ペーパープロトタイプを否定したいわけじゃないです!ほんとに!とう!(何)
誤解の無いように宣言しておこうと思って(笑)
なんかこう、ペーパープロトタイプっていう言葉がなぁ・・・と思うのです。
というより、言葉使って満足してない?って思うというか。
ペーパープロトタイプやペルソナ/シナリオ法、コンテキスチュアル・インクワイアリーなどHCDや情報デザインの話が最近(いや最近じゃないけど・・・)業界でたくさんされていて、それ系のセミナーや書籍も増えてきている昨今ですが、本当にそこまで必要なのか?という疑問が拭えません。
・・・っていう書き方をすると「HCDなんかいらねーんだよ!」って言ってるように受け取られかねませんが、そうではなくて。HCDもIAも大事大事。ただ、世のWeb屋さんのほとんどが、そこにつっこめるほどのフェーズなのかな?っていう風に思うわけですよね。そもそもHCDにせよペルソナにせよ、金がかかる。費用がかかる。Web屋なり、企業広報が単独でやれば・・・ですけどね。企業活動、ビジネス設計の中心におけば、たぶん今かけていて無駄になっている宣伝費や販促費の方が大きいと思います。が!、少なくとも日本の企業の大半はまだそんなレベルではないし、中小企業に至ってはペルソナなんかガッツリ創ってたらオーバースペックだと思います。上場しているような大企業は別で、これからどんどん促進していくと思うんですけど、そういうところを相手にできるWeb屋さんって、そのクライアント企業の数(割合)と同様にごく限られたスーパーな制作会社やWebコンサル会社だと思うんですよね。で、そういう会社は多かれ少なかれHCD的なプロセスはすでに持っていてブラッシュアップする段階だと思うんです。
うん、だから、そういうWeb屋さんはどんどん学んでいったらいいし、吸収も早ければ実践する場もあるので伸びも違うと思います。でも、少なくとも今僕が相手にしている規模のクライアント(中小企業や個人経営規模)は、当たり前にそんなフェーズではないです。ペルソナなんて通じるわけもなく「ゲームの?」って聞かれるのがオチです。ペーパープロトタイプなんて言ったって通じないし、逆にいうとそんなものを理解させる必要もないです。「とりあえず手書きで大雑把に書いてみますね」で十分通じるし、機能も果たせます。やろうと思えばその場で簡易なユーザテストだってできますよね。
何が言いたいかというと、「ペーパープロトタイプ!ペルソナ!ユーザ中心!」とか言って必死に勉強したり叫んだりしているWeb屋さんが、恥も礼儀もないメールを送ってきたり、企画書書くのにいきなりPC立ち上げてPowerPointと戦ってたりする人が結構多い気がするんです。それって、本質のレベルでペーパープロトタイプの事わかってないじゃんって思うんです。
僕も良く怒られましたが「いきなりPCに向かうな」です。
企画書書くのに、なんにもないところからいきなりPCに向かって書いてたってなかなかうまくできないですよ。それって、話の大筋から超スーパー細部(謎)までを一気に考えようとしてるのと同じですから。旅行の計画を行き先から買い物、食事まで、一気に分単位のスケジュールに落としこむようなものです。そんなのスーパーマンっていうか、むしろエスパーです(笑)少なくとも僕は絶対そんなことはできません。まず、予算なのか時期なのか行きたい場所なのか、優先すべきことが目的によって決まるはずなので、そこから大筋から決めていかないと、スケジュールになんて落とし込めない。超大まかなコンテンツすら決まってないのに、時間なんか決められないですよ。
企画書だって、それはまず何を成し得たいプロジェクトなのかという大大大目的があって、それによって得られる便益や利益がなんなのかが明確になっている必要があり、そしてそれは全て「誰にその企画の意図を伝えたいのか」という(その企画書自体の)ユーザ設定があるはずです。まずここが固まってないとそもそも話の内容が決まるはずもなく、そして、「では、その人にこれを伝えるためにはどういうシナリオ(論理展開)が必要?」という骨子=目次が先にできるはずです。っていうかそれじゃないと、創ってから前後が入れ替わったりして、前後が入れ替わるということはコンテキストが変わるのでそのページでの表現も変わってしまうはずです。
企画の目的という大前提があって、それを伝える論理展開がある。
各ページの表現、デザイン、ラベリングをどうするのかというのは、その後の話のはずです。
1.誰に伝えるのか
2.何を伝えるのか
3.どうやって見せて(魅せて)伝えるのか(色・形・言葉)
これをいっぺんにやれるほど、少なくとも僕は天才ではありません。
PowerPointで装飾するというのは「3.」でしょ?
