笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

公式サイトの力をみくびるな。

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こんばんちは、スーパー太っちょWebディレクターです。
スーパーは太っちょにかかります。

Twitterなどなどを見てるとですね、まあそれなりにいろんなWeb(制作)まわりのツイートを見かけるわけですけれども。

ちょいちょい、こんな感じのツイートを見かける。

「個人商店のサイトは、とにかく営業日や時間、定休日、お店の場所、連絡先を載せる。わかりやすくする。お客さんがまず知りたいのはそれなんだから。それらをわかりやすく載せることが重要。

結果的に、新規の来店が増えた。おしゃれな動画とか、店長挨拶とかそういうことじゃないんですよ」

おそらく、飲食店とかヘアサロンとか、実店舗があるクライアントに対するWebコンサルの話なんでしょうね。

見る限り、地方か、都内でも個人商店規模の話なんですかね。
この手のコンサル的ツイート、結構な数みかけますね。

僕は基本的に大手企業相手のWebディレクションをやってきたので、こういう個人店規模の話は疎いんですが、おそらく個人商店Webサイトとしては王道なんでしょうね。

なるほどなぁ、と思うわけです。

たとえば飲食店なら、まず店舗に来なければ話にならないわけです。Web上でのサービスも何もあったもんじゃない。まず来てくれないと料理を出すことすらできないのだから。

そして、まだ来店したことない人を"潜在顧客"とするなら、その人たちはサイトに訪れたとき何をするかというと、その多くは「どこにあるのかな」とか「今日やってるのかな」を調べるでしょうね。これがわからないと、そもそも来店することすらできない。

すると、たしかにまずそれらの情報にアクセスしやすいようにすべきだし、そうすることで新規の来店が増えるというのは、とても理に適った話。

だから、僕はこういうツイートを見るといつも思うんですよ。

 

プッ ( ´,_ゝ`) クダラネェ

 

いやーひどい。

我ながらひどい。

ごめんなさい、言いすぎたん。

ワイそういうところあるので、これを読んでる人は真に受けないでね。

ふざけてるだけなんだから!!!(それをやめろよ)

 

ま、でも、正直に言います。

そういうことじゃない、と思うんですよね。

というわけで、今日は「企業の公式サイト」のおはなしおはなし。

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。

 

■目次

 



 

それは、何を生み出したのか

いやもう、先に結論書いちゃいますね。

 

Webで営業時間や場所を調べて来るって、その人最初からもう来るつもりだったんじゃないの?

 

いや、べつにいいんですよ。
その人のために営業時間や店舗アクセスをわかりやすくするのは。というか、むしろ大事。とても大事。

ぶっちゃけ、ターゲットユーザー整理した場合、その人は最も重要なユーザーですね。プライマリユーザーとか呼んだりする

だから、初手としてそれをやること自体にはなんの反論もありません。営業時間や店舗アクセスすら整備されてないのなら、いの一番にやるべき。もう優先順位設定とかいらない。そんなことは同時進行でやっておけば良いぐらいに重要。そりゃだってお店に来てもらわないとはじまらないんだから。

だけど、それって「すでに行きたいと思ってた人を、行けるようにした」だけなんですよ。

 

「そのお店に行きたい人」を増やしたわけじゃない

 

もともといたんですよ、その人。事前のお店の努力によって(たとえば知人のクチコミとか、とっても美味しそうな匂いがしていたとかね)。僕らWeb屋が関わる前から、お店の努力によって「あのお店良さそうだなぁ」って思っていた人。その人を、ただ単に案内しただけなんですよ。

決して、Webの力でお店のファン(候補)を増やしたわけじゃない。

いや、くどいうようだけど、良いんですよ。まずそれをすべき。そういう、すでにお店に来たいと思ってる人が、迷わず、ストレスなく来れるようにすべき。

でもそれ、やってることはただのボタン配置屋さんなんですよね。

だって営業時間や店舗アクセスなんて、画面のわかりやすいところにリンク置いておけば良いんだから。新たに考えたコンテンツでもあるまいし。

 

その程度のことを、「これぞ成果の出る方法!」とかいってイキってて良いの・・・?って思うわけですよ。

 

