笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

「信頼感や安心感のあるデザインにしました(キリッ」←デザイナーがよくいうやつ。

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「御社の信頼感や安心感を表現するため、こういうサイトデザインにしました」

 

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みたいなことをデザイナーもディレクターも言いがちなんですが、僕はこの表現が嫌いなんですよね。っていうかそれ何も言ってないのと同じじゃん?っていう。

デザインコンセプトを決めるときや、その説明のときに信頼感とか安心感とかいうワードは使わない方が良いとすら思う。使うにしても、もう一歩掘り下げるとか。

 

いや、まあ信頼感や安心感という言葉でどんなデザインを表現したいかってのは、だいたいはイメージつくので、依頼側とデザイナー側が共通言語として使えてるならべつにいいんですけどね。

今日はそんなお話。

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。



 

信頼感や安心感のあるWebサイトデザインってじゃあなによ

パッと思いつくのは、たとえば落ち着いた配色でキービジュアルに自社ビルの写真なんかを大きく置いたデザインとかですね。ビジネスっぽさを堅い感じで表現して、ちゃんとしてそう、大企業っぽそうな雰囲気を醸し出すわけです。まあ、信頼できそうですね。

じゃあ、対応する店舗スタッフの素敵な笑顔がうつった写真をキービジュアルにしたら、信頼できないの?安心感はないの?

そんなことないよね。

また、「青は信頼感を与える」「緑は人に安心感を持たせる」とかステレオタイプなことを言う人がいるけど、えーとでは赤い色のサイトは信頼感ないんでしょうか?っていう。

 

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http://www.jnj.co.jp/index.html より

 

んなわけあるかーい、っちゅう話で。

 

そもそも信頼感とはなんぞや

僕も部下や後輩が「デザインコンセプトは信頼や安心感です」とか言って資料持ってくると、よく聞いてました。信頼感ってそれはなんですか?どういう状態ですか?っていう。

「信頼」というのは、人間の心理状態であって、色や形ではないんですよ。「信頼している」というのは、つまり「不信感を持ってない」ってことなわけだけど、それは何をどうしたらそうなるかというと、これは割と単純で「期待していることにちゃんと応えてくれる」という状態になれば、人は信頼をする。

料金が安いサービスはなんとなく信頼感が薄そうだけど、本当はそうじゃない。料金が安くてもよいサービスはたくさんある、ということが言いたいのではなく、"安さ"というのもじゅうぶん一つの「信頼」になり得るということなんですよ。

人が安さに信頼感を感じにくいのは、安さそのものではなく「安いとひどいものを送りつけられるんじゃないか」というサービスの質を信じられないだけで、そこがクリアになれば信頼される。そもそも信頼してるからこそお金を払うんだから。

たとえば、安さの象徴という意味ではマクドナルドなんてのはファストフードのなかでも最もそのイメージが強いけど、マクドナルドは「100円払えばあのハンバーガーを、全国どこのお店でも食べられる」という信頼を勝ち得ている。

おいしい・・・かどうかは人によるけど、小さなお子さんがいる家族連れの方々はきっと安心してマクドナルドに行っているはず。そこにはれっきとした「信頼」や「安心」があるわけですよ。その信頼は、マクドナルドの価格や子供が喜ぶサービスと、それが全国どこの店舗でも受けられるというところに向けられているはず。

そういう意味ではたとえばコカコーラのWebサイトなども象徴的。

f:id:toksato:20171109130010p:plainhttp://www.cocacola.jp より

「信頼感や安心感のあるデザイン」と言ったときにこういうデザインは出てこない。しかし、ではこのにぎやかなコカコーラのデザインに対して信頼感や安心感が欠如しているか?というと、そんなことはないでしょ。

Webサイトデザインにおいて「信頼感が欠如している」ということがあるとすれば、それは著しく古いデザインだったり、一部が欠損していたり、異常に文字が見づらい配色にしていたりとか、単純に「質が低い」というときに信頼感が失われる。そう、だからつまりこれも「インターネット上のサービス」の質が低いから不信感を持たれるわけで、信頼とか安心とかいうのはコンセプトにはなりえない。質の高い低いの話であって、方向性の話ではないから。

 

「信頼感や安心感のあるデザインにしました(キリッ」とかいうデザイナーやディレクターは何も考えてないだけ

信頼とか安心というのは人間の心理状態であり、それは「期待することにちゃんと応えてくれるか」という観点から発生する。ということは、要するに商品やサービスというのはすべてにおいて信頼や安心がないと受け入れられず、デザイン表現において大事なのは「何を持って信頼や安心を勝ち取るか」なんですよ。

つまり、「信頼感を表現するデザインにしました」とかいうのは「御社のために良いデザインをつくりました」としか言ってないのと同じで、ほぼ何も言ってないのと同じなんですよ。

その証拠になるかわからないけど、日本カラーデザイン研究所が定義するイメージスケール には信頼感とか安心感という言語はない。

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※ともに日本カラーデザイン研究所のWebサイトより

ない・・・ないよな?!よく探したらあったりして(笑)

要するに、信頼感や安心感というのは(↑の言語イメージスケールに照らし合わせるなら)どういうキーワードで表現するか、というのがデザインなわけですよ。

これは実際にあった話なんだけど、僕が担当したとある不動産系のブランドサイトのリニューアル案件で、以前のサイトリニューアル時に提案されたコンセプトが「信頼や安心」で、それを安直に「家族の笑顔の写真で人のぬくもりや温かみで表現する」という風にやったもんだから、たしかにそれで安心感はでるんだけどうまくいかない。

人の顔や写真があると安心感が出るという非常にステレオタイプなデザインをしているからそうなるんだけど、僕がその案件を担当してみたらまるで違う。

そして僕はこう提案しました。

 

「御社の商品が持つ信頼や安心というのは、人がいる、人のぬくもりがある、ということではありません。アンケートから見える、ユーザーや消費者の期待は、御社の実直で、高品質で、洗練されたものに信頼感を得ています。つまり、いわゆる"ブランド物"と言われるプラダやシャネルなどの高級ブランドが持っているものと同じです。

人のぬくもりを求めているんじゃないんです。かっこよくて、洗練されていて、そして高品質。だから、Webサイトのデザインはハイセンスで、高級感がありなおかつ洗練されたものでなければいけないんです。ユーザーは御社の商品にそれを求めているんです」

 

本来、デザイン表現というのはこういうことだと思うんですよね。

だから、デザイナーさんは簡単に信頼感とか安心感とか言っちゃだめだと思います。そして発注側やディレクターは、もう一歩踏み込んで「信頼とか安心ってなに?どういう状態?」って聞くべきだと思います。

 

それに答えられないなら、そのデザイナーは何も考えてないデザイナーだと捉えて良いと思いますよ。