笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

【追記あり】「こぼれ球を拾う文化のない組織はダメだ」と自分のチームに豪語していたマネージャーがいた。

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Webディレクターって名前やめようぜ的なブログを見て、それについて書いてたけどまだまとまっておらず、そんなことしてたらこんな記事を見つけて。

sonykichi.hatenablog.com

 

基本的には概ね同意なんだけど、「気づいた人がやる」が害悪なわけではないはずなんだよね、という。そんなことを思っていたら、昔の上司を思い出して。

罵詈雑言は毎日言うし、朝令暮改は当たり前。部下に対してはどうふるまっても自分は役職が上だからOK、みたいな人でしたね。だから、資料チェックなどの予定すら合わせない。「俺はお前のおもり役じゃねぇんだよ」といってスケジュールすら抑えられない不思議な上司でした。 ※そういう人に限ってやれユーザ中心だ、ペルソナだ、情報デザインだ、とかいうもので、不思議な話ですね。

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。



 

あるとき部長(上司)はこう言いました

「こぼれ球を拾う文化のない組織はダメだ。お前らはそういう意識が低いからダメなんだ」

会議室の管理がおざなりになっていて、誰もがすぐに空室状況を一覧できる状況になかったり、鍵の場所もパッとわかるようになっていなかった。それに対して10人強のチームのトップが全員に向かってそう言い放った。

 

聞いていた僕は心の中でこう思いました。

 

 

( ´_ゝ`)プッ

 

 

 

それはアナタの仕事だよね

 

 

こぼれ球を拾うのは誰の役目か

これは、そのこぼれ球がどういうものなのかによると思います。よるとおもいますが、まあ、ぶっちゃけそんなの誰でもいいよね。それで組織がうまくまわってみんながハッピーならそれで良いわけですよ。何にも問題はない。

だが「みんながハッピーなら」というところが崩れがち。

なぜそれが崩れるかというと、こぼれ球を拾うことがハッピーにつながらないから。

なぜハッピーにつながらないかというと、それをやっても給料が上がらないから。

なぜそれをやっても給料が上がらないかというと、経営層やマネジメントがそれを評価していないから

件の記事には"「気づいた人がやる」は害悪でしかない"と書いてあったけど、実は気づいた人がやることが害悪ではないんですよね。それをしている人をちゃんと評価せず、やった人が損をするからやらなくなる。要するにこれは1~10までマネジメントの話なんですよね。

ここで大事なのは「こぼれ球を拾った人はちゃんと評価するよ」っていうことにとどめないことなんですよね。その「こぼれ球」の質によるから。

たとえば、オフィスにある電気ポットがあまり洗われずしばしば汚れがち、というのを見つけて定期的に掃除する人がいたとして。これも立派な「こぼれ球」であり「気づいたこと」になるんだけど、じゃあこの人のその作業に年収一千万を出すかというと、まあ出せないですね。たぶん、注意してれば誰でも気づくことだから。

たとえば、プロジェクトの受発注において、見積もり条件の細かい部分や、プロジェクトオーナーを明確化したエビデンスをサクッと取っておける人。これも、割と漏れがちという意味では「こぼれ球」であり「気づいたこと」だけど、プロジェクトを安全にまわすためには非常に重要なところで、プロジェクトというものにはこの手の重要ポイントが無数にある。これに気づける人には年収一千万もありえますよね。注意していてもそういうスキルや観点、経験がないと気付けないから

 

「こぼれ球」の考え方にはその組織のコンセプトや思考が如実に表れるべきだし、表すべき

上記の「たとえば~」で出した二人の例は極端だけど、でもこれがビル清掃会社の話で、「凡人は見落としがちなところをきちっと拾える清掃担当」だったら、一千万円とはいかずとも高い査定をもらえるかもしれないですね。

そう、だから「こぼれ球」というものにはその組織や会社の「大切にしていること」が如実に表れるし、表れるようなマネジメントをすべきだと思うんですね。

いくら、開発会社のなかで「私はオフィスの衛生面を守っているのに!」と言ったところで、さすがにその会社の主軸である大型システム開発を安全にまわせるスキルのある人と同様に評価するわけにはいかないですから。

