笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

AIさくらさんにおける「文脈なんか知ったこっちゃねぇ」的な話。

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こんばんちは、スーパー太っちょWebディレクターです。 スーパーは太っちょにかかります。

togetter.com

 

「よう燃えるなぁ兄ちゃん」「そうやなぁ節子」(そんなセリフはありません)

 

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あらさくらちゃんこんにちは ※https://tifana.ai/ より引用

僕はなんとも思わなかったんだけど、これに嫌悪感を抱く人もいて、まあそれはそれ。もはや感覚の話になってくるので(まあ嫌悪”感”だし)、それを否定するつもりはありません。なんというか、そうなんですねぇとしか思わない。

けれども、もうちょっと文脈や経緯を見てもいいんじゃない?とは思った。そんな話。

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。



 

AIさくらさんの素性(謎)

今回の件で一番思ったことなんだけど、意外にAIさくらの知名度って低いんだなぁと。
AIさくらはティファナ・ドットコムっちゅう会社が開発したAIシステムで、AIチャットボットの導入検討したら絶対に通る道というか参上するやつなんですよ。
いつも今なんのEXPOやってるかよくわからないナンタラEXPOのAIコーナー的なのに行くと必ずいます。あの娘必ずいる。そしてクネクネしている。
「AIチャットボット導入検討しました」って言ってAIさくら知らなかったら、その人は嘘つきかよほどのおバカさんかのどっちかというぐらいには、有名だと僕は思っている。

 

男性駅員AIの素性(謎)

なんでこんなダサいというか、セガサターンみたいな人だしてきたんだろと思ったら、JR東日本情報システム、つまり自社開発らしい。なるほど、それならわかる。だってもうなんというか社名の時点で押忍!感に溢れている。絵心なんぞ創立時点で捨ててきましたと言わんばかりの社名(超失礼)。

基本的にエンジニアの会社だと思うんで、そりゃこうなる。「えっ、なんで案内するのにちょっとした仕草とかいれるんですか?無駄でしょ」とか素で言っちゃうんよあいつらは。かっこいい。もう逆にかっこいい。エンジニアさんはそれでいい。

 

何をしようとしているのか

おそらくA/Bテスト的なことをしたいんでしょう。(いや知らんけども)
これまで導入実績のある既製品と、満を持してリリースされた自社開発製品と、どちらが効果が高いのか。だからこの時点で「藤原さん(AIさくらの男性ver)使えばいいじゃん」っていうのはだいぶ的外れで、だったら他の駅と同じようにAIさくらのみでいいんですよ。既製品のテストしたって意味ないし(厳密にはないことはないけど)。

 

自社開発の意義

「自社開発の方もアニメ絵にすればいいじゃん」っていうのもダメで、それじゃ意味がない。だって自社開発だから。ね。あのね、JR東日本情報システムですよ。押忍!ですよ。絵なんかかけるわけねぇだろ!なんですよ(超失礼)。僕も受託から事業会社側に来た人間なのでよくわかるんだけど、自社開発をなんでするかって、それは運用保守費や機能追加、改善コストを下げ、さらにそのスピードを速めるため。

外部に発注するとその後の改善まで結構なお金が取られる上にコミュニケーションコストも高くなり、さらに受発注のやりとりもあったりでめちゃくちゃ遅くなる。さらにこれがパッケージ化されたシステムだと、根幹となる部分はすべて共通のものを使うことになるので、ベンダー側にしか意思決定権がない。つまり、自社が思うように改善すらしてくれない。やってくれるとしたらめっちゃくちゃお金積んで「この企業の言うとおりの仕様にしたら儲かる」とベンダー側が思うほどに、発注企業が力を持たなきゃいけない。

これは根幹となるシステムだけじゃなくてイラストだって同じなんよ。新たなコミュニケーションを追加するのに、その都度外部のイラストレーターに発注して、修正回数制限されてたりしてたら意味がない。これは自社キャラクターであるsuicaペンギンでも同じ。

だから、「JR東日本情報システムが出せる範囲のクオリティ」でないとダメなんよ。

 

