原城に寄りたいのでそこは組み込んでください。また、予算が限られてるのでできれば在来線でお願いしますね。時間がかかってしまうのはOKです」
その要望をきっちり組み込んだプランを組んでくれるんでしょう。
じゃあ、これを突き詰めていって旅行のすべての行程を共有できるだろうか?
そんなことできるはずないし、そもそもできるんだったら旅行代理店に依頼する必要がない。
よしんば、旅行代理店の担当者が超優秀でそれができたとしても、在来線に乗ってる間に読む本や、乗る車両、見える景色から発生する会話まで提案ができるかというと、無理よね。どれか一つはできたとしてもこれら全部、さらにもっと無数にあるすべてを提案できるはずがない。そんなこと言い出したら一分一秒のレベルですべてをチェックしなきゃいけないし。
デザインもこれと同じで、つくる前からすべてのイメージをお互いが共有するなんて無理なんよ。どんなにゴールとなる目的や、そこに到達するためのプロセスである仕様を決めたって、絶対にすべてを共有するなんてできない。1ピクセルごと話をするわけにはいかないんだし、それじゃデザイナーに依頼する意味がないし。
つまり、もともと「余白」がある依頼をしているわけで、その余白をどう使うかを考えてもらうのがクリエイティブの発注なわけなんよ。
どんなにつきつめようとも、別個の脳みそを持った人間が考えるんだから自分の意図にそぐわないものがあがってくるのは確率的にいえば必ず起こり得ることで、当たり前っちゃ当たり前。
じゃあどうすればいいか。
背景をつたえるのだ。
余白を埋めやすくするにはどうしたらいいか。それは、デザイナーが発想しやすい、想いを馳せやすいようにすればいい。旅行代理店でいえば、連れて行くおばあちゃんがどういう人で、何が好きで、今回はどういう位置づけでの旅行なのか。それがわかれば、微に入り細を穿つナイスな提案ができる。
「今回は80歳のおばあちゃんの誕生祝も兼ねた旅行なんです。もうだいぶ高齢だからあんまり遠くは難しいと思って熱海に・・・。でも、海が大好きなんです。あと、お魚も!あ、食べる方ですね(笑)。あんまり旅行に出る人じゃなくて、今回40年ぶりになるそうです。楽しんでもらえる旅行にしたいです!」
たとえばこんな話を聞いていたら、海に近い旅館とか魚料理だけじゃなく、旅行慣れしていないことを踏まえ、二人だけの空間でリラックスできるようレンタカーの提案をしたり、予定を詰め込み過ぎないよう配慮したり、してくれるかもしれない。
デザインの受発注もこれと一緒で「このサイトのコンバージョンを増やしたいから、ここに置くバナーのデザインをしてください」「ユーザーはこういう人でこういうのが好みです」「サイズはこのぐらいでお願いします」で発注を終えてしまうからうまくいかない。
なぜ、今回コンバージョンを増やす話になったのか。どうしてバナーという選択なのか。どんなビジネスをしていて、いまどういう状況にあるのか。なぜそのビジネスをしているのか。ユーザーに何を提供したいのか。それはなぜなのか。
依頼の発端は当然のこと、自社のビジネスや意義、社会的背景、これまでの経緯、今後の展望、それらをまじえた暑苦しい想い、そういうのをぜんぶ伝えるのよ。そうするとデザイナーさんは、ほーなるほどそういうことかいな!じゃあこういうデザインやな!と余白部分の発想が膨らみやすくなる。
これをせずに、目的とか用途だけ伝えたって良いものは上がってこない。そんなのはあたりまえなんだわ!気づいて発注者!聞いて受注者!そして私はゼルダをやりたい!(なまけたいーなまけたいー)。
取り乱しました。
これ、基本的には発注者のやるべきことだと思います。なぜなら、直接的に制作物に関係ないので受注側から聞きづらいから。バナー一個作るのに会社のビジョンまでなかなか聞けないでしょ。ただ、逆に言えばここでどこまで雄弁に語らせることができるか、それがデザイナーやディレクターの実力だともいえるんよね。
というわけで、クライアントとデザイナーとゆかいな仲間たち(誰)、暑苦しく話していこうぜい。
*1:ここでいうデザインとは見栄えとかビジュアル的な狭義な意味のものを指します