笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

発注者の仕事は「りんごください」じゃねーのよ。

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こんばんちは、スーパー太っちょWebディレクターです。
スーパーは太っちょにかかります。

"発注者"とありますけれども、依頼者でもいいです。つまり「クライアントと受注者」だけの話ではなく、上司部下でもいいし同僚への依頼でもいい。基本は変わらんのでありまして

「仕事を発注する力」なのだけど、それが低すぎてうまくいかないパターンが多いなぁと。「伝えるべきことを伝えてない」という"あるある"なのだけど、根本はそうではなくて。ざっくり言うと「依頼フォーマットに記入する」だけになってるからそうなるのではないかと。

僕はこれを「発注力」と呼んでいるだけど、軽視されているなぁと。なんちゅーか「運転ができればタクシードライバーができる(という誤解)」ぐらいには、スキルとして意識されてないのでは?と。

というわけで、Webディレクターじゃなくても万人に重要な「人に仕事を依頼するときに意識すべきこと」の話。

(なお筆者は事業会社に在籍=発注側のひとです)

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。

 

■目次

 



 

「発注力」は存在する

無論、受ける側の努力も大事でそこに問題もあるし、それはそれでシンプルな「お仕事の能力」が表れるでございますね。
発注側が赤ちゃんみたいにばぶばぶ言ってるだけ(何が欲しいのかさっぱりわからん)の人でも、受ける側にスーパーな能力があるとなんとかなってしまう。

それは逆に言えば「発注する側の発注力が高ければ、(相手の能力が低くとも)うまくいく」ということでもありまして。つまり、発注力というものは間違いなく存在すると。

よく誤解されるのが、発注力というそれは「要件を整理して、こと細かく伝える能力」だと思われていて。それは発注力の一つだと思うけど、そこからスタートすべきものではないと思うわけですよ。なんというか、それは「発注力というものを誤解したまま成長している人」だと思っていて。

 

たとえばここに"りんごが欲しい人"がいたとして

えー、いわゆるひとつのぉー、りんごが欲しいというー、事案でありましてぇー©︎ミスタージャイアンツ

 

発注力を意識しない発注者はね、「りんごください」しか言わんのですよね。

 

ワタシハー

りんごホシイダカラー

なんて。

 

いや、八百屋とかスーパーならこれで良いのであります。そんなに豊富な種類のりんご売ってないし、店頭に並んでいるので「こちらの棚です」で終わり。

 

だが、ほとんどの「発注仕事」というのは、並んでる既製品を買うのとは違うわけですよ。

言うなれば、さまざまな作物を育てている農家さんに依頼するようなもんで。

その農家さんに、りんごが欲しいからと「りんごください」しか言わない。そりゃ良いりんごが出てくるわけがない。というか「良いりんごとは?」という話になる。りんごとて、たくさんの種類があるから。

 

要件を定義しろ!という話じゃない!(なんなんだ)

いや、要件は定義した方がいい。

たとえばそれはりんご事案(なんだそれ)ならいつ、誰が食べて、どんな料理の後に出るのか。

というのは「デザート」としてのりんごで、もっとお仕事っぽい例にするなら洋菓子店などわかりやすいかもしれない。どんなスイーツに使って、どんな食材と組み合わせるのか。酸味が強い方が良いのか、歯ごたえがあるタイプが良いのか。

それがわからないのに、農家さんが最適なリンゴを選べるはずもない

にもかかわらず、ひどい発注者は「プロなんでしょ。良いの選んでよ」と言ってしまう。無知にも程がある、と、プロを憤らせてしまうわけですね。だが、そもそも知識もないのに正しく要件など伝えられるはずもなく

そしてこの論理なら「依頼書にすべて記入」していればそれでヨシということになる。

だが、そんなことはないわけで。

 

相手は人間であり、感情も利益損益もあるという当たり前の話

農家さんだって人間であり、そしてビジネスなわけですよ。

決まった単価に対して統一したクオリティのサービス(=りんご)を提供するというのは大前提でありつつ、なんならそれとて手段に過ぎない。すべてのお客様に真摯に対応すべきというのはあるが、まあ、そんなものは提供側の勝手(=選択の自由がある)な話であって。

たとえば某ペコちゃんの巨大洋菓子メーカーと、街の洋食屋(りんごは少し使う程度)を同列に扱えというのは無理がある。

もっとお気持ち的な話にすれば、りんごの甘みや酸味を存分にいかした"りんごを大切にしたスイーツ"をつくってくれる職人と、ずさんな管理でたびたび腐らせてしまう職人と、農家さんはどちらに自分たちが丹精込めて育てたりんごを渡したいと思うか

これは、Webデザインや開発の仕事でも起きている話で。

熱心に自分たちのビジネスを語り伝えようとしてくれるクライアントと、「いいからとりあえずつくってよ」というクライアントと、デザイナーやエンジニアはどちらにモチベーションが湧くか。
気持ちの話だけでなく、しっかりと報酬(お金)を支払い、さらに次の仕事もちゃんとくれるクライアントと、値切ってばかりのクライアントと、制作会社はどちらに力を入れるか。