コミュニケーションに必ず存在する二つのレイヤー

それは「思い」と「表現」。
伝えたい内容そのものである「思い」と、
伝えるために生み出された「表現」。

このそれぞれに適切/不適切が存在する。

そもそも発してはならない内容と、発してもいいんだけど表現が間違っている時と。

基本的に僕は「思い」がちゃんと伝わるなら「表現」はなんだって良いと思っている。
たとえば夫婦間で「おい」「おまえ」が日常の愛情表現になるなら、それだって良い。相手にそれが伝わってるんだから。
「バカ」が侮辱になることもあれば異性に対する照れであるときもあって、いずれにせよそれが相手に伝わっているなら何も問題はない。

逆に言えば、コミュニケーションとは「相手は何を言おうとしているのか」「結果としてどんな表現だったのか」を突き詰めていく作業だと思っていて。

「なんでそんなこと言うんだろう?」と思って相手に問い詰めてみたら「ああごめんごめん、そう言う意味じゃなくてこういう意図だったんだ」となったとき。そのとき焦点となるのは「表現としてそれがどの程度、不適切だったか」になる。これに怒る時というのは「著しく不適切な表現だった時」になるし、なおいえば、誰だって過ちは犯すのだからできる限り「ああ、そうだったんだね」で流せるのが成熟した大人だと思っている(誤解のないように付け加えておくと、「成熟してなければいけない」わけでもない。そんなものは個人の自由)。

同性に「おまえのことが好きだぜ」と言われて「ちょ///おま///オレにそういう趣味はっ・・・」となったら「バカ、ちげーよ。友達としてだよ」と言われたりして。「なんだよもう///」で終わる話なんだけど、多くのことがそうやって流せたらいいよね、と。自分がね。他の人は関係なく。

 

今回はどうだったのか

「男女を並べて女性だけ変な仕草いれて女性差別だ!」と怒ってる人が多数な訳だけど、少なくとも経緯を見る限りJR側にその意図はまったく感じられない。ただ単に、最も実績のある既製品と自社開発製品を並べてテストをしてるだけ。(あくまで外側からみた僕の仮説に過ぎないけど)

「両方とも同性にすればいいじゃないか」的な反論もありそうだけど、たぶん今度はそれはそれで「駅員に女性(男性)は不要ということですかそうですかそうですか」とか反論がでるんでしょうし。

「(経緯からするに)そういうメッセージではない」と言ってるのに、それを無視して「これはそういうメッセージだろ!」というのは、不思議な話だなぁと思う。いったい何のための表現なのか、という。

ちなみに、誤解のないようにしっかりとここは書いておくけど、「男女を並べた時点で意味が生まれるだろ!」って言う人を否定はしないです。というかそれは「与えられた事象からどんな意味を読み取るか」という、もはや感覚の話なので否定のしようもない。そう受け取ったんですね、としか。そのへんは育ってきた環境とか受けてきた圧力などにもよるだろうし、はぁ、そうですか、としか。

ただ、「文脈や背景なんか関係ねぇ!そんなもん知るか!」というのは、僕はあまり美しい人間性だとは思わないというか、できる限りそうでない人間になりたいですねって話。本当にただそれだけ。そうじゃない人が間違いだとか、おかしいとか言いたいわけではないです。ただ単に自分の自分に対する美学の話。他人に押し付ける話じゃない。

くどいようだけど、成熟してなければいけないわけではないし、「ああいうアニメ絵の女性がああいう仕草をするから女性への不当な要求がなくならないんだ!」というのもそれはそれで一理あると思っている(まあ、だったらそれJRじゃなくてティファナに言った方が良いと思うけど)。だから別にそれを非難したいわけではない。

わけではないが、今回のケースであれば、もう少し文脈とか背景を見てあげてもええんでないの?と個人的には思うと言う話。要は程度問題なんだけどもね。

少なくとも、僕はやっぱりコミュニケーションを考える上で、相手が何を言おうとしているのかをしっかり考えられる人でありたいなと思います。できる限り、どんなに自分が辛い時でも、そうできたらかっこいいなと。

はい、そんだけです。

 

おまけ

ちなみに、もしかしたら今回、自社開発バージョンが勝つかもしれず、そうなると「ほら!変に萌えキャラなんかせずに実直な対応の方が良いんだよ!」というむしろ怒ってる人たちには好ましい結果になるやもしれないんだが、いま否定するとそういう可能性も無くなっちゃうんですよねー。