その日のドラマ、その日のうちに!
というわけで今回も観ました「わたし、定時で帰ります。」第5話。
第3話のブログをすっとばしていること、ワタクシ忘れておりません。ですが、もういいんじゃないかと、おまえはもうがんばったんじゃないかと、ワタクシそう思うわけです。愛せずに終わってしまった3話の子を胸に抱きながら、5話の感想をワタシ書きます。断腸の思いで、5話の感想を書くの。はいウソです。
3話で書こうと思ったこと、5話で書けるなと思ったのでそれでええかなと。
何を書こうかと思ったかというと・・・・いやそのまえに一言いわせて。
アタイ、だまってられない。
これは言わなきゃいけない。
アラフォーのオッサンとしてアタイが言うべきこと。
種田(向井理)さん、そりゃないぜ。
あの契約の終わらせ方、僕的にはアウトです。あれはやったらダメなんよ。制作会社としてはものすごくよくない。
今日は、そんなバリバリのディレクションのお話。
そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。
第3話のときから薄々思っていたことがあって。今日の5話で確信。
ははーん。さてはこの制作会社、実力低いな?
なんでそんなことを思ったかというと、理由は二つ。
- デザインやコンセプトの進め方が稚拙(第3話)
- 再提案に対するアプローチがおかしい(第5話)
まず、1.の方。第3話なんて忘れたというあなた。だいじょうぶ。僕もだいぶ忘れた。いや、でも覚えているぞ。ここだけは忘れないぞ!っていうか録画あるから引っ張り出すぞ!(あるんかーい)
主人公の東山(吉高由里子)による提案で「すべての人にスポーツを」という創業当時のキャッチコピーを復活させる話になる。ながれはこう。
東山「御社には、選ばれたスポーツエリートのためのブランドというイメージがありますが、わたしにこのシューズが履きやすかったように、実は初心者にもマッチした商品も取り揃えている。その強みもアピールしたいと考えました」
そしてこう続く。
東山「こちらは、御社が創立したときの雑誌広告です。"すべての人にスポーツを"、20周年を迎える今回、改めてこの言葉をフィーチャーし、自分なんてどうせできないと諦めている初心者にも、スポーツを好きになってもらえるきっかけをつくれたらと、考えております」
なるほど。とてもいい話。
でもね、疑問なのです。
なんで?なんでそれなの?
さらに思ったことがあるんだけど、「まあ、まあ・・・現実の話じゃないし、はしょった部分もあるんだろうな」と思ってスルーしました。
だがしかーし。
オ レ 氏 5 話 で 確 信。
このひとたち、ディレクションできない人たちだぞ。見つけちゃったぞ。
「2.再提案に対するアプローチがおかしい(第5話)」のほうね。
クライアント上司「ピンと来ないんですよ」
東山「ピンと来ないと申しますとどういった・・・」
クライアント部下「(だから)ピンっと来ないんですよね」
桜宮(派遣デザイナー)「あのー、実は私も御社のイメージとちょっと違うかなって思ってたんですよね」
クライアント上司「桜宮さんはー、ベーシックオン(現在の運用会社)にいたころからの付き合いだから、うちのことよくわかってくれてると思うけど。とにかくー、社長を納得させたいんで、もう少しウチに寄せる感じで考えてもらえますか」
東山「今の時点で1から直すとなると予算もかかりますし納期の方も」
クライアント部下「それは―こっちの方でも考えますので。とりあえずー、明後日までになんとかなります?」
東山「明後日?!?!」
桜宮「わかりました。ご用意します」
東山「ちょっと、桜宮さん」
桜宮「大丈夫です(笑顔)」
と、結局これで再提案を受けてきてしまう。
よし、第3話で飲みこんだこと、いまこそ言わせていただこう。
おまいら、なめてんのか。
何から何まで間違いで、見ていてアホかと思ってしまった。いや、思ってしまいました(言い直してみた)。
デザイナーの暴走をそのままにしていくんじゃねぇ
びびった。
桜宮(派遣デザイナー)「あのー、実は私も御社のイメージとちょっと違うかなって思ってたんですよね」
みてて、ふぁっ?!ってなった。
