笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

コンペを依頼する=悪ではないし、それを言うなら自身の価値も省みるべきだよね。

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最近よくブログがバズってるWeb制作会社ベイジの代表:枌谷さんがこんなことをツイートしていて。

もうめっちゃ正論だと思うし、枌谷さんはほんと優秀な人だなぁと思うんだけど、実はちょっと違和感があってそれを書きたい。とくに発注者として。

 

ちなみに僕は10年以上Web制作会社のWebディレクターをやってきて、昨年から事業会社のWeb担当になりました。つまり、受発注両者のことがわかる現発注者側の人です。

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。



 

ぶっちゃけクリエイターって何様なの?

とか思うところはあります。

自分ももともとはそっち側だったくせに。

実は枌谷さんのツイートには1ミクロも違和感はないです。まっとうな正論。ただ、これはWeb制作会社在籍時代からそうなんだけど、ああいうツイートを手放しで称賛して「そうだそうだ!」ってすぐ発注者叩きになる人が苦手です。違和感はそっち。

 

これは経営者と労働者の関係にも言えるんだけど、ネット上はほんとに発注者叩きが多い。全体の割合として発注者よりも受注者の方が圧倒的に多いからそんなことになるんだろうし、そういう意味ではしょうがないことではあるんだけど、でも脊椎反射みたいに批判する人を見ると「まず自身の行いを省みてみたら?」と思ってしまう。

 

ぶっちゃけね、枌谷さんの言う「コンペなんて実力のない会社しか来ないよ」ってのは正しいけど、それを言えるのってほんの一握りのクリエイターだけだと思うんですよ。

 

発注者側の立場にたって考えてみるとね

と、言うことをみんなやってるのかな?と思うわけですが、やってみるといいです。僕もWeb制作会社のディレクターだった頃はできる限りそうしてたつもりだけど、いま振り返ると全然足りなかったなと思います。まあ、それはしょうがないのかもしれない。立場が違うのだから。

 

逆にいえば、今は昔のクライアントの気持ちが本当によくわかります。

 

考えてもみてくださいよ。

Webサイトリニューアルとなればまだ姿形がまるで見えないもんに数十万円と数百万円払うわけですよ。ややもすると数千万円なんてこともあるかもしれない。

 

しかも、僕ら発注者は道楽でやってるわけではなく、仕事として発注するんです。自分の趣味のためなら多少失敗しても「まあ我慢して使えばいいか」と割り切ることもできるけど、仕事になるとそうはいかない。会社の貴重なお金を使ってるんだから、成果が出なければ目も当てられないし、最悪社内のポジションを失う可能性だってある。

 

そう、発注者というのは、発注する時点で、発注書にサインするだけでかなりのリスクを背負ってるんですよ。そりゃ怖い。めっちゃ怖い。Web制作会社はどんなにクレームをもらっても最悪納品さえすればお金がもらえる。お金が貰えれば基本的には会社は厳しいこと言わない。でも発注者は成果が出ないと会社のお金をドブに捨てさせることになる。

 

その会社のお金というのは「予算」とかいうと温度感の無いものになっちゃうけど、実際はそんなことない。会社のお金というのは売り上げ(正確には利益)から捻出されていて、それはその会社のメインビジネスを担っている、現場の人たちが汗水垂らして毎日一生懸命働いてやっと稼いでくれたお金なんです。現場の人たちからしたら「俺たちが一生懸命稼いだ金で何してくれてんだよ」という話で、絶対に一円だって無駄にしちゃいけないんです。

 

そのリスクを取らせるだけの価値があるのか

まだ影も形もない、どんなものになるかもわからないものを、実際に具体的な姿を見もせずに発注するというのは、発注者側にしてみれば莫大なリスクをとってるんですよ。

 

自身の買い物で考えてみてください。オーダーメイドとはいえどんなものができあがるのかさっぱりわからないものに大金を払いますか?