ボタン配置しただけの話を、ねぇ・・・(´ω`)イイノカシラ

 

 

"公式サイト"にはもっともっと可能性があるはず

公式サイトは、いや、インターネットはそんなね、「行きたい店の場所と時間を調べる」だけでとどまるほどちっぽけなもんじゃない、と、僕は思うんですよ。

「すでに行こうと思っていたお客さん」だけじゃなくて、「行こうかどうしようか迷っているひと」や「行くつもりはまだないけど、どういう店なのか興味本位でサイトを見に来たひと」にだって、ワクワクしてもらって、お店に来てもらうことだってWebサイトにはできると思ってる。

というか、わざわざ公式Webサイトを立ち上げるならそれこそが重要なんじゃないの?とも。だって、営業時間と店舗アクセスなんて食べログにでも書いておけば良いし、食べログ使ってないならTwitterでもインスタでも良いし。

そうじゃなくて、わざわざページ用意するんでしょ?サイト用意するんでしょ?サイトに訪れてくれた人に、伝えられることなんてもうそれこそ、数え切れないほどあるはずで。

突然話変わるけど、これを読んでいるみなさんはですね、Webページの長さってどれぐらいが適切だと思いますか?3スクロールぐらい?LPなら5〜10スクロールまではいける?それは文字数にするとどれくらい?

いや、本来はそういう話じゃないんですよ。

たとえば、僕はサッカーファンなので元日本代表:中村憲剛の文章なら10万字でも読みます。喜んで読む。こんなに!たくさん!いいの?ありがとう!って。

でも、たいして興味もないメーカーの押し付け記事だったら1文字だって読みたくはないですね。

そう、大事なのは「一般論として何文字までなら良いのか」じゃないんですよ。

「ユーザーに求められているものは10万字だって長くないし、求められてないものは1文字だって無駄」

ということのはずなんですよ。

その都度、ユーザーに合わせて「このユーザーに対して、この訴求は、どれくらいの長さまで耐えられるのか」を考えるしかない。

でもね、それは逆に言えば、本当に興味を持ってもらえたら何万文字だって読んでくれるんですよ。だって、youtubeの動画を1時間みることはないだろうけど、Netflixの映画は普通に2時間観るでしょ?

これはね、TVCMとかバナー広告にはできないんですよ。時間もエリアも限られてるから。でもインターネット、とくにWebサイトにはそれができる。興味がある人だけが、クリックやタップをして、膨大なコンテンツを楽しめば良い。その大本営は、公式サイトのはずなんですよね

 

コロナ禍で浮き出てきた「飲食店のWeb能力」

コロナ禍で、飲食店はどこも厳しいと思うんですけどね。

緊急事態宣言が解除されたり、まん防ならお店が営業できたり。

お客さんが来てくれたり、来れなく無ったり。

やってる店/やってない店、閉店時間が早い店/遅い店、いろいろ出てきましたね。

結果として、飲食店のWebやネット対応力の差が、如実に出てきたなぁと、ずーっと思ってます

 

あえて、先に悪い例から出しましょう。

これは、とある店の食べログのページ。

とあるすっちゃかめっちゃかなお店の例

 

 

ね。もうわけわかんない。

この店は、はたして営業してるのか、していないのか(笑)

 

「当面の間、休業いたします」

と書いてあるかと思ったら、そのすぐ下には

「当面の間、下記の時間帯で営業します」

と書いてあって、さらにその下にまた別の営業時間が書いてあって。

おそらく店長さんが、現場のアルバイトさんに「営業時間、こうなるから食べログに書いといて」って指示を出して、アルバイトさんは元の記載とか何も考えずにそのまま書き込み、そしてそれだけで終わる、みたいなことをしてたんでしょうね。

こうなるとオペレーションとか、もう少し広げても「仕事とは」みたいなスタンスの話になるわけですが、実際はそうじゃないと思っていて。

 

コロナ禍になってちょうど2年ぐらいになりますが、その間、それなりにいろんな店舗(飲食店に限らず)行って、わかったことがある。

 

