笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

「CSS Nite in Ginza, Vol.53」に行ってきました。

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CSS Nite in Ginza, Vol.53

「クライアントと共に考え・つくる」 ディスカッション・コミットメント式要件定義のすすめ

http://cssnite.jp/ginza/vol53/

昨日、行ってきました。

面白かったなぁ・・・・・。

技術的なものはあんまり行かないんですが、こういうディレクション寄りなものは大好きでございます。

もっとやってください(コラ)

 

今回のセッションは、なんとあのワンパク坊主じゃなかった1PACの阿部さん!

おー!これは行かねば!と、告知後すぐに参加表明しました。

 

セッション始まってすぐに阿部さんの自己紹介や1PACさんの事例紹介。

「意外にあんまり知られてないんで・・・」by阿部さん

ええええええええええええええええええええええええええ。

有名人だと思いますけど。容貌からして

セミナーとか対談とか雑誌のインタビューとかよく拝見しております。

「うおー、良いこと言うなぁ」と尊敬しております。



事例紹介のあとに具体的な手法のお話になるのですが、1~10まで書くのはアレなので(何)それはcssniteから正式なフォローアップがあるはずなのでそちらを後日ご覧ください(そもそも僕が語った時点でバイアスがかかるし)。お話を聞いて思ったのは「思ったよりロジカルな人なんだなぁ」と思いました。というのも、実際の制作物を見ると面白い仕掛けやUIのものが多い気がして、どちらかというと感覚的な方なのかと思ってました。でも、その割にはインタビューのコメントがアーティスト的というよりはビジネスを基本としたクリエイティブというか、本質を突くコメントがほとんどだなぁ、なんでだろ?と思ってたのです。で、その理由が昨日わかりました。感覚をうまくロジカルに落としこんで融合させることに物凄く長けた方なんだと思いました。凄いなぁ。

 

・・・阿部さん評はこの辺にしてw

具体論の感想をば。

 

■ディスカッション・コミットメント式要件定義のすすめ

「「クライアントと共に考え・つくる」 ディスカッション・コミットメント式要件定義のすすめ」がタイトルでしたが、お話の内容を聞く限り、これが一つの答えになってるんだなと思いました。要するに・・・

 

ディスカッション・コミットメント式要件定義のすすめ

 →その答えは「クライアントと共に考え・つくる」こと

 

 

でしょうか。

話の流れとしては・・・

 ・「提案」をするのではなく「一緒に考える」というスタンスが大事

 ・「一緒に考えるスタンスなんだ」と相手に理解してもらうことが大事

 ・「一緒に考える」をするためにはそれ相応のツールが必要

 ・具体的には、紙で、ペンで、ポストイットで相手と一緒に手を動かす

 ・目で見える、感覚的に捉えられる資料やツールも必要(写真のマッピングとかカテゴライズとか)

 ・綺麗な資料を創ることが目的じゃない。

 ・データ化されてなくても、一緒に考え、相手と共に出した答えならそれが正解

 ・それこそ、「合意」である

ということでしょうか。

結局、皆コワイのは手戻りですよね。確かにw

僕が特に「おお!」と思ったのは「ディスカッションの時にクライアントと対面で座らない」でした。

「対面すると対峙する、張り合うイメージがついてしまう」(toksato的解釈です)からだそうです。なるほどなーと思いました。互い違いに交互に座ったほうがいい。確かにそうだ!言われてみるとそのとおりだ!ただ、これはこれで難しいよなぁと思いました(それはまた後述します)。

 

 

■手を動かすこと

周りをちょろっと見ているとペーパープロトやポストイットを使ったディスカッション、「綺麗な資料を創ることが目的ではない」に反応している方が多かったように思うのですが、この話は当たり前のことじゃないかなぁと思います。今回のセッションではあくまでも対クライアントの合意形成のためのお話でしたが、ペーパープロトを使う、ポストイットや紙、ペンでまずは骨子を考えるというのはモノづくりにおいて基本中の基本だと思っています(僕は情報デザインもちょっとかじってるからそう思うんでしょうけど)。

 

というか、いきなりPCに向かうなんて愚の骨頂ですよ。

PCに向かっていきなりデザイン、画面構成を考えるなんてアンタどんだけ天才?!

