笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

元Webディレクターが「わたし、定時で帰ります。」第1話みたよ。

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うん。みた。面白かった。

Web業界の人は知ってる人もいるかもしれませんが、僕は元Web制作会社のディレクターでした。ちょうど主人公と同じ立場。僕の場合はもうだいぶ年上で、10人近くのチームも持ってましたが。

たかだか1話みたぐらいで、考察をきれいにまとめて結論に導くなんてできないしするべきでもないので(せめてやるなら最終回)、現場にいた人間として思ったことを書き散らかしてみましょう、そうしましょうというエントリです。(っていうか本当はこんなこと書いてる場合ではなく、他に書かなければならない文章が山ほどある・・・)

あ、ちなみに、現在は事業会社にうつって発注側にいます。なので、その辺でも両方がわかる人間のコメントとして見てもらえれば。

そんなわけで(どんなわけだ)、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。



 

Web制作会社の実態(残業は経営者のだけせいではない)

吉高由里子演じる主人公:東山結衣が定時の18時で帰ろうとすると、向井理演じる上司(であり元婚約者)やユースケ・サンタマリア演じるさらにうえの上司から「本当に定時で帰るんだね」と言われる。その姿を見てTwitterで「定時で帰るだけなのに何がダメなの?」「こんなのパワハラじゃん!」ってのがたくさんあったけど、まあ無理ですw

少なくともWeb制作会社は残業前提じゃないと経営が成り立たない。

良くないんだけどね。もちろん。でも、業務があふれている以上しょうがない。あふれているなら調整すればいいんだけど、それはつまり「同じ単価で納品物を減らす」ということを発注側がのまないといけない。のまないでしょうねぇ・・・。

なぜこんなことが起きるかというと、言うてもやはり新興産業だから。キノト○ープとかビジネス○ーキテクツとかが(って名前を僕が出すのもビミョウなんだけど)できてもう20年近くたつわけですが、インターネットはそのままずっと進化を続け、当時のメンバーが今も現役だったりする。*1

新興産業というのは、値付けがうまくいかない。

誰もが、どう値段をつけていいのかわからない。結果として、産業を立ち上げるメンバーというのは(どこの会社かは関係なく業界全体で)手弁当であれもこれもやらなければならない。自身の儲けより先に、業界全体の隆盛を考えねばという暑苦しい人間が集まり、そして彼らのおかげで産業がうまれるわけですやね。

Web業界も、もうできて20年は経つとはいえまだまだ新興産業。経営者がどんなに「残業させたくない・・・」と言っても、他社と同じ給料をだし、他社と同じ単価でやっていたら経営できない。それが蔓延しているのがWeb制作会社で、もうこれはいまのところしょうがない。でも、まちがいなく10年前よりは良くなっているので、時を経ればもっとホワイトになるはず。

非常に申し訳ないけれど、残業ゼロの職場が良いならWeb制作業界はやめた方が良いです。その代わり、新しい技術やトレンドに出会えるし、社会において一定のスキルを身に着けられるのも事実なので、そういう意思や夢がある人は来たらいいと思う。

 

本質を見失う両者

いかん、しょっぱなから長くなった。もう少しサクサク行きます。

さて、シシドカフカ演じる三谷さんと、主人公:東山が新人教育について言い合うシーン。

三谷「私たちの頃は、就職、いまほど楽ではありませんでしたよね」

東山「・・・そうでしたね」

三谷「それに比べて最近の人たちはこう、売り手市場っていうんですか。使ったものは元に戻さないし、ゴミはゴミ箱に捨てないし、漢字は読めないし。王様気取りで会社に来ているんですから」

うん、だからなんだ。

東山「でも・・・奴隷みたいに働けって強要したらあっという間にやめちゃいますよ」

三谷「小泉さん(新人)は、叱られることを知らないんです。先輩がちゃんと叱ってあげないと後々困るのは小泉さんなんです」

東山「もしかしたら小泉さん、褒めてのばした方が良いタイプかも知れないです」

三谷「私は、新人の頃ほめられたことなんて一度もありません。どうしてあんなにやる気がないのか」

東山「最初から厳しくしたらやる気も無くなってしまいますし」

三谷「私は最初が肝心だと思っているんです」

東山「私も最初が肝心だと思っているんですけどね」

 

