同業(というより同職種)の人が、パートナー制作会社(=外注)の扱いに困っているというか、怒っていて。で、話を聞いてみたら「あがってきたもののクオリティが低い」「もう修正対応できないとか言いやがる」なんて言ってたのを聞いて、同じディレクションを生業とする人間にこんな人がいるのかと驚いた次第。まあ、大手広告代理店さんの末端の人とか、クリエイティブを勘違いしているのか、こういう人多いですけどね。
だってさぁ、初めに「センスに任せる」とか言ってるんだもん。
だったら、任せきるしかないじゃん。
あがったもんに文句なんか付けられないじゃん。
いや、正確には”文句”はつけられますよ。
「このクオリティじゃねぇ・・・」って。
それで、気に入らなければ今後はそのパートナー企業に依頼しなければいい。
でも、それにより生まれるリスク、損害はイーブンで受け取るものでしょ?
だって、それが”任せる”ってことでしょ?
挙がってくるものに要望があるなら伝えないと、希望のものなんかそうそうあがってくるわけがない。というか、あがってくることはあってもそれは”ラッキー”であって、”絶対”ではない。絶対にしたいなら、その旨伝えればいい。イメージ一つ取ったって、「シャープでシックに」と「おおらかでさわやかに」では全く違う。カラーの指定だってできるし、直接色を指定しなくても暖色寒色などのイメージを限定することはできる。それを指定せずに「任せる」と言った以上、後は「気に入る」か「気に入らない」かのどちらかしかなく、「全然ダメだから修正しろ」ってのは通らない。通らないというか、だったらその分の費用と時間も与えなきゃ、相手が赤字になるだけ。
・自分の希望通りのデザインにしたい?
じゃあ、自分の希望をちゃんと伝えないとね
・よくわからないから出来上がったものを何度も観たい?
じゃあ、その分の作業にかかる時間と費用を渡さないとね
あったりまえのことです。
こういうことをきちんと守れてこそビジネスでしょ?
それが何を勘違いしたのか「クライアントが納得するまでやるのが当たり前」になってる。自分が対クライアントに対してそうだから、逆の立場になったとき(自分から仕事を依頼する時)にもそうなっちゃう。え?それってパートナーじゃなくて奴隷ですよね?
要するに、オーダーメイドの料理と一緒ですよ。
きちんと要望を明確に伝えていない以上、「任せる」と言った以上、自分の期待するものと違うものが挙がってくる可能性があるのは仕方ないじゃん。それともなんですか?料理人は魔法使いだとでも思ってるんですか?料理人は豊富なレパートリーと培った経験により、あなたのニーズを把握することに長け、それを表現する技術に長けていることは事実です。そうじゃなきゃ料理人じゃないし、そこが勝負どころ。しかし、それはあくまで選定基準であって、損害賠償を求める時に出てくるものではない。だって、「任せた」のだから、自分の嫌いなものが出てくる事だってある。だって、そんなもん聞かなきゃわかんないもん(笑)
「えー、アンタセンス無さ過ぎ。もう一回○○な感じで作り直してね」
うん、じゃあその分の時間と材料費と労働賃金くださいね。
当たり前でしょ?
当然、請け負う側は「お任せと仰った以上、お客様のイメージするものとかけ離れたものが出来上がる可能性もございます。その際、そこからまた大幅に変更するには別途費用とスケジュールをいただきます」と伝えておく義務がありますけどね。
■無限の足し戻しは当たり前じゃない
「クライアントが納得するまで」って、えーとそれはいつですか?
どんな状態ですか?それって最終的にどんなものですか?
っていうか、クライアントが途中で気が変わったらどうするんですか?
それにも対応すべきなんですか?
クライアントが目的や意義をきちんと明確にしていないのに、「納得させる」なんて無理です。納得も何も、自分が何をしたいのか、何を実現したいのか明確になってないんだから。そこからデザインをするなら何度も叩かないとだめだし、それこそ、その分のスケジュールと費用をとってきちんと見積もりとして提示するべきです。
でも、それ以前の問題なんですよね。
クライアントが何をしたいのか明確でないなら、そこを明確にすることからサポートするのがクリエイターなんじゃないの?何をしたいのか、何を実現したいのかも不明確なままビジュアルデザインとか開発をスタートするから、おかしなことになるんですよ。一番肝心なことをすっ飛ばして手を動かしちゃってるんだから、そりゃ何度も出し戻しが発生して当たり前。で、クリエイティブ、デザインの業界はそれが当たり前だと思っている人が多い。
えっと、じゃあ、デザインってすっごい高くなるよね。
何人もの人が絡んで、何度も完成系を出して、すげー時間かかって。
でも、それ相応の金は出さない。
え?だったら、自分で一発OKぐらいで納得するしかないんじゃないの?
え?クリエイティブなんだから何度も叩いて当たり前?
うーん。
じゃ、その人たちには「それでメシを食おうなんて思うな」ってことですよねー。
それは、ビジネスパートナーとは言えないでしょう。単なる下僕ですよ。
というか、それはもうビジネスじゃない。趣味でしょ。
発想ありきで、発想が違ったらやり直し。クライアントの意思が変わってもオッケーなんだから。
そもそも、「修正」なのか「変更」なのかという話なんですけどね。
クリエイターはクライアントの下僕じゃない。
だから、クライアントの思いつきに振り回されるわけにもいかないし、それに付き合うということは自ら下僕になりますと言っているようなもの。できないことはできないと伝えるべきだし、理不尽なことには抵抗すべきだし、そうならないようにコントロールすべきだし。だって、仕事なんだから。ビジネスなんだから。
■スケジューリングもしないなんて、それなんてディレクター?w
「もうこれ以上の変更には対応できない」といわれてしまったことに対して憤慨していた彼ですが、そもそも、スケジュールちゃんときってないの?っていう話で。聞いたら、納期しか決めていなくて、あとはその都度柔軟に・・・みたいなことしか決めていないらしい。だったら、それしょうがないじゃん(笑)そもそも納期より前にあげてきたパートナー企業をほめるべきでしょそれw。修正があり、出し戻しをしたいなら、そのようにスケジュールを切れば良いじゃん。一回目をいつあげてきて、修正をいつまでに出して、その修正をまたいつまでにUPしてもらって・・・で、それを何セット繰り返すのか。この程度のスケジュールすら共有していないのに、相手が対応してくれないって何様w。っていうかそもそもそれ、相手のスケジュールを抑えて無いじゃん。
相手をコントロールしたいなら、事前にその約束をすること。
それ、スケジュールでしょ?
それをしていないのに何言っちゃってんの?
っていうか、それがあなたの仕事じゃないの?
約束もしてないのに、都度修正や変更に対応しろって、それつまりいつでもどこでもその案件に張り付いてろってことですか?っていうことですよ。だったらそのお金くださいねw。いやいや、当たり前のことですよ。全ては契約なんですから。ホステスのオネーチャンだって時間になったらきっちりいなくなるのに、何で制作会社はいつでも言いなりになって赤字出してまで対応しなきゃいけないんですか?っていう当たり前のことがわからないのは、ディレクターとして致命的過ぎる(発注者という意味ではいっぱいいますけどね)。
・デザインにはお金がかかります
・ちゃんと要望を伝えないと、イメージと違うものができる可能性があります
・修正や変更には時間がかかります
・変更にはお金もかかります
・いつでもどこでも突然に対応できるわけではありません
当たり前のことを、当たり前に。
それが、ディレクションの基本だと思っています。