いや、こういう人はいる。そもそもドラマだしこういう人が出てくるのも想定内。だがしかし、なぜそれを受け入れるのだ東山ディレクターよ。
シーンとしては、クライアントの意向をくみ取ったデザイナーということになっているが、これは絶対ダメ。だって、よくよく考えたらおかしい。会社のなかでちゃんとアイデアや意見を出し合って揉んできたデザイン案のはずで、それをデザイナーが「実は私ちょっと違うと思ってたんですけどね」って、本来、発注者であるクライアントの方が怒っていい話。会社としての総意を持ってこいってなる話で。
で、こういうのは明らかに失礼なので、プロジェクト責任者として、クライアントと直に接する人間としてディレクターは絶対許しちゃいけない。その場できっちり否定するか、「たしかに、そういう案も対案としてはありました」とかフォローをしないとものすごく失礼。
さらに、プロジェクトのリーダーを担い、納品物のクオリティに対しても最も強い責任を持つであろうディレクターは、基本的には自身が最終的な決定をしなきゃだめ。それが責任を持つということだし。デザイナーの一意見をいきなりクライアントにぶつけるなんて、プロジェクトチームとして絶対にあってはならない。
にもかかわらず、東山はそれをフォローもせずうっかり受け取って帰ってきてしまった。
そらあかんよアータ。
ディレクターは、自分の背後にいるすべての職人たちの仕事と生活を握っているという自覚を持て
そして、デザイナーの暴走も去ることながら再提案の要望をそのまま受けてきてしまった。そんなことしたら絶対ダメ。
ディレクターがクライアントの前に立つということは、ディレクター自身だけが影響を受けるのではなく、その後ろにいるデザイナー、エンジニアまで影響を受ける。修正や変更を安易に受けてくるということは、そのぶんだけ後ろにいる職人たちの労働時間やプライベートな時間まで侵食することになる。仕事なんだからやらなきゃいけないんだけど、だからこそ仕事であるという真っ当な理由が無いとダメ。
そもそも、ディレクターなんて制作が始まったら実際に手を動かすわけじゃないんだから、工数増加の依頼を安直に受けてくるなんてのはもはやただの職務怠慢でしかない。こういうのを僕は「不幸の転売」と言ってます。
誤解の無いように言っておくと、修正や変更を受けるなと言ってるわけじゃない。ちゃんと金と納期を取ってこい。
クライアント部下「それは―こっちの方でも考えますので。とりあえずー、明後日までになんとかなります?」
で帰ってくんじゃねぇ。
追加の金額払うからいいよ、じゃないのよ。
だいたい再提案の工数も不明で、それでいくらもらえるかも当然不明なまま作業に入ってはいかん。
基本的には「わかりました。では再提案のお見積りを出しますので、そちらで追加発注いただけますでしょうか」というべき。しかし、それではスピード感が間に合わないこともある。
そういうときはその場でふっかけましょう。
いや、ふっかける必要は無いけどねw
でも、ちゃんと工数を見積る時間もなく、すぐに対応して欲しいというならどんぶり勘定になるのはしょうがない。「おー、そうですか。では追加でこれぐらいの金額になると思いますが、良いですか?」とちゃんと言うべき。
そんなすぐに作業工数見積もれない?
そんなやつはディレクターなんかやめちまえ!(ひどい)。まあ、だったらね、その金額(工数)分の提案だけすればいいんよ。先に金だけ約束させればいい。
とにかく、クライアントの言うことだからって安易に引き受けてくるな。おまえの後ろには仲間の日々の生活があることを忘れるな。彼らにきちんと説明できるか、「これはちゃんと○○万円の追加費用を確定させてきたから」と言えるか、ちゃんとそこまで考えてクライアントと交渉してくるのがおまいさんの仕事であーる!
そもそもデザインのアプローチが稚拙すぎる
「"すべての人にスポーツを"20周年を迎える今回、改めてこの言葉をフィーチャーします」
なんで?
「自分なんてどうせできないと諦めている初心者にも、スポーツを好きになってもらえるきっかけをつくれたらと、考えているからです」
ほう、なんでそのきっかけをつくりたいの?
「初心者にもマッチした商品も取り揃えている。その強みもアピールしたいと考えたからです」
うん、そっか。
で、それはなんで?
