ええ、詰まっていたの。
これね。
見栄えって大事。
デザインするって大事。
いやそういうことじゃねーんだわ。
視覚効果は大事だし、ちゃんと見やすくデザインするって大事。ただ、それ以前に大事なことがあるんだけど、Twitterやはてブを見てるとそれをすっ飛ばされているような気がして、ワテクシちょっとヒトコトいいたいの。
ちなみにデザイナー版のチラシを批判するような内容は一切ございませんこと、予め言っておきますの。
そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。
右のやつとか左のやつとかいうと紛らわしいので、2つのチラシのビフォーを「素人版」、アフターを「デザイナー版」とします。
必ずしも「デザイナー版」が優れているとはいえない
デザインというとついつい見栄えをきれいにしたり、情報に強弱をつけてインパクトを持たせたりすることを考えがち。でも決してそれがデザインの本質ではないのですよ。
たとえば
「この中から営業日、利用料金、アクセス情報を探して教えてください」
と言われたら、たぶん多くの人が素人版の方が探しやすいはず。
いや、デザイナー版の方もきちんと情報の区分けができているので見つからないなんてことはない。パッと見て探せるのでデザイナー版の方が見やすいと思う人もたぶんいる。それはいる。
僕がここで言ってるのは「100人にテストしたら、たぶん素人版の方が多い(情報を見つけるのが速い)結果になる」という話。
もちろんちゃんと理由(理屈?)があって、素人版の方がルールが統一されているから。だから、情報が探しやすいんよ。
「うそだ!デザイナー版の方がちゃんとデザインされていて見やすい!」
っていう人、たぶんたくさんいるでしょうね。でも、ときに人間は見栄えに騙されるのです。見栄えが良いと「わかりやすい!」と錯覚しがちになる(これはとくにデザインを発注する側に顕著)。
ではここでもうひとつ質問するんよ。
「このキャンプ場に行くことが決まり、楽しみな当日。
あなたはどちらのチラシをバッグに入れていこうと思いますか?」
こうなると、素人版の方が多いんじゃないかな。
自発的に情報を探しているときに、過度な装飾は邪魔になる
っていうことなんよ。
とくに、スペックを知りたいときに装飾はとても邪魔。スペックをちゃんと知りたいときは表組みが強力なコミュニケーション手段になる。妙なデザインは、いらん。いらんのである!(謎)
ってね、前述のとおりデザイナー版をディスりたいわけではないんよ。かといって、「過度なデザインをきらう人だとか、人によっては素人版の方が良い」と言いたいわけでもない(それはそれで真実だけど)。
デザインにおいては、利用シーンの把握こそが最も重要だ、ということが言いたい。
両デザインのどちらを選ぶかにおいては、ターゲットとなる相手(つまりチラシを手に取る人)がどういうフェーズにいるのかによる。それこそが最も大事なんよ。
たとえば、そのキャンプ場のことを知らない(もしくはリニューアルしたことを知らない)人には、まちがいなくデザイナー版の方が良い。
しかしすでにリニューアルしたことを知っている人には、素人版の方が良いんよ。
もっとわかりやすい例を出してみましょうぞ!
