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笑顔を創りたいWeb屋の日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。情報デザインやWebの勉強をしています。

【感想】「そんなんじゃクチコミしないよ」 著:河野 武

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そんなんじゃクチコミしないよ。 <ネットだけでブームは作れない!新ネットマーケティング読本> そんなんじゃクチコミしないよ。 <ネットだけでブームは作れない!新ネットマーケティング読本>
(2008/03/19)
河野 武

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超遅ればせながら、最近読みますた。

smashmediaの河野さんの著書です。(もう3年ぐらい前に出版されたものですが)

実は、この本を購入する前後に縁あってご本人とお会いする機会があったのですが、とくにそれが理由で購入したわけではありません(笑)その前から気になっていて、その後お会いしたのはたまたまです。ゆえに、お知り合いになったから宣伝したいわけでもありません。「じゃあそもそもなんで今まで買わなかったんだ」「そしてなんで読もうと思ったんだ」ということになるわけですが、それはこの本を「クチコミの方法論かな?」と誤解していて、「まだ自分はその領域ではないなぁ」と購入に二の足を踏んでいたんです(一応僕は制作畑の人間なので)。なんで読もうと思ったかというと、それはSEO/SEMでいつも参考にさせていただいているsem-laboさんの書評(感想)をブログで読んだからです。読んで「むむ!これは勘違いしていた!絶対読むべき内容だ!」と思って購入にいたりました。sem-laboさんありがとうございまーす!あとインターネットありがとうございまーす(謎)



 

■内容のまとめ

ネットのクチコミってそんな簡単じゃないよって書いてあります。

・・・。

っていうかたぶんsem-laboさんのブログをご覧になった方が早いと思いますw

と、他人のフンドシで~は良くないので一応ざっと気になったところを。(気にいった?かな?)

 

テレビは決して崩壊してない

ネット大好きな人はついつい既存のメディアを否定したがりますよね。

「テレビなんて」「新聞なんて」「マスゴミ」とか。

「TVなんてみないし」っていう人結構見るんですが、僕はあんまり理解出来ないなー。ほんとに?とか思ってしまいます。僕はTV大好きなのでw そして、自分の周りを見渡せばTVの影響力はまだまだ絶大というか、はっきり言ってネットの比ではないと思います。いくらネットで炎上したといっても、ほとんど誰も見ていないじゃん・・・っていう状況のほうが多くて、僕の友人だって知らないことはたくさんあります。(本書にも「SONYウォークマンブログ」の話などで出てきますね)

 

たしかに、「ネット発」というのはありますが、それは発信元がネットになってるだけで、世間に伝播したのはTVの方が圧倒的に多い。電車男しかり、twitterしかり、テラ牛丼しかり。これらは「ネットにネタを求めたTV」が影響させたことで、情報元自体はネットですが世間に強い影響をおよぼしたその力はTVに違いありません。

 

結局、まだまだ皆TVを見ているし、そしてインターネットが「自分の興味に応じてクリックして進む」という質を持つ限りその立場関係は変らないと思います。それを見越してコミュニケーション戦略を練るべきですよね。

 

単体で考えるのではなく長短を理解して組み合わせて考える

広告や次の展開、コンテンツなどメディアの特性をきちんと理解して展開すべきという話です。

上記、TVは死んでないというのと繋がるお話ですね。

至極ごもっとも!と思います。

これは、昨今のtwitterの扱われ方にも同じ事が言えると思います。

twitterを使うことが、ブログを立ち上げることが目的じゃなくて「どういうコミュニケーションをとるから」「twitterを使う」があるべきプロセスの話で(それが全てではないですけどね。意欲を持ってトライアンドエラーで進むのも良いと思いますし)。

この辺の話は、以前に書いたのでこちらでも。

ネットはTVや新聞の敵ではない。

 

■感想

本当に書きたいことは実はここからだったりする(笑)

 

僕がこの本を読んで一番驚いたのは、意外にも批判的な感想が多いこと。批判だらけだというわけではないですよ。僕自身が「これをどうやって批判するんだ」と思っているので、批判する人が少しでもいるだけで「なんで?」と思うわけです。で、それはまた「ああ、そらそうか。だからこそこの本が世に出たんだ」と妙に納得したり。

 

僕は、この本は読む人の意識が試される本だと思います。

いくつかレビューやブログなどの書評をみて、だいたい批判の内容は二つのことに集約されます。

 

A.「結局どうしたらクチコミするのか言及してない。内容がスカスカ」

 

B.「当たり前の事しか書いてない。内容がスカスカ」

 

うーん。

もちろん、著者の河野さんは書いた本人として(僕が見た限りでは)全てを真摯に受け止めてらっしゃいました(大人だー。僕は噛み付いちゃうかも・・・)。が!僕は一読者なので言いたいこと言います(笑)

上記A、Bともに「それ、肝心なことがわかってないから内容が感じられないんじゃないですか?」と思います。

 

■そもそもクチコミとは?

