笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

宣伝会議の「インバウンドマーケティング」が僕の知ってるやつとだいぶ違う件について。

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いいえそんな、天下の宣伝会議様にケンカを売るつもりなど毛頭ございませぬ。しょせんはむめいなうぇぶでぃれくたー。しかも受託としてトレンドを追うことをあきらめた(Web系じゃない)事業会社の人間でございます。

 

でも、だからこそ言えることがあると思うんだよねー。

 

 

www.sendenkaigi.com

 

いや、ぜんぜん違わない?と思って。

これもはや、事業会社(オウンドメディアやる方の大半)をダマすような話ばかりじゃん、と思って。

あら、ワテクシ、インターネットの片隅(悪い方)、リアルでいう「東京湾」に自ら沈められようとしているのかしら。こわいわ。生きたいわあたしも(謎)

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。

 



 

インバウンドマーケティングのメリットは「コストパフォーマンスの高さ」じゃない

https://www.sendenkaigi.com/feature/inbound-marketing/

1つ目のメリットは、コストパフォーマンスの高さです。従来の広告手法では、テレビや新聞・雑誌などに広告を出稿するために、数百~数千万円もの高額な費用をメディア側に支払う必要がありました。

コストパフォーマンスなんてそう変わらんですw(事業会社のワテクシ談)
いや、これは「何をコストと捉え」「何をパフォーマンス(成果)と捉えるか」で実は大きく変わる話だと思うんですが、それにしたって「あれは費用がおさえられるからやろうぜ!」という手法ではないのは間違いない。

結局、こういう風にインバウンドマーケティングのことを言う場合にはだいたい「有益なコンテンツを提供する」とかいうんだけど、その「有益なコンテンツ」というのはいったい誰がつくって誰が見つけてくれるんだという

ここの根底にあるのは「良いものをつくれば売れる」と言ってることは変わらなくて、それはインターネットにおいても幻想だと思います。売れるわけねぇだろ

「有益なコンテンツを創るコスト」は確実に存在します。それはこれまで受託のWebディレクターとしてやってきて、いま事業会社の担当者となってもさらに思います。インターネットの中心であるテキストにしても動画にしても、それを紡いで作れる人は限られた人です。自社のことを知っているから文章が書けるわけじゃない。ましてやWordがつかえるから良い文章が書けるわけではないし。

仮にユーザーが自発的に見つけてきてくれるとして、見つけてくれるほどに目立たないといけないわけで、それは検索エンジンに上位表示されることなのか、SNSでバズることなのか、はたまた別の方法なのかわからないけど、そのどれにしても「それができるタレント(才能)やコンテンツ」は必要なわけで、結局費用は掛かるわけです。SEOのために大量なページを用意しようと思ったら、それ結局数百万円とかかかりますから。

WELQにしたって、Googleのアルゴリズムにのっとってやったわけですけど、逆に言えばあれだけの大企業が巨額の投資をしてやっと成り立つわけで、その辺に転がってる企業(すみません)がコストの低さを求めてやることじゃないですよね。

広告費が下がったとしても、それ以外に金がかかるはずで、そんなことを宣伝会議のWebサイトで言ってはいかんだろうと思うわけです。

待ちの戦略ではないし、広告を否定する戦略でもない

https://www.sendenkaigi.com/feature/inbound-marketing/

一般的にインバウンドマーケティングが「待ち」だとすると、アウトバウンドマーケティングは「攻め」といわれます。

どれだけの会社が「待ち」で利益が出るのか、甚だ疑問なわけです。

とある尊敬するコミュニケーションデザイナーの方が(飛び火すると申し訳ないので名前は出さない)こう言ってたのが印象的で。

「いま(巷で)叫ばれている『インバウンドマーケティング』というのは、極端に言えばWeb制作会社が、自社のオフィスが入っているビルの下で通りを毎日掃除していれば、いずれ誰かが見つけてくれて"あの会社は良い会社で、良いサイトを創るはず"と思って問い合わせてくれる、と言ってるようなもので、そんな簡単なもんじゃないよね」

ああ、なんてうまい表現をするんだろうと思いました。

「掃除」は言い過ぎかもしれないけど(それはたぶんその方もわかって言っていると思います)、検索キーワードに対して自社だけが持ってるものなんて大概は指名キーワード(=自社名検索)しかないはずで、それ以外になれば結局は競合他社との戦いになるわけですよ。

さらに、実際に検索しているキーワードで表示されるコンテンツがそのまま発注するに足りるコンテンツになるかどうかはまた別の話で(発注担当者ですら気づいてないポイントなんて検索できないし、そんなのいくらでもあるから)、そうすると、わかりきったキーワードに対して戦うことになり、結局それはBIGキーワードになり疲弊するわけですよね。

いや、だからそれが違うと思うんですよ。
広告が悪いわけじゃない。ユーザーや消費者に断りなく、そして断っていても邪魔になるような"情報"を"広告"として出しているから嫌われるし、だから広告の効果が出ないだけで、それがただの情報だろうが広告だろうが、ユーザーにとって有益なら自分で取捨選択して見つけるはずです。

簡単な話で、自動車好きのコミュニティや雑誌に「東京モーターショー」の広告を出すのは決して間違いではなくて、読者やユーザーは喜ぶと思うんですよね。そしてそれは立派な「インバウンドマーケティング」だと思うわけです。