こういうのは、飲料メーカーが顕著だったりする。
たとえばキリンには「零ICHI(ゼロイチ)」というノンアルコールビールがある。
※年齢制限がかかってるページなのでスクショは貼らない。一回で良いので表示してみてくだせい↓↓↓。
うん、なかなかおいしそうだ!みんな買うと良い。
しかし、実はキリンはこういうページも持ってるんだわ。
キリン 零ICHI(ゼロイチ)[ノンアルコール・ビールテイスト飲料]|ノンアルコール飲料|商品情報|キリン
※https://www.kirin.co.jp/products/list/item/nonalcohol/zeroichi.htmlより
さて、この「零ICHI(ゼロイチ)」について糖質量を調べるにはどちらが速いか。
後者のページのほうが速いのは明らかよね。(ちなみに前者のページにも最下部に記載あります)
これは、そのページが「相手がどういうタイミングで見に来るのか」によって評価が変わる話で、どちらが悪いわけでもない。
CMで「零ICHI(ゼロイチ)」を知って「へえ、どういう商品なんだろう?」って思ってる人に後者の無機質な表組み中心のページを見せちゃいけない。ひとつもワクワクしないから。
一方で、すでに「零ICHI(ゼロイチ)」への興味が高い状態の人が「でも実際、健康に害はないんだろうか?」と調べに来た時に前者の特設ページのようなものを見せても、その多くが邪魔になるだけ。
つまり、利用シーンが違う。
「わかりやすい」とは主観に過ぎない
ついついデザイナー版のチラシを見て「わかりやすい!」と言いがちなんだけど、それはその人がこのキャンプ場をよく知らない、リニューアルをしたことを知らないから
言い換えれば潜在的なところで「ワクワクしたい」と思っているからなんよ。
だから、ドーン!と大きくインパクトを出して表現されてることに「わかりやすい」と感じる。
そしてこれは、「零ICHI(ゼロイチ)」の特設ページ(前者)にも言えることだけど、情報の読む順序をデザイン側が提示しているわけですよ。人間は取捨選択することにストレスを感じるし、とくによくわからない状態で接するときは「ごちゃごちゃ能書きは良いからさっさと魅力を教えてよ!」となる。そういうときにゴチャゴチャいう人は嫌われる(笑)
でも、それがデザインのすべてじゃない。
能動的に情報を調べたいフェーズというのは必ずあって、そのフェーズの人にはその人にあったデザインというのがある。どっちが優れているという話ではないんよ。
素人版は「すぐれた原稿」ではない
いや、あれをデザイナーに渡す原稿だとしたらたしかになかなか良い原稿だと思う。けれどもそれは「原稿として使っても優れている」というだけで「優れた原稿」というわけじゃない。
というのも、とくに「情報が多い(過不足がない)」というコメントをたくさん見たけど、たぶんそんなことはない。もっと多くしようと思えばできるし、なによりこれを原稿や依頼書と捉えると、発注側の背景や意図がない。(デザインにおいてそれはとても重要。詳しくは前の記事にて)※まあ原稿に背景や意図が入るのは変だけど、発注するにおいて、という意味で
これ(素人版)はあくまでチラシであって、キャンプ場に来たい人に向けたものと考えれば割と普通な情報量だとおもんます。
では、何が優れているかというと、文書構造をちゃんと守っていることなのよ。
Web制作(HTMLコーディング)している人ならわかると思うけど、文書構造というのは文書を読むときに非常に重要。大見出し、小見出し、リード文、本文、箇条書きなど、文書の親子関係がちゃんとわかるようになっていないといけない。
とはいっても、文書というのは以下を守るだけでも格段にわかりやすくなる。
- 見出しをきちんと装飾する
- 正しくインデントをつける
- 統一したマージンを設ける
で、それが素人版チラシはだいぶしっかりしているんよ。
- 項目名や見出しは太字に
- 「期日」や「場所」などの項目リスト形式のものはインデントをそろえる*1
- 「施設の概要」など文章が入るものは、本文に左インデントつけて見出しとずらす(見出しを出っ張らせる)
- 項目や見出しごとのブロックを意識し、統一したマージンを設ける
これらがちゃんとしているので、情報が読み取りやすい。
なぜなら、文書構造がきちんとしているので「どこに」「何があるか」がぱっとわかるから。
もっと正確に言うと「どこが見出しで、どこが本文かすぐにわかる」から。
これはこれでじゅうぶんに優れたデザインのチラシでしょう。(もっと美麗に作ることはできると思うけど)
だから、これも立派なデザインなんよ。
デザインってさ
デザインは、見栄え良くすることでも、ぱっと見で魅力がわかるようにするだけのものではないんよ。
ユーザーがいて、利用シーンがあって、「その時その人にどう思ってほしいのか」という目的があって初めてデザインができる。逆に言えばそれが叶えられるならなんだっていいし、叶えられないなら良くないデザイン*2。
「デザイナー版の方こそ良いデザイン!」みたいな反応がすごく多かったので、書いてみました。
素人版も、ほんとよくできてるよね。