Aの「結局どうやったらクチコミするのか書いてない」というのは問題外で、その時点でこの本をちゃんと読めてないじゃんと思います。逆に聞きたいですよ。どうやったら発信側が主体的にクチコミをつくらせることができるんですか?って。

すごーく簡単な話で、よく知らない知人から「私をあの人に紹介して!」とか「私の良いイメージを伝えて!」と言われて、あなたは実行するのですか?という話で、少なくともよく知らない知人は紹介しないでしょ。じゃあどういう人なら紹介するの?したくなるの?と問えば、その辺の中学生でもわかると思うけど「その人を人間として好きだったら」紹介するでしょ。よく知らない人、嫌いな人を紹介しようとか、敢えてその人の話題をで話をしようとは思わない。(厳密に言えば、愚痴や文句などネガティブなクチコミはするw)

 

これを逆に言えば、紹介して貰えるようにするにはどうしたら良いかというと、当たり前の様に「紹介したくなるような魅力を持った人になること」ですよね。で、じゃあ魅力ってなんですか?という話になる。そんなもんは本人の資質や価値観によって変わるし、受け取る相手によっても変わるからー!。ですよね?(笑)万人に受け入れられる個性などないし、だからこそ己を知り、己のアイデンティティをみんな探すし、表現の仕方を模索して悩むわけですよね。だから、「どうやったら自分を周りに紹介してくれるんですか?」ってそんなもんに絶対的な方法はないでしょ。あったらビックリする(笑)

 

クチコミも全く同じことで(っていうか紹介って人間のクチコミだけど)、その商品やサービスの魅力ありきの話であり、それを求めているユーザーの居る場所、価値観によって全く変わる。だからクチコミをしてもらうのに決まった手法なんてないと思うんですよ。誰かに好かれ、良好な交友関係をつくることに決まった方法なんかないのと同じように。その都度、自分に合わせ、環境に合わせ、相手に合わせて考えるしかないでしょ。そうやって常に相手の立場にたって考える人が、多くの人に好かれるのではないでしょうか。

 

にも関わらず、多くの人はそこに公式があると盲目的に思い込み、ありもしない公式を本で、テレビで探すし、手法に目のくらんだ代理店は「クチコミをつくりましょう!」とか言っちゃうわけです。

 

だから、確かにやろうと思えば過去の成功したケーススタディを載せて実践にすぐに役立つように(見えるように)することはできたと思うのですが(著者の方は実績のある方ですから)、それこそ一番やってはいけないことなんですよね。いま、アホみたいに「Twitterが流行ってます!参入しないと乗り遅れます!」とか「ブログ書けばアクセスが増えます!」とか手法ありきで目的を見失うコンサルや提案が増えていますが、それと同じ事で、この本が言わんとしている事は、そうやって「こうすればクチコミできます!」なんてことを絶対に受けとって欲しくないわけですよね。だから、仮にそれが"あくまで一例"という扱いでも、読んだ人にそう誤解される(こうすればクチコミをつくれます!と思われる)ようなことは最も避けなければいけない事態がゆえに、ケーススタディを載せること自体が本書の目的に反すると思うんですよ。(面倒くさくていれなかっただけかもしれないけどw)

 

だから、僕は問題外だと切り捨てました。

「いいかい君達。そんなものに決まった手法なんてないんだよ」

(口調は僕の脚色でご本人とは関係ありませんw)

と言ってるのに、

「具体的な方法が載ってない!内容が無い!」

と言うのはこの本をちゃんと読めてない、全く理解できてないんだと思います。むしろ、そうやって思考を放棄して答えを求める人こそダメですよと言っているわけで。

 

 

■当たり前だけど全然当たり前じゃない

 

B.「当たり前の事しか書いてない。内容がスカスカ」

 

確かに、この本に書かれていることは一本筋の通った、ある意味誰でも理解できる「当たり前のこと」しか書いてないと思います。でも、理解できることと実践できることは違います。僕はこの本に書かれていることをそれなりに理解できるつもりだし、「当たり前のこと」だと思いますが、だからといって同じ事を僕が書けるわけではありません。理解できることと、実践できることは違う。僕にはここまで深くは書けない。それはきっと僕が著者の方より未熟だからです。マーケティング、コミュニケーションに疎く、実践力に欠けるからです。わかることと、人に教えられることは、理解度のレベルが違いますよね。まったくそれです。当たり前だと思っていても、ここまでは理解できてない。だから、僕にはこの本から得るものがたくさんあるわけですが。

