笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

「いらないものは売れない」という意識を持つこと。

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という意識を持つことって、僕は大事だと思っています。

まあ、デザイナーは魔法使いではないのだから。

 

■わかりやすいデザイン?伝わるデザイン?

どうも、「わかりやすい」というところに固執する方が多い様に思うのです。固執というよりは全てをそこで考えてしまうというべきか。ユーザビリティは当然大事です。当たり前です。でも、それが全てではないはずです。

 

他社さんをみてたり、同業者の話を聞いてると「わかりやすいデザイン」とか「お客様の要望を適格に捉えデザインにおこします」みたいな売り文句で制作業をしている方が結構たくさんいて・・・。そういう方の意識や、プロセスって確かにその通りになっていて、ユーザが迷わないようなUI設計や、もっと進むとユーザビリティの改善からコンバージョンをあげることが全てだと思っているような取り組み方で・・・。(いや、それはそれで大事ですよ)

 

ECサイトのコンサルをやっている方なら割とご理解いただけると思いますが、ページのUIをいじくりまわしたり、カートのユーザビリティを改善したところで、売れない時は売れません。そもそもカートまでたどり着いてないとユーザビリティも何もないのですから。・・・っていうと今度は購入決定までのUIをチェックし出したりするのですが(笑)

 

ECサイトの最重要鍵を握るキードライバーは、間違いなく商品でしょう。それがダメなら何をしてもたぶん無駄です。どんなにプロモーションしようがどんなにページデザインをいじって良く見せようが、購入者が届いた商品に失望したらその時点で終わりです。一度売れたとしても二度と買ってくれなくなる。

 

 

先日、Twitterで下記のようなツイートをしました。



「理解をデザイン」とか「伝わるをデザイン」ってのはやはりどうもしっくり来ない・・・。それって既に「伝えたいことありき」であって、でも本来はいらないものはいらない。「理解を~」とかいうのは所謂デザイナーさんがデザインするフェーズの話で、そこに限定するのはどうなの?と思うわけです。

 

 

「伝わる~」とか「伝えるをデザイン」というのは、これ自体が間違っているとは思いません。でも、これはあくまでデザイン対象の一部分でしょ?と思うのです。本来、全員がそこを担うかどうかは別としても、デザインとはもっと範囲の広いものだと思います。

 

以前、クライアントからペルソナ資料を見て欲しいと頼まれて見たことがあるのですが、これがまたひどかった。競合他社のWebサイトを何十もチェックして、平均値を洗い出し、その調査や業界に対するヒアリングをもとにペルソナをつくり、最適解となるUI(レイアウト)を導き出していました。そのペルソナはいったい何の消費者を視覚化したペルソナなんだろう?と思ってしまいました。これは、ECサイトのオーナーやコンサルがユーザを惹きつけようと煽り文句を考えたり、ページのデザインをいじくりまわしたり、はたまた何の設計もなく「blogをやればPVが稼げます」なんて言ってしまうのと、根本は同じ問題だと思っています。

 

どこかのサイト構築を頼まれたとき、競合他社を研究するのは必須だと思います。けれども、それはあくまで「ベンチマーキング」と言われる範囲の話で、そこにユーザニーズの全てがあるわけではないし、その平均値が最適解になるわけではないはずです。一般論が必ずしもその時の最適解であるわけではないのと同じように。あくまで「他を知ることによる自社を知る」という範疇のもので、そこにユーザがいるわけでも、答えがいるわけでもないはず。それをもとに設計やペルソナを創るというのは、そもそも何を見るべきなのか、意識すべきなのかがブレていると思います。

 

そもそも、競合他社と同じものつくったって何の意味もないはずです。

そこに勝つ、あるいはそことは違う層、ポジショニングをしなければいけないのだから。

例え同じユーザでも、同じ魅力で戦うわけではないのだから、そうしたらサイトも違うのが当たり前です。

それなのに、他社と業界の話だけ聞いてペルソナ創って、そのペルソナはいったい誰なのか全くわからなくなる。

 

 

■いらないものは売れない

根本の根本の根本だと思うのですが、これを意識せずにデザインやクリエイティブなど出来るはずもないと思います。「売れないものは売れないんだから見切りをつけろ」ということではないです。そうではなく、どんなものだって、それが「いらないもの」だったら売れないんですよ。そら、いらないんだから、お金払ってまで買おうとは思わない。逆に言えば、売れるということは「誰かが必要としたから」売れたわけですよね。なんというか小学生でもわかる論理ですが。

 

「なぜ死なないのかを考えるのは、なぜ生きるのかを考えることと同義」だと僕は思っているのですが、つまりそういうことです。「いらないものは売れない」という当たり前のことを意識するということは、つまり、「売れるにはどうしたらいい?」という方向性で考える場合、「誰が”これいる!”と思うんだろう?」「”これいる!”と思わせる根拠はなんだろう?」という考えからスタートするはずなんです。そういう考えがあれば、ECサイトをいきなりUIだけ、デザインだけ見ていじくりまわして売上を上げようなんて思わないし、SEO対策にガンガン費用をつぎ込んで入ればOKだなんてことも思わないはずなんです。だって、ECサイトで売れるとしたら、それはその商品そのものがどういう機能、魅力があり、それを求めているのは誰なのか?という、モノを売るという行為に置いて一番一番基本となる部分が無い限り、売れるわけがないと思うんです(売れたとしても偶然)。単純な話、ガリガリに痩せている人はダイエット商品なんて買わないですから。

 