根拠が著しく弱いんですよ。
スポーツエリートだけでなく、初心者にもマッチする商品があること"も"強みだというのはわかる。しかし、それが20周年キャンペーンだからそこをアピールするということに繋がってない。そもそも、メインの強みはスポーツエリート向けのブランドであって。
なぜ創業当時のコンセプトに戻るのか、そこが思いつきでしかない。
なぜ現在の強みとするスポーツエリートではなく初心者を取り込むようなコンセプトにすべきなのか。
これは、コンセプト以前にマーケットの話なんですよ。
初心者を取り込んだ方が今後の売り上げや発展につながるというならそれでいい。しかしそれは、基本的にはスポーツエリートのマーケットがもうここからはそうそう伸びないというときに狙うべき。だって、現在のブランドイメージはそっちなんだから。そっちを突き進むことでもっと儲かるならそのままいけばいい。変に路線変更したらおかしなことになる。
また初心者向けにアプローチすると言っても、二つのパターンがある。
- スポーツエリートメインのブランドが、初心者向けにも手を広げたい
- 高品質なエリート向けを売りにしながらも、スポーツブランドとしてはトップシェアで、さらにスポーツ人口を増やしたい
1と2ではぜんぜん話が違ってくる。
たとえば自動車業界でいうなら
・1.は「人馬一体」で走りを追求するマツダが、街乗りの軽自動車に力を入れる話
・2.は業界トップのトヨタが、若者に寄り添ってドライバー全体を増やす話
マツダならば、自社が得意としている方面から、もう一つ強みをつくろうとする話で、この場合はその方面の競合他社を見てどうするかを考えるべき。
トヨタならば、相手は競合じゃない。クルマに乗りたいという人をもっと増やすという話で、マーケット全体を広げる話。こういうのはマーケットリーダーのトヨタや日産がやるべきでマツダがやるべきじゃない。マーケットが広がって一番得をするのはリーディングカンパニーだから。
このドラマのクライアントが1と2のどっちなのかわからないけど、こういう話をしなきゃいけない。市場、競合と自社、ターゲットユーザそれぞれから調査や分析を提示して「だから、御社は創業当時のキャッチコピーで勝負すべきなんです」っていうのが、本来のコンセプト提案なんですよ。
ビジネスとデザインを語れないから弱い
「ピンと来ないんだよね」に対する返答も同じで、これはもうデザイン(見栄え)の話じゃない。それ以前のデザインコンセプト、カラー設計、イメージ定義ができてないからそうなる。そして、それらはもっと前段で「デザインで、何を伝えるのか」をきちんと言語化し、それをイメージで共有してないからこうなる。
ドラマ内では「出来ないと諦めている初心者に、スポーツを好きになるきっかけをつくりたい」というコンセプトは変わらず、でも「自社にもっと寄せてほしい」という話になっている。
だったらそれはまず「自社のイメージとはなんなのか」を言語化し、さらにイメージ化して共有し、この二つのコンセプトの両立とは何なのか、その話を先にしなきゃいけない。
にもかかわらず、そういうことをまったく固めないで「こういう感じで再デザインしました」「前よりいいね」とかいうおよそ感覚的でしかない話をしている。
デザインには、目的がある。
感覚はもちろん大事。しかし、達成したい目的がある。それが達成できないデザインはすべてゴミと変わらない。そして、その目的は「ビジネス」の面から語れないと固まるはずがない。だって、そもそもそのWebサイトがビジネスのためにあるんだから。
こういうことをちゃんと詰めていかないから、そういうディレクションができないから覆るし、戦えないんですよ。
実力が無いから断れない
さて、やっと冒頭に出した種田(向井理)の暴挙の話。
あまりに、モンスターなクライアントに対して、副部長の種田はあえて相手を怒らせ、相手から「もう御社とは仕事をしない!」と言わせることで契約を切る。
正直、これは弱者の戦略ですよ。
だって、理不尽なら断ればいいんだもん。
ディレクションの基本は
「当たり前のことを当たり前に」。
東山が理不尽な再提案を言われたときだって「わかりました。いまから再デザインとなるとほぼ1からのデザイン費がかかります」って言えばいいんですよ。だって、本当にそれだけ工数がかかるんだから。
なぜ、そんな当たり前のことが言えないのか。
クライアントの言うことだから。
なぜ、クライアントの言うことを断れないのか。
クライアントに切られるのが怖いから。
なぜ、クライアントに切られるのが怖いのか。
切られたら売り上げが減るから。
なぜ、売り上げが減ったら困るのか
それじゃ経営ができなくなるから。