 

「それが"情報"か"ゴミ"かはユーザーが決める」

 

だと思うんです。
そこに広告かどうかは究極的に言えば関係ない。
広告だって有益ならユーザーは見ると思っています(「なんだ、広告じゃねーか」というのはこれまで広告がユーザーを欺き続けてきた結果でしょうね)。

インバウンドマーケティングをやるとしても、それは広告を否定することにはならないと思うんですよ。有益なコンテンツだからこそ、それを見つけてもらえる場所に自分たちから出向いて自社コンテンツをアピールするのは、決してインバウンドマーケティングの思想に反してはいないし、何よりユーザーのメリットに反してない。

広告だって手段の一つなんだから使えばいいんですよ。大事なのはその思想の方で、これまではそれこそのべつまくなしな(に限りなく近い)範囲に投下していたものが、きちんとユーザーや場所を限定して広告を出す、という意思とその効果をちゃんと追うことこそが大事なんですよね。そのためには思想や意識が大事で。

ターゲットの絞り込みに有効なわけではない

https://www.sendenkaigi.com/feature/inbound-marketing/

3つ目のメリットは、ターゲットの絞り込みにも有効だということです。ターゲットが検索しそうなワードを織り込んだコンテンツを作成するなど、検索エンジンからの導線を意識した施策にすることで、すでに商品やサービスに強い関心を持っている人へ向けて、質の高い情報を届けることが可能です。

と書いてあるんだが、それがそもそもおかしくて。

「ターゲットが検索しそうなワードを織り込んだコンテンツを作成するなど」

と書いてあるんだけど、そもそもその「ワードを絞り込む」のは誰がやるんだという話で、それは人間、というか運営者側がやってるんですよね。だから「ターゲットの絞り込みに有効」なわけではないんですよ。それはその前にやってるし、やらないといけないんだから。仮にSEO目当てだとしてもターゲットキーワードは運営者側が決めないといけないわけで、AIやインターネットが絞り込みをしてくれるわけじゃない。

「インバウンドマーケティングとターゲット」の話を(あえて)するならば、「ターゲットの絞り込み」ではなく「絞り込まれたターゲットリストができる」の方でしょう。自社側で絞り込んだターゲットのみにアプローチができるようになり、そこから得た「見込み顧客リスト」がその後に大変役に立つわけでしょう?インバウンドマーケティングの施策がターゲットを絞り込んでくれるわけではないです。

 

「インバウンドマーケティング」は「営業フローの最適化」に有効なだけ

インバウンド~、なのかコンテンツ~なのかよくわかんないけど(といいつつ僕の中では明確に違うものですが)、少なくとも「見つけてもらう」ということを主眼にした「インバウンドマーケティング」の本質は、広告費の削減でも、CPAの最適化でもないと思うんですよね。

だって、トータルで言えば費用はそうそう減らないし。
ただ、開始初期の費用は減らないけど、その費用の使い方に対して無駄がなくなるんだと思うんですよね。なぜなら、自社のサービスやプロダクトと相性の良い人しか出会わなくなるから。

「ネイティブアド」というのはその最たる例であると思っていて、べつにすべての会社が自社で集客(=出会い)からその後のお付き合い、そして契約まですべてを担わなければならないとは思わないです。

前述のとおり「見つけてもらえる場所に自分たちから出向いて」行くことも全然ありだと思うし、世の中の大半はそっちの方が多いはず。

だいたい「これだけ情報にあふれた社会で~」とか言っておきながら、他方では「ユーザーが見つけてくれる」とかなにを寝ぼけたこと言ってるんだって話ですよ。情報があふれてるからこそ、見つけられないんだよね。だから従来の広告が効かなくなってきたんだよね。

インバウンドマーケティングの思想や施策が優れているのは広告費の削減でもそのコストパフォーマンスでもない。

これまでマスメディアで大量な「どうでもいい人」に対してアプローチをして、極端にいえば1億2000万人のなかで100万人ぐらいしか契約が無かったのに、でも1億2000万人に対応せざるを得なかった。でもそれが初めから(契約の期待が持てる)1000万人だけにアプローチができて、しかもそのなかの200万人ぐらいに「100万人になりませんか」と言える次のステップにいける手段と投資できる予算を取れることが、インバウンドマーケティングという思想や施策の優れている点だと思います。

要するにこれは、営業フローの無駄をなくし、そしてさらに「嫌われる可能性をできるかぎり削減できること」だと思うんですよ。

1億2000万人にアプローチして100万人が契約してくれている時代でも、それでうまくいってたならいいけど、情報があふれる現代になると全く関係ない1億人ぐらいが「あの会社の広告がウザいよね」といって、将来の顧客になったかもしれないのに、そのおかげで嫌われるわけですよ。そんな悲しいことは無い。

だから、インバウンドマーケティングというのは実は手法ではなく、思想や姿勢だと思うんですよね、僕は。(とかいって、これもどっかでとある人がだいぶ前にすでに言ってたけど)

 

さて、そろそろ宣伝会議に東京湾に埋められる準備をしようと思います。

うそです。

まあ、みんな、嫌われる広告をやめて、自社が愛される施策やサービスを考えようよ、と、思います。

いきなりは難しいけど(泣)