とある寺院や神社が集まる(ただ、それほど有名ではない)地域の方々と役所の方との会議で、どうしてもアミューズメントパークや高層ビルがある近いエリアの所に観光客が取られてしまい、どうしたものかということを思案していたらしいのですが、それがまとまらなくてどうしたもんかという話を聞いたことがあります(相談というより酒の席の愚痴ですが)。話の結末まで聞くと、結局「隣のエリアから観光客をこちらに向かせたい」「もっと若い世代、絶対数の多いところにアプローチしたい」という要望をもとに、それを実現するポスターを創るという話になったそうなのですが、そんなのうまくいくわけがないですよと伝えました。

 

どんなにポスターを可愛く、格好良く、あるいは扇動的に創ったとしても、肝心のその寺院や神社が集まるエリア自体が、若い世代に対して提供できる価値が無いのならいくらやっても無駄だし、煽られてきたところでつまらなくて二度と来なくなるだけです。ポスターはポスターでしかないわけで、ポスターが観光客の心を満たすわけではありません。その体験を創る1ステップに過ぎない。そのエリアが、その人達にとって「いらない」なら「売れない」んですよね。

 

 

■「わかりやすい」だけでは売れない

「お客様の要望を的確にデザインに~」とか、「わかりやすいデザイン」だとかに違和感を感じるのはその辺です。デザインやクリエイティブにおいて「わかりやすい」は大変重要なことだと思います。しかし、デザインやクリエイティブにおける「わかる」というのは一部分でしかないと思うのです。そもそも「わかりたい」と思わなければ、いくらそれを「わかりやすく」創っても無駄ではないでしょうか?使いやすいものでも、そもそも使う必要がなければ、使いたいと思わなければ「使いやすい」は無駄なものになります。

 

まあ、あれなんですけどね(何)。

「売れるデザインとかそういうの知りません」

「私は情報を絵にするだけですよ」

って言い切るなら、それでもいいんでしょうけども・・・・。

 

がしかし、ビジュアルデザインやUIが企業活動、商品特性から独立するなんてことがまずありえないわけで(趣味なら別ですけど)、その時点で言ってること矛盾してるんですよね。特に、HCDや情報デザインもそうですが、社会を活性化するや環境を創る、問題発見と言ってるのだから、その上で「わかりやすい」だけで語るのはおかしな話ですよね。だったら、売れるとか言ったらだめだよって言う。いや、というか、本当にわかってないデザイナさんだったりすると、カッシリ創れば売れるデザインってのがあると思っていて、それってむしろ傲慢だと思います。

 

企業の営業もそうですが、営業だけでモノが売れているわけじゃない。

というよりむしろ、営業は商品・サービスそのものではないわけで。(それも含めてサービスですが・・・)

契約してもらう、購入してもらうための、1ステップに過ぎないのに、そこだけを見て売ろうとするのは「押し売り」に他ならないと思います。(「優れた営業マンはその辺の石ころでも売る」といいますけど、そもそも「その辺の石ころなど売るなよ」と僕は思います)

 

デザインにおいて、UIだのビジュアルだの、所謂「わかりやすい」「伝える」「顧客の要望を~」しか意識していないのは、そもそも誰に対して何をすべきなのか、全体からの俯瞰と、自分が行う局所のコンテクストがわかってないと思います。そして、傲慢だと思います。ポスター一個や二個創ったぐらいで、その街に人があふれるわけがない。

 

 1.誰に

 2.何を

 3.どうやって伝える←「わかりやすい」「伝える」というのはココ

 

「2.何を」というのがすごーーーーーーく重要なのに、そこをすっ飛ばすか、何の検証もなしにそこありきで語りだすというのは、どんなにUIに配慮したって「絵描き」の領域を出ないと思うのです。だって、「嬉しい体験」なんか作れないと思うんですよね。「体験しやすい」ものは作れても、そもそもその体験がユーザに求められていないなら「体験しても嬉しくない体験」になるので。

 

前述のペルソナの話も同じで、コーポレートサイトだろうがECサイトだろうがこのレイヤーでの話は同じだと思います。そういう意味ではBtoBもBtoCも関係ない。「いらないものは売れない」のですから、「では、仮にこの企業が売れるとして、それはどんな機能やサービスが優れているからだろう?」という視点がない限り、成果など出ないと思います。つまり、ペルソナを創るならそれ以前に1にも2にも、その企業の個性をきちんと把握しないと、誰のためのペルソナかわからなくなるってことです。

 

 ・その企業のそのサービスは何が優れているのか

 ・それを求めている人はどこにいるのか

 ・その人はどんな人なのか

 ・その人は、そのサービスの魅力を知っているのか

 ・その人に、どうやって魅力があることを伝えるのか

 ・その人に、どうやって魅力を体験として受け取ってもらうのか

 

企業のサービスや商品を、ユーザの嬉しい体験、Happyな体験に繋げるということはこういうことを整理することだと思います。商品にその機能、企業にその能力がないのに、Webサイトやポスターで何を伝えるというのでしょうか?

 

「いらないもの」は「売れない」んです。

これは他でも同じことです。

「邪魔な人」は「モテない」んです。

「邪魔な人」にどんなファッションさせて、どんな髪型させても、いずれモテなくなるんです。

「邪魔な人」だから。

 

 

自分がデザインするものは、サービス全体のどこの部分を誰に届けるものなのか。

それをきちんと意識するためには、そのデザインの対象物が扱う、その手前にいる商品や企業の個性を把握しないといけないと思います。