なんという、不毛な議論・・・(まあドラマなんだけど)。

二人の議論がかみ合わないのは、ゴールを共有してないから。

ビジネスである以上は成果に言及すべきだし、経営にいかに貢献するか(それは経営者になるという意味ではない)が大事であって、それ以外はいらない。

王様気取りでもうまくいくならそれでいい。王様気取りの何がいけないのか。それでどういう問題が起きるのかを話すべきで、そこが共有できてないと議論にならない。

同様に、使ったものを元に戻さなくても会社が回るならそれでいいし(それを回収する人を雇えばいい)、褒めなくてもうまくいくならそれでいい。仮に褒めた方がのびる人がいま目の前にいるならば、先輩の「自分が褒められなかった」なんて経験はまったくもって関係のない話で。

  • なんのために
  • 何が課題で
  • どんな解決策があり
  • だれが実行するのか
  • だれが検証するのか

これがまったく整理されてない。

それじゃ議論もうまくいかないですねぇ(っていうかたぶんWeb制作の仕事も)。

 

相手のためを思うなら、相手のスタートラインから話すべき

三谷「私はあなたのためを思って言ってるの」

三谷「相手の立場に立って考えるのが、仕事の基本です」

これはめっちゃ正しい。

しかし、これも同じで「なぜ相手の立場にたって考えられないといけないのか」を説明しないといけない。

「相手の立場に立って考えるのが、仕事の基本です」(キリッ

じゃない。

  • (それを)考えられる人の未来
  • 考えられなかった人の末路、
  • どうして両者にそれほどの差が産まれたのか、

のように、社会、仕事、経済から話をしてあげないと、いまの新卒世代はわからない。わからないから良いとかダメとかいう話は無駄でしかなくて、相手がそうなら話してあげればいい。それこそが先を生きてきた者が提供できることなんだし。

新卒や新人が入ってきて、あいつはダメだというのは仕事ではない。もし本当にそうならそれは本人が悪いのでは無く、そいつに期待して採用した会社が悪い。だったら上層部にそれをいうべきで、本人に罪は無い。与えられた人材を使ってどうするのか。それだけを考えるべき。これも、本質や目的に対する意識が無いから起きるんよね。

相手が「それ」がわからないなら説明すればいいだけなんだから。相手にわかってもらうという目的に対して動いてるなら、相手がわかるであろうスタートラインから話をすべき。当たり前なんだけど。

 

ちなみに他にもいっぱいある

新人が三谷に対して「休んでない人が結果を出しているかといったらそうでもないですよね」というと、主人公の東山が

「何の結果も出してないあなたが言うことじゃないよね」

これもおかしい。
いや「言わない方が良い」は正しい。けれども、言ってることが間違いではないなら「あなたが言うことじゃない」はおかしい。大事なのはそれが正しいか間違いかであって。誰が言おうが、正しいことは正しいはずで、結果を出してない新人にだって「休んでないから結果を出せるわけじゃないですよね」という意見を言う権利はある(それに対する周りからの評価も本人が受けるべきだけど)。

同様に第一話の序盤で、チームメンバーが三谷に対して「これやるべきですか?他にやるべきことが・・・」というと、三谷が

 「やって無駄なことはありません。やれることは全部やるべきです」

みたいなことを言う。これも大間違い。
おそらく残業代が出てないから言えるんだろうけど、本来は人件費でありそれは会社としては投資。投資は無限にして良いものではない。

プロデューサー(ディレクター)たるもの、かけた投資に対して見合う見返りを計算しながら仕事をすべきで、なんの根拠もなく投資すればいいというのは絶対に間違い。これも、本質や目的が見えてない。儲けるために仕事をしているのに。

ま、だいたいそんなことのオンパレードな話なわけで。

 

部活の繰り返しはやめようぜ

はて、あの下級生が上級生の言うことを絶対聞かねばならないというのは、どういう理屈なんでしょうねぇ。おかしな話です。

僕の知人で、会社の上司からのパワハラで悩んでた人がいました。それはそれはもう理不尽な対応だった。

その人に夜の24時に突然知らない人から電話が来て、横で見てて何事かと思ったら「大学時代のサークルの飲み会の誘いだった。現役1年生がOBOGも誘うことになってる」て平然と言ってた。