 

この本に書かれていることは当たり前のことなのに、実践のレベルでは当たり前になってないんですよ。

 

だから「ブログでクチコミをつくりましょう」なんておかしなことを提案する輩がでてくるわけじゃないですか。

ブロガーにお金を渡して良いレビューを書いてもらおうなんて、コミュニケーションの根本からバカにしていると僕は思います。簡単じゃないですか。まるで善人みたいなツラして「あなたにとっても合うひとを紹介するわ♩」なんて言っておきながら、紹介者が実は裏でお金を貰っていて連れてきたその人のことを全く評価もしてなければ、知りもしない人だったら腹が立ちますよね。こっちのことなんかどうでも良くて、金儲けしたいだけだから。

 

こういうことが平気で提案されているわけですが、それは上記twitterでも同じだし、それ以前にWebサイトそのものの話でもそうです。「御社のイメージを訴求しましょう!TOPのメインビジュアルにドカンとFlashを!」とか言うWeb屋たっっっっっくさんいますし、「うちの理念は○○だから!」と、ユーザのことなんかまるで考えてない押し付けデザインを求めるオーナーさんもいっぱいいますし。それはもう、バナーのデザイン一つとっても「全部目立たせて」みたいなことを言ってしまったりと、一事が万事そうだと言ってしまってもいいぐらいだと僕は思ってます。

 

だから、僕はこの本に書かれた事は全然当たり前に”なってない”と思います。

 

当たり前の事を「当たり前だよね」と書いてあるんだけど、その実、現実ではそれが当たり前になってない。本当に皆が皆、これが当たり前のことだと意識しているなら、世の中はもっと生産性高くまわっていると思うし、何よりもまず、僕はこんなに苦労しない(笑)。これが当たり前だと言えるということは、相当恵まれた優秀な人達に囲まれて仕事をしている人だと思いますが、しかし、マーケティングやデザイン、制作、プロセスマネジメント、営業の現場でこれを当たり前だと言い切って「声を大して言うことではない」という程に周りの環境が整っている人は相当優れた能力の地位の高い人だと思います。でも、そんな人は今の現状を知らないわけがなくて(現状把握からきちんと分析できるからそこの地位にいるはずですから)、つまり結論として言いたいのは「当たり前のことしか書いてない。内容がスカスカ」っていう人はわかった”つもり”になってるだけでは?と、僕は思ってしまいます・・・。

 

■タイトルはきっと狙っているからこそ読んで欲しい。

そういう意味では、僕も誤解したとおり「そんなんじゃクチコミしないよ」というタイトルは確かに→「こういう方法ならクチコミするよ」という論説を期待させるものだと思います。期待を外した内容というのはその通りだと思うんですけど、これもたぶん釣り・・・というより狙い通りなんじゃないかと推測しています。「そんなんじゃクチコミしないよ」→「良いクチコミさせる決まった方法なんて無いよ」ということを言いたい本なわけですが、その対象者って誰かというと、皮肉にも「どうやったらクチコミさせらるの?公式は?」なんてものを探している人なんですよね。その人に読んでもらい、理解してもらい、ブログに対する、クチコミに対する、マーケティングに対する意識を変えてもらうためには、その人達の興味の対象となるタイトルを入り口として設けなければいけない。すると、これは狙ったタイトルであり、ある程度反応も狙い通りなんだろうなぁと思います。(たぶん)

 

何度も書きますが、この本に書いてあることは本来当たり前のことです。

誰に、何を、どうやって伝えるか、どうやって動いてもらうか、という話ですから。

(だから実はマーケティングだけじゃなくてもっと幅広いお仕事に通ずる内容だと思います)

 

でも、実際は全然当たり前になってない。

当たり前になってないから、この本が出版されたんだと思います。

物凄く当たり前のことを理解してない人がたくさんいる。

それを、とてもわかりやすく「ほら、当たり前でしょ?」と教えてくれる本です。

だから、ちょっと信者みたいであまりこういう表現はしたくないのですが、

この本は良いか悪いかという所で語れるレベルのものではないと思います。

受け取る側が、きちんと理解できるかできないか、取り入れられるかどうか試されている本だと思います。

(いつだって、土台となる話はそういうものだと思います)

 

提案や企画、施策の具体論を考えているときに答えをくれる本ではないです。

でも、悩んだ時に原点に立ち返らせてくれる、いつでも想いのどこかにとどめておきたい本です。

 

マーケティングだけじゃなくて、企画、制作、コミュニケーションを考える全ての人にオススメです。