たぶん、店舗で働いている人たちは「自分たちの接客対象はお店にきた人だ」と思ってるんですよね。

でも、ちがうじゃないですか。

実際は、お客さんはお店の中だけじゃなくて、来る前にも、来た後にもどこかに存在していて。接客の対象としては、実は来店前からはじまってるんですよね。でも、それがわからない。だから、こういう対応になっちゃうんですよ。書いとけばいいや、書いてるからわかるだろ、わかんなかったら連絡してくるだろ、と。

 

他方で、できる店はできるんですよね。

最近、ほんと好きだなぁと思う店があって。

ここなんですが。

twitter.com

ただのTwitterです。

もとい、ただの立ち飲み屋のTwitterアカウントです。

でもね、いつもツイート眺めながら「一生懸命、お客さんとコミュニケーションを取ろうとしてるなぁ」ってのが見えるんですよ。

たとえば、定石とも言えるこんなツイート。

 

でも、こういうんだけじゃなく、こんな店長の日常の話も。

 

はたまた、こんなツイートも。

「トラウマ」ってなんだろ?って思うでしょ。

それはね、この数日前に、お店のエアコンが壊れたんですよ。

不覚にも、ぼくは「(トラウマ)」ってみたときに、クスッと笑いましたw

このお店、ほぼ毎日こうやってツイートしてるんですよ

その多くは営業時間の情報なんだけど、そこにこうやって店長さんの想いやお話、ときにおすすめメニューなんかを入れてくる。

コロナ禍において、こういうのってすごく重要だと思うんですよね。少なくとも僕は「ああ、店長頑張ってるな」「また行こうっと」「必ず行くんだぞう」って思ってる。これを見て。

でもね、技術的にはなーーーんも大したことしてないでしょ?

少なくとも食べログにログインして情報を変更するのとそう変わらないというか、むしろたぶん管理画面なるものがある食べログの方がむずかしい。

だから意識の問題なんですよ、これ。

自分のお店のお客さんはどこにいるのか、どこが接客の場なのか、という。

 

Web屋さんは、こういうところで勝負すべきだと思いますよ(そうじゃなくてもいいけど)

ね。こういうのって、そもそも飲食店の人たちが気付くかっていうと、難しいと思うんですよ。だって、そりゃ本来は彼らにとって接客の場はお店であり、そしておそらく多くの人にとってWebやITは「むずかしいもの」でしょうし。

それを
「そんなことないんですよ」
「貴店のお客さんは、お店に来る人だけじゃないんです」
「そんなに難しいことじゃないんですよ」
教えてあげることこそ、Webのプロが本来やるべきことでは?と思うわけです。

 

さらにいえば、公式サイトや公式アカウントにはもっともっともっと、できることがあると思ってるんですよ。

そもそもですね、これまでのすべての話を覆すようなことを言いますが、定休日や場所を調べないとわからないような顧客は、そこまで重要ではないと僕は思うんですよ。

いや、重要。めっちゃ重要。

でも

  • 一度来店してくれた人をいかにリピーターにするか。
  • さらに、何回か足を運んでくれた人をいかにファンにするか。

この二つのユーザーの方がもっと重要だと思うんですよね。とくにWebでのコミュニケーションにおいては。そして、個人商店規模のお店においては。そんな、毎日毎日新規のお客さんばかりしか来ない店の方が経営としては危険で。いかに固定客を増やすかが大事ですから。

そもそも↑でTwitterアカウント取り上げた立ち飲み屋(ドラム缶渋谷店)だって、これ新規のお客さんにはたぶん響かないですからね。店長さんのこと知らないし。

たとえば、おすすめメニューの紹介はもう鉄板だと思うけど、僕はもっとお店側が各メニューを暑苦しく語っても良いと思うんですよね。それもそんな肩肘張らず、ブログにだらだら書いても良いし、Facebookでも良いかもしれない。その紹介も、べつに本当にそのメニューの特徴とか美味しさだけに縛らなくても良くて。

どういう経緯でできたとか、なんなら、それを教えてくれた師匠の話を入れたって良いと思う。料理の伝承っていうとつい師匠と弟子だけになってしまいがちだけど、それを食べる人だって立派な「歴史の参加者」だと僕は思っていて。