おかしな話です。
だって、上司から理不尽な対応、怒られ方してつらいつらいって悩んでいるくせに、自分はまだ成人もしてない子に電話をさせてるわけです。深夜に見たことも話したこともない相手に電話させてるんだもん。その理由が「1年生だから」って。それ、やってること理不尽上司と変わらないよ、っていう。

三谷が言ってるのも、これと同じ理屈。自分は新人の頃そうだった。だからこれでいい。これが正しい。こうすべきだ。新人は厳しく叩くべきだ。始業30分前に来るべきだ。
 

残業するやつが評価されるのも強ち間違いではない

一方で、そう思うわけです。

残業を評価する会社に対する反論は、そのほとんどが

「ちゃんと定時内にやるべきことを片付けて帰る社員の方が優秀じゃん」

うん、正しい。

では、その優秀な人がさらに残業したら?

いまの経営者の発想はこれだろうし、これはこれで経営を突き詰めると間違いではない。そりゃそうでしょう。優秀な人がさらに稼働したらより良い結果が出る(パフォーマンスが変わらない前提なので、そこは問題ですけどね)。

だからこれはどこかで割り切りの話だし、もっといえば自分の幸せを見つける話なのですよ。会社のために、仕事のために、キャリアのためにと言ってたらいつまで経っても帰れない。そりゃ、自宅で仕事したらもっと成果出ちゃうんだから。

 

働き方は人それぞれだからこそ帰りたいやつが帰れ

キャリアアップに人生をかけたければ、20時間ぐらい働けばいい。もし自分の能力が20時間変わらないなら、20時間働いた方が成果は出やすいのだから。

僕はそんな生き方したくない。

子供も居なければ結婚もしてないデブサメンの僕だけど、でも、それでもそこまでして働きたくない。だから僕は帰る。前職でも現職でも、帰りたいときは「知らんがな!」と言って帰る。それで嫌われたり、評価が下がるならそれはそれ。そこまでして仕事に没頭したくない。

ちなみに、GoogleAnalyticsが夢に出てきて「ラッキー!」と思うほどには仕事バカだと思います。そのバカな僕が、Jリーグや日本代表戦ではどんなことがあろうと帰る。なんならクビにしたけりゃしろや、ぐらいの勢いで帰るますよ。

これは、仕事なんてそんなもんだろうが!って言いたいわけじゃなくて、「自分が生きている理由はそこにある」という、本質や目的がそこにあるから、そうしているだけで。

働きたいやつは(ルールのなかで)働きまくればいいし、僕はそんな人に負けてもかまわない。サッカーみたいし、酒が飲みたいから。

なかなか難しいことだけど、いまの仕事において何が大事なのかをちゃんと考えるべきだし、それ以前に、自分の人生においてなにが大事なのかをちゃんと考えて、リスクを取って行動すべきだと思うわけでございますよ。

それこそ、結婚もして子供もいる人もたくさんいるんだろうし。

 

「仕事だから~」「上司が言うから~」

それをやめることからすべてが始まると思うわけです。
それを言っていたら、変わらないよね。
それでクビになったら困るんだけど、だから、そうなっても良いように頑張るんだけど、仕事は絶対じゃないんだよ。それは、 「上司、おまえも仕事が絶対じゃないことをわかれ」ではなく。

「おい上司、おまえは俺に仕事を強要するがそんなことは知らん。オレは仕事が絶対ではないのだ。そんな俺が欲しいなら、お前や会社が変われ」

と言えるようなメンタルを持つことだと思うわけですよ。

 

 

 

ってあああああああああ!

まるで結論じみたまとめになってしまった!

そんなことを思ったドラマでした。

毎回こんな長く書いてられないけど、毎回みたいなと思うドラマでしたよー。

Web業界の人みんなみましょう。そしてツイートしましょう。

 

ではでは~。

 

P.S.

たぶん、向井理演じるイケメン種田は過去に何か問題を抱えていて、その問題は三谷と同様の問題だったんではないかと推測。

 

追記:第2話もみたよ。

toksato.hatenablog.com

*1:※ちなみにその創業メンバーが第1世代だとすると僕は第2~2.5世代ぐらいだと思う。