笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

「看護師には絶対解けない秘書検定2級の問題」の解答は4でも間違いじゃない件。

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こんばんちは、スーパー太っちょWebディレクターです。
スーパーは太っちょにかかります。

試験や定期テストというものは、とにかく問題にならない程度の低い点数で切り抜ける、それが我が人生。「頭の回転は悪くないと思うのに、なんで勉強はさほどできないのかしら」と親に言われて育ちました。(それは僕が勉強してないからです、お母さん)

さて、こんな話題が話題になってまして(謎)

togetter.com

なんかすごく(問題の解答が)叩かれている。

だが、僕はそんなにこの解答が間違いだとは思わないので、まあ書いておきましょうと。

そしてプロジェクトを管理するWebディレクターには絶対に必要な視点だと思う。

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。

 

■目次

 



 

何を言ってるのかわからねーおまいさんには

念のため、どういう話なのか引用して書いておくよ。

というわけで、もともとどんな話か知っている人はここすっ飛ばしてOKなんよ。すっ飛ばす人はこちら↓

 

■問題の詳細

こういう問題内容だったと。

秘書A子は上司(販売部長)に「K社から新製品発表会の案内状がまだ届いていないと連絡があった。漏れがないようにしてもわらないと困る」と注意された。しかし、案内状のリストにK社は入っていない。このような場合、A子はどのように対処すれば良いか。以下の中から適当と思われるものを一つ選びなさい。

  1. K社に電話で遅れた理由を説明してわび、会場や日時などを伝えておきすぐに送る。
  2. K社はリストにないが送ってよいか上司に確認し、よいと言われたらすぐに送る。
  3. リストになぜK社がなかったのかを上司に尋ね、K社には詫び状を添えてすぐに送る。
  4. 上司にすぐに送ると言って、送り状にわびの言葉を書いて送り、リストに追加しておく。
  5. K社には電話で不手際をわびてすぐに送ると言い、リスト鬼追加してよいかを上司に確認する。

 

■解答はこちら

正解:4

漏れがないようにしてもらわないと困ると注意されたのだから、K社は送る対象なのである。また、K社から届いていないと連絡があったのだから、送り状にわびの言葉を書いて送り、リストに追加しておくという4)の対処が適当になる。

1)はK社に対して失礼であり、そのような内部事情は取引先につたえることではない。

2)3)は、上司にK社はリストにないと言っている。これは自分には責任がないという言い訳になるので不適当。

5)もリストに追加してよいかと上司に言っているので不適当。つまりリストにはなかったということで、余計な言い訳になる。

これに対して

「正解は2か3だろ!」

「責任の所在を明確にしないとか、こんなんだから日本はダメなんだよ」

「こんなの忖度まみれの対応だろw」

 みたいなコメント多数。

 

僕はそうは思わなくて、ですね。

 

「選択肢:4」でダメな理由(起きるであろう問題)を考える

実は、僕も一瞬、2が正解だと思った。

が、正解が4だというので、あえて考えてみた。

これに限ったことじゃないけど、自分と違う結論に至った人がいるとき、「その人の結論が仮に正しかったとして、ではそれはどういうときなのだろう?」と逆に考えてみることが大事だと思っている。数学でいう検算みたいな?

 

「上司にすぐに送ると言って、送り状にわびの言葉を書いて送り、リストに追加しておく」

 

という対処をしたときに、何が起きるか。

たとえば以下のようなケースで問題が起きる。

  • 本当は送ってはいけない相手だった
  • 違う内容の案内状を送らねばならない相手だった(のを忘れたまま未送付だった)

こういうときに、ちゃんと改めて確認もせずにそのまま送ってしまうと、本来は送ってはいけない相手に案内状を送ってしまったりする。大問題。

そして、これらの問題を起こさないためには「改めて確認」をする必要があるわけだけど、それはつまり、あるひとつの前提があるわけですよ。

「上司の指示が間違っているかもしれない」

という前提のもとに、こういう判断になる。

たしかに、人は間違うもので、上司もクライアントからクレームをもらって深く考えずに条件反射的に言ってるのかもしれない。

であれば、そういう前提じゃなければ4でも良いんですよ。

つまり、「上司の指示が間違っていない」という前提なら、2や3や5の対処はおかしい。間違ってないのだから確認する必要がない。というか、確認というタスク自体がもう無駄なコストになる。だって間違ってないのだから。