・・・・と言いたくなっちゃいます(笑)

 

人間の脳を活性化してアイディアを出すためには、まず間違いなくディテールは後回しにすべきだと思っています。ともかく数を打ち出し、そしてたくさんの脳みそで、しかも手を動かす、立つ、など身体性を伴って行うべきです。出てくる結果が絶対違います。間違いなく。人間が部屋に閉じこもって自分の脳だけで考えられることなんてたかが知れてますよね。いかに自分の脳味噌をハイテンションに持って行って色々なものが出てくる状態にするかが大事だと思います。

 

まずは手でかけ!

まずは足で見てこい!

ノはい!(謎)

 

 

■ペルソナの話

最後の質問で「Web制作者やクライアントだけじゃペルソナが主観的になってしまうのでは?」とありました。

「ニーズを導き出すことが目的なので、ペルソナの精度をあげることが目的ではないから問題ない」by阿部さん

 

全くその通りだと思いますが、「ペルソナの精度をあげることが目的ではない」というよりは、「オーバースペックだから必要ない」という方が僕は適切かなと思っています。精度が高いに越したことはないですからね。ペルソナを創るには本来購買履歴や顧客情報、ユーザークレームリストなどの定量的なデータに加え、グループインタビューやデプスインタビュー、参与観察などの定性的な情報が必要で、それをもとに複数人で創り上げていくのが王道だと思っています。

 

が、そら高いw

Webサイト単体でそれを創るのはオーバースペックだなーと思います。

たとえばWebサイトでのサービスそのものがその企業のビジネスの大部分を占めるならありかなぁとは思いますが、リアルでのビジネスがあり、リアルでのサービスやプロダクトがメインとなるような企業でWebサイトのためのみにペルソナを(ガッツリ)創るのはナンセンスと思います。簡易でじゅうぶん。というより、Webサイト単体じゃなく経営戦略のためのビジネス全体をスコープとしたペルソナを創るべきだと思います。その人が、Webサイトとどう関わっていくのかをスケッチすることからスタートするのが理想。

 

ペルソナの効力・機能は大きく分けて二つあると思っていて、「ニーズ探索」と「同じ方向を向くこと」。すでにできあがっているサービス、プロダクトを新たな展開に持っていく、コラボする、改善するときには前者が凄く重要だと思いますし、プロジェクトマネジメントにおいては後者がすごく重要だと思います。こと、Webサイト構築においては後者の方が重要かなぁと思います。前者も重要ですが、そこにデータの質・量的なクオリティを求めだすと、予算が・・・となるので。

 

 

■意思決定者を同席させること

講演直後の質疑応答にてMCの鷹野さんから出た「そもそも同席させることが難しいんだよっていうツイートがされてます」というあのツイートは、たぶん僕ですよねw(他にもいたのかな?)

阿部さんの回答は「キックオフの時点で説明しておくこと」「そのやり方がそもそもダメなら、そういう所とは仕事しない」でした。

 

仰る通り(泣)

というか、少なくとも僕はそれを踏まえた上でのツイートでした。

正直、今のところ道はそれしかないんだろうなと思います。

 

「キックオフの時点でちゃんと説明しておく」というのは当然のことですし、プロジェクトの途中になって「○○さんに同席してもらわないと・・・」なんてのはプロマネ失格だと思います。だって、わかってるんだから。節目節目、フェーズの切り替わりのタイミングには必ず同席してもらう。それを事前にきちんと伝えてて対応してもらうのが一番いい(全部同席してくれてもいいんですけどねw)。ただ、これは相手によっては無理だと思います。Web屋を下請けとしか思ってない、Webサイトを自分の好きにしていいとしか思ってないオーナーや意思決定者の場合「何様だ!」と言って会ってくれません。一回ぐらいなら会ってくれるかもしれませんがw、それも打ち合わせというよりは「僕の考えを指導してあげるよ」みたいなオーナーさんだと思います。

 

問題なのは、実はその数がハンパなく多いこと。

僕も元々は大手制作会社だとか大手印刷会社にいた人間なので、「まさか、そんなに、ねぇ?」と思っていたのですが、世の中には僕が想像するより遥かに「朝令暮改大好きオーナー」がいます。そして、世の中に星の数ほどあるWeb制作のお仕事において、実はそういう方がクライアントになることの方が割合としては大きいと思います・・・。

 

大手制作会社さんや大企業とやり取りできる制作会社さん(1PACさんもそこに含まれると思っています)は、やり方を突き詰めればじゅうぶんやっていけるんだと思います。ある程度ロジカルに持っていけば、相手もそれに対応してくれる理解度がある。けれども、実際のところ大半はそうではない。右に左に振り回して当たり前だと思っているクライアントや、デザインなんか何度叩いてもOKだと思っているクライアントなんてザラにいます。っていうかそういう人の方が多い・・・。結局、まともに商売をする、商売ができるサイトを創ろうと思ったら、そういう所は相手にしないでもやっていけるバリューが必要になるんだと思います(というか、間違いない)。