いくら単価が同じでも仕事をする"そのひと"は人間なので感情があったり、打算もあるので、同じ金額でも「この人、とっても熱意あってやりやすいから、この人には最高のモノを用意しよう」と思われる人というのはいるわけですよ。

つまり、同じ単価でもクオリティに差が出るのが現実で

 

 

発注者にとって「りんごください」は手段の一つでしかない

同じ単価でもクオリティに差が出るのが現実であるならば。

では、どうしたら同じ単価でもより良いクオリティのものがもらえるか。

それを考えるべきですやね。

うん。

 

 

いや、

 

 

だからね、

 

 

それが発注者の仕事だと思うんよね

 

 

 

きちんとした言葉にしましょう。

発注者の仕事とは、

「いかに相手に高いパフォーマンスを発揮してもらうか(を、考えて実行すること)」

だと思うんですよ。(欲しいものを言う、はその手段の一つにすぎない)

 

だから、要件を定義すりゃいいってわけじゃないのです。

要件を定義しても、それが逆に相手の発想を狭めることになったりもする。ときにはあえて細かく指定せず、相手のセンスに頼ることも必要で。

依頼書にしても、記入すりゃそれで良いわけじゃない。

だって、

  • とりあえず依頼書にすべて記入した人
  • 一生懸命、伝えたいことを依頼書にたくさん書いてくれた人

どちらに、相手が心を燃やしてくれるかなんて言うまでもない。

前者は、目的を履き違えてるからそうなるんですよ。

「欲しいものを伝えるのが私の仕事」と思ってるからそうなる。

「相手に、より高いパフォーマンスを発揮してもらうため」が目的になっていればそうはならない。なぜなら依頼書は記入することが大事なのではなく「それを使って相手に伝えること、理解してもらうことが大事」とわかるはずだから。依頼書は想いを伝えるための手段にすぎない。

相手を人間扱いし、思いやりを持って接することも、雑談だって重要なことも、すべて同じベクトルの話で。相手は人間で、より良い仕事をしてもらう必要があるから。逆にいえば雑談してれば良いわけでもないし、思いやりさえあれば良いわけでもない。ときにはきちんと怒る(≒プレッシャーをかける)ことだって重要で。仕事だから。

 

いや、簡単な話で。

自分がりんごの調達担当ならば、いかにより良いりんごを調達するか。その「良い」とはただ甘ければいいわけじゃなく、自分の店のどんなスイーツに使うのか、そのスイーツの中でどんな役割を担うのか、才能あるパティシエがどんな風に使いたいのか、によるはずで。

農家さんに、それを、できる限り良い形で提供してもらわなければならない。それが発注担当の仕事ですやね。

であればもちろん要件は整理した方が良いし、背景も伝えるべきだし、意気込みだって知ってもらうといい。最終的にどんなスイーツになって、どんなお客さんの口に入り喜んでもらえるのか。もちろん人として丁寧に接すべきだし、適度に仲良くなれた方が良いだろうし、そして農家さんの生活だってちゃんと考えるべきで。値切り倒して農家さんが貧困になっちゃいけない。

にもかかわらず「りんご欲しいです。あとはよろしく」しか言ってないのに「わかってくれない」「良いりんごを届けてくれない」なんて、おまいさん、仕事をなんだと思ってるん?と言われても仕方ない・・・。

 

「自分は何のためにその発注をするのか」

を突き詰めるってことですよね。

だからそれは、前述の思いやりだけでなく、多少生々しいと思っても(大企業なら)自社の規模、これから見込める予算の話をすべきですよね。汚い話だけどw、ウチお金あるよって。だって相手(の会社)は基本的にそのために仕事してるんだから。

お金だけじゃなく、全国的な知名度とか、社会的意義とか、この案件によって得られるクリエイターとしての知見や面白さとか。伝えられる要素はいくらでもある。

そのすべては

「相手に、より高いパフォーマンスを発揮してもらうために、自分がとるべきコミュニケーションは何か」

で。

そのために、自分が素人で知識がないのなら、そう伝えれば良い。

わからないから、"良いもの"というのを私に教えて欲しい、と。

要件を定義することができない、だから、一緒に考えて欲しい、と。

 

 

だから、発注者の仕事は「りんごください」じゃねーのよ。

そしてそれは、クライアントと受注者だけじゃないのよ。

社内の上司部下だって同じだし、同僚だって同じ。

 

これは、自分の状態を正確に把握し、相手に適切に頼るということなので、大変難しい。僕もけっこう失敗を繰り返しております。

ぜんぜん簡単じゃないです。

 

 

うん、そりゃそうですよ。

だって、発注力という立派なスキルなんだから。