たしかに、問題の解答や解説もそのような前提に沿って書かれている(ように見える)。

それをみて僕は最初、こう思ったんよ。

「だったら"なお、上司の判断に誤りは無いものとする"みたいなの書いておけば良いのに」

 

「なぜ、その前提を書かなかったのか」を考えてみる

書いておけば良いじゃないですか。

「なお、上司の判断に誤りは無いものとする」

って。「なお空気抵抗は考えないものとする」みたいな。

 

だから、また逆に考えてみるわけなんよ。

「どういうときなら、この前提を書かなくて良いのだろう?」

と。

前提を書かないということは、「わざわざ書かなくても、最初からそういうものだ」というとき。

ということは、そもそも秘書というのがそういう仕事なのかもしれない、という考えが浮かぶ。

 というわけで調べてみた。

秘書とは - コトバンク

  1. 要職の人に直属して、機密の文書・事務などを取り扱う職。また、その人。セクレタリー。「社長秘書」
  2. 秘密の文書。また、それを扱う人。
  3. 秘して人に見せない書物。秘蔵の書物。「秘書を公開する」

2と3は今回のは対象ではないとして、1がいわゆる「秘書」といわれる人なのでしょう。基本的には要職の人のサポートっぽい。

また、秘書検定を運営する実務技能検定協会のページをみると、2級についてこういう記載がある。

3級より少し複雑な場面設定になります。上司の身の回りの世話や手助けを適切に行うための優先順位も考えることが必要になってきます。感じのよさだけでなく効率のよい仕事の仕方も問われる級で,就職を意識した大学生の受験が多く,社会人の受験も目立ちます。

と。

これらをみる限り、おそらく「秘書」という業務役割には「上司とともに考え、つくりあげていく」ということが求められてないのだろうと思う。

たとえば、元のお題として出されている「看護師には絶対解けない」というのも、そもそも看護師というのがそういう仕事じゃない。医師とて絶対ではなく間違うこともあり、ともに協力しながら安全で安心な医療を提供するというのが、看護師の仕事なのでしょう。なので、たとえば医師が出した指示に対しても、間違いがないかを自ら確認に動くのでしょう(いや、実際のところは知らんですけどね)。

秘書にはそういうことが求められているのではなく、要人たる上司がいかにスムーズに判断、行動できるか、そのためにサポートを行うのが秘書の役割で、つまりそもそも上司の判断が間違うという前提がない・・・のではないかと。

だから、ある意味では真逆の業務役割なんでしょう。秘書と看護師というのは。
「上司と一緒に考え、より良い仕事をしていく」というものではないんでしょう。あくまで、主(あるじ)たる上司や要人が自分の仕事に没頭できるかであり、彼ら・彼女らの判断をスムーズに展開させるかが勝負であって。

そういう前提なら、4が正解なのも頷けるし「なお〜」という注釈的な文もいらない。そもそもそういう仕事なのだから。

 

とはいえ「前提がどう」という話をしたいわけじゃない

そもそも僕がサッと調べた程度のものなので合っているかどうかわからんし。

僕がここで言いたいのは

「前提によって正答などいかようにも変わる」

であり、もっと言いたいのは

「仕事はゴールに対して適切なプロセスで行うもので、決まりきったやり方なんてない」

ということで。

 

このまま話を進めると「秘書というのは特殊な仕事なんだな」で終わってしまいそうだけど、そんなことはないんですよ

ものすごく感じるのが

「そうやって秘書に責任を押し付けるんだろ」

「言い訳するなってパワハラ」

「責任の所在をはっきりすべき」

みたいなコメントの多さ。*1

気持ちはわかるんだけど、「誰に責任があるのか」や「なぜこれが起きたのか」と、「直近の問題解決」はまったく別の話だということを、ちゃんと考えるべきだと思う。

いや、ものすごく簡単な話で。

問い : 「送るべき相手に案内状が送られていないことが発覚しました」

いますぐにやるべき対応はどれ?