 

某河野さんの「意外にちゃんと”商売”を考えているECサイトオーナーは少ない」というお言葉がありましたが、まさしくそれで、「だったら、商売をちゃんと考えている人と仕事をすればいい」となるのは自然な流れですね。で、それで成果をだし、手法を確立し、バリューを得てまた仕事が来るという良い循環に入れれば最高。それに成功しているのが、今WebコンサルやWeb制作の大手としてのさばってご活躍なされている会社ですよね。そして、価格が高いw(それだけのことやってるんだから当然ですけど。twitterでクイズやってた某超スーパーエクセレントWebコンサル制作会社(何処)とか)

 

自然です。

自然な流れです。

「立派にお金もらって食いたきゃ、それ相応の価値を出せ」という、物凄い王道な話です。

 

でも、実は、僕はそれに反抗するために今の会社に入りました。

 

正直、今だっていくつかスカウトのお話はいただきますし、教員をやめて現場に戻ると決めたとき、Webの大手も視野には入ってました。受けてみようかなとも思っていた時もあります。でも、やめました。自分がいたクラスの制作会社ならなんとか入れてもらえるかなーとは思ったのですが、教え子をWeb業界に送り込む仕事をしていて、少し反抗してみました。まーなんとなんと、大手制作会社に入れるような子もいれば、神奈川のどっかで劣悪な労働環境で馬車馬のように働かされるような子もいるわけで。僕がどんなにWebの魅力を語ったところで、働く先がそれでは、これは無理だと思ったんです。(昨日阿部さんも似たようなこと仰ってましたね)

 

よし、じゃあ僕がそこにつっこんで現場を見てみようと思いました。

 

僕は、末端の制作会社でももう少し労働環境が良くならないか、そのためには何をしたらいいのだろうかということを試すために、今の会社に入りました(だから、Webの部署もほとんど潰れた状態の弊社に来たんですね)。で、大手にいた時のような手法や情報デザインの手法をいくつも投下してみてできないものかと四苦八苦するのですが、やってみるともう大変。もはやそんなフェーズではなかったです。ワークフローやIAなどの知識、手を動かすなどの情報デザイン的な知識など持ち出す以前の段階で、正直使いものにならないw きちんとユーザを見てサイトを創りましょうなんて口先だけで言うのが精一杯で、実践する土台も理解度もありません。そんな相手に緻密なプロジェクトマネジメントなど通じるはずもなく。なんとかかんとか持っているフローを縮小縮小、ショートカットショートカット・・・して、出来る限り良いサイトになるようなカスタマイズをして、サイズを適正なものに落とし込んだあと、それをいかに相手がわかるように、ストレスがないように共有していくのかに心血を注ぎました(注がざるを得なかった、が正解ですけども・・・)。

 

で、それを整理したものがあの「中小企業や個人経営規模相手のWebディレクションで気をつけている15のこと。」です。あれはそうやってできたものです。公開して、ブクマがたくさんついたりたくさん取り上げられたりして、確信しました。「ああ、やっぱり、多くの人は同じことで悩んでるんだ」と。前にtwitterでこんなことをつぶやきました。

 

「大手さんが出すワークフロー本は素晴らしいんだけど、あれはあくまで大手向けで実践はできないんですよね。かといって他の大手は多かれ少なかれ自分達のワークフローは全て確立しているから今さら読む必要もない。だからあの手の本て実はユーザ不在というか、あれを読むような人には実は役に立たないんですよね」

 

僕が「~15のこと」を書こうと思った根源的な動機です。

なんとか、末端制作会社にもプロマネの意識や手法を落としこんで、労働環境を改善できないかという僕の取り組みは、今のところ成功もしていれば失敗している部分もあります。社内の業務もいっぺんに引き受けているのでなかなかうまく運べないのもありますがw、やはり売り上げ的には厳しいです・・・。もっともっとうまくやって、そしてバリューを出さないと・・・です。

 

どうしたらいいのか、全然答えは出ません。

もう時代が追いつかない限りは無理なのかなぁとも思います。

そのうちどっか大手制作会社にいるかもしれませんw

でも、もう少しもがいてみようと思っています。

もがいてみて、わかったことたくさんあるから。

 

末端制作会社の皆様。

一緒にがんばりましょう!

(いや、別に大手さんでもいいんですけどねw)