もう亡くなってしまった師匠の麻婆豆腐を、独立した今のマスターが引き継いで、でも後継ぎはいなくて。そこで途絶えてしまうように見えるけど、でも、その熱く語ったコンテンツを読んだお客さんが「食べてみたいな」と思って、お店に訪れてその麻婆豆腐を食べて、おいしくて、まわりの人に紹介していく。

それだって立派な歴史の伝承で。お店のマスターが暑苦しく思い出を、そのメニューに寄せて書いたら、そんな素敵な話が生まれるかもしれないわけですよ。

全メニューにそれをするのは難しいかもしれないし、一方で終了したメニューがネット上に残ってしまうリスクもある。けれどもそれは、もしそのメニューページのPVが多いなら復活させるのだってありで。そうやってマーケティング的な調査にだって使えるわけですよね。ふる〜くなっても、メニュー紹介のコンテンツを地道につくっていけば。

はたまたね、ここ数年よく「このハッシュタグつけてSNSで投稿してくれたら、ワンドリンクサービス!」みたいなのも見かけるんですけどね。これも、もったいないというか、杓子定規だなぁと。

どうせね、お店の公式アカウントが、その投稿をシェアするんですよ。ということは、結局そのお店をフォローしている人には、そのお客さんが来店したことは見えてしまうわけです。だったら、むしろいっそお店側から動画を撮らせてもらえばいいのに、と

お客さんがワンドリンク目当てに機械的にアップしたインスタより、お店側から「今日はどこからいらっしゃったんですか?」とか「このメニュー、お好きなんですか?」とか聞いた、お店の雰囲気や臨場感がわかる動画をアップした方がよっぽど、お店のファンは増えるんじゃないかなぁと。

もちろん嫌がる人もいるだろうから、それは店内の壁に「インタビュー投稿にご協力してくれた方は料理一品半額!」と書いておくとかね。こうすると、たとえばお店側からイチオシのメニューを指定できたりもして。積極的に売り出したいメニューを、実際に食べてくれる人にインタビューして、その動画をSNSにアップできちゃったり、とか。

いま、どこもかしこも「LINE登録してくれたらワンドリンク無料!」とかね、まあダメじゃないんだけど、あれは結局ただの値引きなんですよ。そして、送られてくるのも結局クーポンとかそんなのばっかりで。それほどブサイクなコミュニケーションもない。値引きします!値引きします!来てね!って連呼してるだけだから。

まあ、どれもそれなりに運用の手間や、(多少の)炎上リスクもあるとは思っていて。だから慎重にやらないといけないのは事実なんだけど、こういうWebの使い方、お客さんとの繋がり方を教えることこそ、Webのプロの仕事なのでは?と思いますねぇ。

 

我々は何をつくっているのか

UI設計に意味がないとは言わないですが、結局ユーザーが受け取るのはコンテンツなんですよね。もちろん、UIも含めたデザイン的な世界観とか、「目的の情報にストレスなくたどり着ける」というユーザビリティ的な面で提供できることもあるにはあるわけですが。

だが、いずれにせよ、飲食店に限らず公式サイトというものはだいたい「情報」の提供なわけですよね。営業時間も、アクセスも、メニューも、コンセプトも。

でも、その「中身」を一切作らないなら、それって結局は器というか「ガワ」をつくってるだけなんですよね。

本来は、膨大なコンテンツだって読んでもらえるメディアなのに、結局中身じゃなくてガワだけつくってたりする。

なおいえばそれが、営業時間や店舗アクセスのわかりやすさを整理するだけで満足していたら、そのお店のビジネスにほとんど何も貢献してないのと変わらんと思うんですよね。それこそ、画面内にボタンを置く人なだけで。

できるはずなんですよ、Webなら。
名前も知られてない人を連れてくることは難しいけど、ほんのちょっとでも興味を持ってくれた人を来店者に変えたり、一回や二回来てくれた人と繋がり続けて、もっともっと好きになってもらうことだったり。

公式サイトや、公式アカウントってそういう潜在能力がある場所だと思っていて。

もったいないですよね。

営業時間やお店の場所をわかりやすくするだけで終わってたら。

 

 

結局のところ、我々の仕事は、何を生み出しているのかってことなんですけどね。