「2.」まではPCでの作業は必要ないはずです(調べ物とかは別ですが)。
大前提や目次、論理展開を考えるのに使いづらいPCなんか使わないで、紙とペンとポストイットと、そしてマウスじゃなくて自分の手を使うほうが明らかに効率的だし、もっと言えば他人がそれを見えるようにして、議論をしながら進める方が間違いなくクオリティは高いと思います。
要するに思考プロセスの分解なわけですが、まあ、そんな難しいこと言わずに「まずは手で書けや」っていうだけのことなんですよね。いま、何を決めるべきなのかという俯瞰と現在地の意識、プロセスの意識があれば、そのタイミングタイミングで適切なツールを選べるはずです。論理展開を考えているときに資料のページデザインがいらないことがわかるように(そのページで伝えることが決まってもいないのにページのデザインなんか考えても意味ないですから)。
ペーパープロトタイプだって、本来そういうことのはずなんです。
画面設計の段階で美麗なデザインは必要ないですし、むしろ余計な情報が入って議論が明後日の方向に行くことを考えれば邪魔です。「何をどこに置くのか」と検討すべき時に「どう魅せるか」は邪魔でしか無い。ペーパープロトタイプというのはあくまでツールです。思考、議論、検討のツールのはずです。それが分かっている人は、絶対にいきなりPowerPointに向かうなんてことはしないはずです。いま、何を決めるべきなのかという俯瞰と現在地の意識、プロセスの意識があるから。それがわかってないから「ペーパープロトタイプは素晴らしい!」と叫んでる横で、プロセス度外視、思考の分解を全くしてない行動をするわけで。
これは、最終的に帰結するところは「自分達は何を創っているのか」ということをちゃんと自分達で定義出来ているか?ということに行き着くわけですが、ペルソナ使ってプランニングしながら、結局クライアントが「もっと派手に」とかいう要望を「それは大事!」といって鵜呑みにしてしまったり、はたまたクライアントの企業としてのフェーズを考えないでオーバースペックなことを言ってしまう人と同じなんですよね。クライアントのビジネスのためにWebサイト創るわけで、フェーズを大きく先行するものをつくったって赤字にさせたら何の意味もないし、逆にビジネスへの貢献が重要だからこそユーザ中心でなければいけないのにクライアントの(ビジュアルや機能に対する単純な)要望をそのまま鵜呑みにして実現することが仕事だと思っている人は、何を創っているのかわかってないんじゃないのかな?と思います。(そうは言ってもお仕事なので、無理に押し付けることもできず・・・ってのは仕方ないと思います・・・っていうか僕がそうだし(泣))
HCDやペルソナ、情報デザインを推進し、言葉を定義している方々を批難しているわけではないです。業界標準を創り、浸透させるためには言葉を定義し、受発注者の両者がその言葉を共通定義として使えるようになることは、絶対に必要で大変有意義な活動だと思います(僕も頑張って勉強したいです)。でも、猫も杓子もそれに賛同して(いや賛同するのはいいんですが・・・)、セミナーで見聞きしたレベルの人が「ペーパープロトタイプです(キリッ」とか別にそんな横文字つかわんでも・・・。「いや、だからさぁ、まずは手書きでやるべきでしょ?」でいいんじゃないの?と思うんです。というか、本来別にどっちでもいいですし(厳密に言うとただの”手書き”と”ペーパープロトタイプ”の意味するところは違うと思いますし)、結果として良いものが出来ればいいのですが、自分達が相手にしているクライアントの知っている言葉、リテラシー、ビジネスのフェーズを理解せずにそのような言葉を使いたがるってのは、言葉に踊らされているような気がするのです。
PDCAサイクルをまわすとか、きちんと設計するとか、ユーザニーズを常に気にするとか、もっと言えば常日頃からUI、IAだけじゃなくサービスそのものを観察して体験するとか、一番大事なのはそこであって、「ユーザーの体験に貢献する」というクリエイター魂(僕の造語です)があって初めて意味を成すと思います。
僕らは、H1やTitleタグでテキストを強調したり、Flashでドバっと動かしてビックリ感を与えたり、クリックしやすい購入ボタンを創ってるわけではないと思います。それを実装した結果として、PCやスマートフォンの向こう側にいる人のHappyな体験に少しでも貢献するものを、そしてそれによってクライアントに利益をもたらすものを創っているはずです。
手段が目的になっちゃいけませんよね。