A.なぜ起きたのかを調べる

B.誰の責任なのかを調べる

C.すぐに案内状を送る手配をする

組織が抱えている問題にもよるけど、基本的にはCでしょう。

AやBもいずれやるべきだけど、いま直近で起きてる問題の解決になってない。まず、社外にいるお客様にかけているご迷惑こそをなんとかすべきで、そこを後回しにして内部の組織的な問題と悠長に向き合ってる場合じゃなくて。

もちろん、責任の所在を明確にすることも、問題の発生原因を特定することも大事だけど、それは後でやればいいことで

Cをすぐに対処することによってAやBがうやむやになり、自分のせいにされるのが困るというのはわかるんだけど、少なくともそれは自分の話をしているのであって、プロジェクトやそこで起きている問題に向き合ってるわけじゃない。

 

また同様に、

「リストになぜ漏れたのかを確認しないと危ない」

というコメントもすごく多い。

もちろん、それが間違いだとは思わない。思わないけど、そうじゃないプロセスも決して間違いじゃない。みんな自分の行動によって損害が出るのが怖いんだろうけど、わざわざ確認しなくても良いことだって仕事にはたくさんあって。

たとえば、実際にあった話なんだけど、クライアントに送るべき資料が送られてなくて。「ありゃ、やばいよそれ。すぐ送っといて!」ってディレクターが指示をだしていたのに、アシスタントが数時間経っても送っていなかったりする。聞いてみたら「送る前に内容に間違いが無いか確認してました」とか言ってたりする。

ディレクターにしてみたら「いや、良いからさっさと送ってよ・・・」という話になる。ちゃんと完成してるもの(すでにチェックが入っているもの)ならすぐ送れば良いんだろうし、そうじゃないなら確認した方が良い・・・という話じゃないのですよ

いま、直面している問題は「送るべき資料がクライアントに送られていない」なので、1にも2にも、とにかく早く送らなきゃいけない。もちろん、そのときにまったく違う資料を送ったらダメだし、あまりにミスが多い資料を送ってもダメ。だがそれとて、サッと5〜10分の確認にとどめるべきで、数時間もチェックしてる場合じゃない。要するに、起きている問題に対して、確認コストのバランスが見合ってないのですよ

 

仕事において最も重要なことは、ゴールに対して適切なプロセスを描くことで。

それはつまり、取れるリスクはどの程度なのかを判断して取捨選択していくことであり、「こんなの確認しないとダメだろ」ってのは違うと思うわけですよ。

そもそもこの問題のお題になっている「案内状」だって、仮に会社的に送ってはいけない相手だったとして、それを誤って送ったとしてどれだけの不利益が発生するのかっちゅう話で。

もちろん、呼んではいけない相手、たとえば反社な組織だったとして、その確率がどれだけあるのか。販売部長である上司が「送れ(漏れては困る)」と言ってる時点で、おそらくかなり可能性の低い話でしょう。それをわざわざ"部長"なんて偉い人(=めちゃ忙しい人)に確認する時間を取らせるのか、という。

「確認するのがダメだ」と言ってるわけじゃないんですよ。

「確認するのが当たり前だ」ではないよね、という話です。

 

とにかく、その都度その都度、その自分の判断が本当に正しいのか、その行動はなんのためにやっているのか、それはみんなが意識すべきだし、Webディレクターという職種の人はなお一層考えるべきだと思う。

少なくとも、プロジェクトで問題が起きてるのに、上司に「これは誰の責任ですか!」とか言ってる場合じゃないよね、と。

 

もちろん、責任の所在は明確にすべきですけどね。いずれ。

 

 

*1:まあ、そもそも問題文の範疇では上司から「言い訳するな」とは言われてないんだけども。