なぜ、経営ができなくなるのか。
他に潤沢な売り上げが無いから。
なぜ、他に潤沢な売り上げが無いのか。
他のクライアントから重宝されるほど人気が無いから。
なぜ、人気が無いのか。
実力が無いから。
当たり前のことなんですよ。それが言えない。当たり前のことが通じないクライアントは断ればいいんです。でも断ったら仕事が減ってしまう。減ってしまうと経営が危うい。だから断れない。
実力があるというのは、良質なクライアントを選べるということなんですよね。
そりゃね、あんな東山みたいなアホな提案して、理不尽な要望を持ち帰るようなダメディレクションしてるような会社は実力なんかないですよ。ビジネスのことが語れないんだから。そんな会社が成果を出してくれるとは思えないだろうし。
そんななかで、あえて相手を怒らせることで相手から契約を切らせるという手段。そりゃ危険ですよ。だってね、それがそのまま同じ業界に伝わったら「クライアントにとんでもない無礼な対応をして契約切られた制作会社」って言われるんですよ。
もちろん何社もそんなことがあれば「まあ、あそこはね・・・」という同情が集まるパターンもある。けれども「契約を切られた」という事実は残るんですよ。そして、それほどに評判の悪いクライアントなら
「あの制作会社、例のモンスタークライアントの仕事断ったらしいよ」
こちらの方が、よっっっっぽど良い評判がまわると思いません?クライアントがモンスターであればあるほど「そりゃ制作会社の方から断られるわwww」となり「あの会社、さすがやな」になるはず。
同時に、セクハラにせよパワハラにせよ、あれだけ確固たる証拠があるんだから、「誠に申し訳ありませんが、弊社はこのようなコンプライアンス違反を行う会社とはお付き合いできません」と、毅然とした態度を取った方が社内の人にとってもかっこいいと僕は思います。
たぶん、受発注の契約書を交わしているのでこっちの都合では契約解除できないっていうことなんだと思うんですよ。でもね、それこそ受発注の契約の時点でそういうことは盛り込んでおくもんですよ。「発注側からは絶対に契約解除ができない」なんて、その時点でもう負けてるんです。
クライアントがバカだから、で終わってたらワークライフバランスなんて夢のまた夢
クライアントがバカだ、モンスターだと揶揄するのは自由です。そりゃ愚痴りたくもなるでしょう。でも、契約ってのはやはりどこかで切った張ったの世界ですよ。受注する側だって戦わなきゃダメだと僕は思います。
パワハラもセクハラもダメだし、労基法も下請け法も守らなきゃいけない。そんなのは当たり前。でも、高い給料をもらいながら自分たちの権利を主張するには、相応の実力が必要なのが現実なんですよ。法律さえちゃんと守ってたら、薄利多売が悪いわけでもないし。
僕はディレクターになりたての頃に、いつもこう言われて育ちました。
「クライアントの下僕にになるな。パートナーになれ」
最近はこういう会社も増えてきたけど、その一部の人は何を勘違いしたのか「パートナー=対等=横柄な態度を取っていい」と思っちゃう人がいる。でも、この話の本質はそこじゃない。
だって、パートナーって横柄じゃないでしょ。
下僕ではなくビジネスパートナーになるということは、それだけ相手に貢献できるということ。相手の言いなりになって相手の言うことだけをやるのではなく、同じ目標を目指す対等な立場として、プロとしてそこに存在するのがパートナー。つまり、相応の実力を持って相手と対等になれ、ってことですやね。
ちゃんと高い給料貰って、自分たち制作者やクリエイターの生活も守って、あれもこれも充実!とするなら、やはりプロフェッショナルとしてある程度は戦えなきゃいけない。
優秀な会社にいる人がみんな優秀かっていうと、ぶっちゃけそうじゃないです。でも、会社としてみたときに人なり資産なりに優秀な理由があるのも事実。良いお金を貰ってプライベートも充実!とするなら、やはりそういう会社に行くのが一番の近道だと思います。
だとするなら、そこに行けるように自分が実力をつけないとですよね。
同時に、単価の高い会社にいるひとは、自分がそれだけの単価を貰える仕事をしているのかを、いま一度考えた方が良いと思います。実は、会社の看板が強いだけで自分にはそれだけの実力が無いかもしれませんから・・・。
人生は楽しいし、楽しんで生きたいけど、だからこそ自分に対して危機感を持って仕事に取り組まないとなと、いまなお自分にも思います。
・・・お!今日はいつもと違う結論になった!
(毎回同じ結論になってて芸がないなと思っていた・・・)
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