笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

公的機関のブランディング。

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広告が出ないように記事を書いていますw

いや、出る度か・・・・。

学生のインターンシップの一環で、自治体や公的機関とプロジェクトを進めることが多いです。

これぞまさしく職業柄、という感じですね。

市役所の人だったり、市や県の管轄で運営している市場や施設の人と話をする機会が多いのですが(それは現場にいたときから、ですね)、必ずと言ってよいほど出てくる言葉があります。

「市政をPRしたいんです」

「市政」の部分は組織によって違いますけどね。

市場だったり、スポーツ施設だったり、市役所そのものだったり、特定のエリアだったり。

きっと、日夜一生懸命、市民のために働いていただいたり、日々の生活を支えるためにサービスをしていたりするんだと思います。そして、そうするとあれもこれもといろんな話が出てきたりします。「あんなこともやってるんです」「こんなこともやってるんです」って。

その時点で、ユーザ目線ではないよなーと思います。

だって、市民は市政なんてしりたがってないもの。

市政を知りたい人には、きちんとした「政治」を伝えるためのコンテンツを用意すれば良いわけで、市や県が市民のために行っている施策全てを「市の施策=市政」として捉えて伝えようと言うのが、おかしいんだと思う。

「私たちの活動を見て!評価して!」っていうことになってしまうわけですが、それはユーザ目線になってない。ユーザが知りたいのは、自分の体験についてであって、市政がどう、市役所がやっていることではないんですよね。

「市役所はこんなにがんばっている!」

じゃなくて

「こんなサービスがありますよ」

じゃないと駄目だと思うってことです。

Webはそれを伝えるためにあるツールであって、自分たちの取り組みをアピールする場所じゃない。ユーザ、いや市民が調べたいこと、体験したいことを得るための窓口となることが目的でなければならないわけで、そこに自分たちのPRを載せようと言うのが、まずもって「発信者中心設計」なんですよね。

要するに、Webサイトどうのこうのではなく、Webサイトを中心としたサービスをどうやって市民に届けるのか、ということを考えなければいけないわけで、Webサイトを右に左にいじくったり、表面だけ変えたって何の成果も出やしない。だって、使う人がいないのだから。

たとえば、市や県が運営している体育館、スポーツ施設などがありますが、それを「市役所はスポーツ施設もやっているんです!」ということを訴えてはいけないんですね。それは、利用者が知りたいことではないから。利用者が知りたいのは「安くて」「安心して使える施設」なんですよ。市役所が提供しているのは、その「サービス」であって市役所という「名前」じゃない。ユーザに、市民にPRしたいなら、きちんとしたブランディングを考えるべきなんです。そしてそのブランディングとは、名前をアピールしてユーザに覚えてもらうことではないはずなんです。サービスをアピールして、連続した満足体験を提供することで、名前を覚えてもらうんです。それがブランディング

だから「卸売市場のブランディングを」なんて言われるわけですが、それを考えるならまずやるべきは名前の認知ではなく「誰に」「どんなサービスを」提供できるかを設計することから始めなければいけないんです。

極端な話、売れないものは売れないんです。

それは、Webで売ろうがリアルで売ろうが全く同じこと。

Webサイトは、リアル店舗と同じように「ユーザにリーチできるチャネル」でしかなく、リーチしたところでコンテンツそのものが劣悪なら売れるわけが無い。結局、ユーザに満足体験を与えられるコンテンツを生み出し、Webでそれをどう表現するかということが大事なわけで、Webの技術やビジュアルデザインの話ではないんですね。

「もっと幅広い方々にPRしたい」

なんておっしゃる人もいるんですが、その施設が、その地域が、市民に対して満足体験を与えられているんですか?というところから話をしないといけない。幅広いユーザにPRするためには、幅広いユーザが満足するようなサービス、機能がないと無理です。もし、名前だけを認知させたいと言うなら、WebじゃなくてCMでも一本うったほうが早いですし。Webは、広告には向きませんから。「ファンをつくる」ことに長けているWebで、「たくさんの人に認知させる」のは至難の業です。

学生も、ついついクライアントの言うことを聞いてしまう。それに縛られてしまう。

「市場主催のイベントだから、市場っていうことをタイトルに入れないと駄目ですよね」なんていいだすんですが、それはユーザには関係ない。ユーザが求めているのは「楽しいイベント」であって、それの主催がどこだというのはその次のステップになる。まず、イベントとしてどうなんだという話、コンテンツの話をきちんと伝えないと、問題解決にならない。

「何か面白そうなイベントないかしら」

  ↓

「あら、この料理教室って近場だし安いじゃない」

  ↓

「へぇ、市場がこんなことやってるのね」

というのが、あるべきユーザ体験シナリオになると思います。

「誰に」

「どんなサービスを提供できるのか」

「それをどうやって伝えるのか」

という視点からスタートすることが、ブランディングの第一歩なんじゃないかと思います。