実際にそういうことが無いとは言いません。ある。あるけど、それはどういうときかというと「このお店に任せておけば絶対大丈夫」と思えるお店だけですよね。それを人は「ブランド」というのだけど。

逆にいえばそういう圧倒的なブランドや信頼のないお店に、具体的な内容も見ずにお金を払ったりしない。

 

「コンペ」というのは、その「お金払いたいんだけど何を売ってくれるのか見せてよ」という話で、これはお買い物としてはものすごく自然なことです。

でもそれは売り手側の先出しになっていて、つまり発注するリスクの一部を売り手側が受け持ってるってことなので、これに反発するのもわかるんだけど、でもそれができるのは「Web制作会社として圧倒的なブランドや信頼」がある会社だけのはずなんですよね。

いろいろと見渡せる立場になってよくわかるけど、「御社のビジネスに貢献するパートナーになります!」とかすぐいう割に、制作の話しかできない会社は本当に多いです。「こういう技術でこういう機能があり、メリットデメリットはこうです。どうしますか?」って聞かれたりする。

おそらく「Webのプロとして知識ちゃんと持ってるワタシはパートナーになれてる」と思ってるんでしょうけど、それってお店で言えばメニューを紹介してるだけで、考えてはいない。パートナーとは言えないですよね。「御社のビジネスからするとこれが良いと思います。なぜなら~」って言えて初めて戦略から付き合えるパートナーになれるはずで。

そんなのまだかわいいほうで、「イラストつくりました。ご確認をお願いします」とか平気で言ってくる会社はゴマンといます。いや・・・どこのページに入るこういう目的のイラストなのでこういう風につくってます、ぐらい無いと判断のしようがないよ・・・という。

こっちが要求するまで納期以外のスケジュールを出してこないところもいっぱいあるし、「スケジュールくださいね」って言って「承知しました」って返事してくれたのに、一週間後に「テストアップしました。ご確認お願いします」って連絡してくる会社もだーいぶあります。

ちなみに、これ金額の多寡はあまり関係ありません。僕自身がそっち側だったので高いか安いかはかなりの判断ができると思っているけど、とっても大きな会社の単価の高いところでもぜんぜんダメなことは多くて、結局は人です(もしくは会社のフレームワークがガッチリしててそれをなぞるだけで70点取れるぐらいの会社か)。

 

会社だけじゃない、自身にその価値があるのかを考えるべき

これはあくまで元同業者として読んで欲しいのだけど、「結局は人」と書いた通りWeb制作なんざほとんどは「人」だと思います。

営業フェーズあるあるなんだけど、発注前はとても優秀なエース級の人が出てきて、いざ発注したら別の担当者がつき、「あれ・・・?こんなはずでは・・・」みたいなこと、たくさんあります。

営業としては自社のサービスブランドを体現するエース級を見せて仕事取りたいし、かといってエース級は忙しいので他のプロジェクトにひっぱりだこでそうそうアサインできないしで、仕方ないんですけどね。

ただ、それは裏を返せばどんなに会社が有名でも結局は担当者次第なので、「自分にその高い単価を貰う価値があるか」は会社と関係なく考えるべきだと思います。

「コンペとか依頼するクライアントはダメダメだぜ!」って思うのは自由だし、発注側としてはその話は全面的に同意し反省すべきだと思うけど、一方で受託側ならば「コンペなんかダメだぜって言えるほど自分には価値があるか?」「それは相手に伝わるように表現できているか?」ということは考えないと。※注:あくまで元同業者として言ってます

そうじゃなきゃダメだってことではないです。所詮はただのマッチングの話なので単価が低くとも楽しくお仕事で来てるんならそれでいいと思います。

ただ、いま一度自身の価値について省みることは「優秀なWeb屋」になりたいのなら必要不可欠なことだと思うんですよね。

ま、これは「イチ社員」として捉えた場合、発注側の僕自身にも言えることなんですけどね。

追記

あ、ちなみに、もちろん優秀な担当者さんもたくさんいます。対応が素晴らしくて、勉強になるなぁってこともありますよね。