これはつまり「選択と集中」という意味でもあって(っていうか同じか)、それこそがマネジメントなのだと思います。残念ながら、「電気ポットの掃除を評価してほしい!」という人は、開発会社で評価されるというのはなかなか難しく、それはもう清掃サービスの会社に行った方が良いのでは、という話になるけど、むしろそうあるべきで。

 

叩かれるべきは経営者でありマネージャー

そういう意味で「こぼれ球を拾う文化のない組織はダメだ。お前らはそういう意識が低いからダメなんだ」って言い放った部長というのは、本当に滑稽な話ですね。

それが自分の仕事だということにすら気づいてない。

一方で、どうも同じ目線の人に目が行きがちなのか「こぼれ球を拾わない人」「気づいているのにやらない人」を憎む傾向にある、という人が会社という組織の中にはたくさんいますが、これもおかしいんですよね。

「気づいているのにやらない人」がそのままでいられるのは、「自分で気づいてやる人をプラス査定せず、やらない人を(相対的に見て)マイナス査定にする」ということが無いからそうなっているのであって、お金を貰って仕事をしている以上、これはある意味当たり前のことです。

つまり、悪いのは「気づいているのにやらない人」ではなく、それを放置している経営者やマネージャーのはずなんですよね。「気づいているのにやらない人」は会社から「それでいい」と言われてるんだから、何も悪くない。(ちなみにこれは産休制度にも言えますね)

現場レベルにおいては、僕はみんながいま一度「自分は何を価値に、どう経営に貢献し、誰からお金を貰っているのか」を考えることが大事だと思います。

そうすれば、「ああ、これはマネジメントがアホなんだ」と気づくので。

追記

こんなコメントをもらいました。(ありがとうございます)

はい、そういう意図はないです。
ただ、無いけど、でもそうあるべきだとも思うわけですね。

経理や総務というのはいわゆる「コストセンター」と呼ばれがちなんだけど、それとて立派な仕事であるのも事実で、ここには二つのレイヤーが存在する。

  1. 会社全体としての経理・総務の位置づけ
  2. 経理・総務という業務の中での「こぼれ球」の位置づけ(定義)

いずれにも言えるのは「そのこぼれ球を、どう捉えるのか(=評価・査定するのか)」ということは変わらないと思います。1.の方で言えば会社全体で言えばおっしゃるとおり「こぼれ球」と捉えることもできて、じゃあそれをどう評価するかという経営やマネジメントの話になる。

そういう意味では、言及されたとおり軽視している会社があるのも事実で、その査定が誤っていれば優秀な人がいなくなって経営者やマネージャーが痛い目を見るし、痛い目を見ればいいと思います。

一方で、従業員1万人の会社と10人の会社では経理や総務の業務の重さも当然違うわけで、10人の会社に3人も経理や総務の人がいたら、個々人としては軽視されてると思って良いと思うし、軽視すべきだと思う。だって、必要以上の人数を抱えているわけだから、一人ひとりに対する評価は低くないとつじつまが合わない。(それが一人でやるより人件費が下がってるなら属人化してないわけで経営側の勝利だとも思うけど)

従業員一万人の会社の経理や総務というのはおそらく部門化してるはずで、軽視なんかできないはずだし、会社によっては部門のトップとして役員を抱えているところもあるでしょうね。その場合はこの記事で書いた「こぼれ球」が部門内で起きてるはずですね。

この話において最も大事だと思っているのは「すべてマネジメントの話」と書いた通り、ちゃんと濃淡をつけることだと思うんですよ。軽視するならすればよくて、それで会社がちゃんとまわりみんながハッピーならそれが正解なんでしょう。逆に、その査定が誤ってるならきっちり痛い目を見るべきなんですよね。

一番最悪なのは「みんなにいい顔をして濃淡をつけない経営者やマネージャー」なんですよ。実際には給与差はついてるんだろうけど「君も頑張ってるね」「君のことはとても評価してるよ」といってちゃんと査定結果を伝えない。そうすると現場から不満が出る。

「評価していると言って、なんで給料あげてくれないんですか!」

って。
ちゃんと本人にも周りにも「あなたがやっていることは評価するけどそんなに重要なことじゃないよ(他にやってほしいことがあるよ)」と伝えるべきで、それを伝えずにみんなに良い顔をするのはマネージャー失格だと思います。

産休制度というのもこの典型で「うちには産休制度があるよ!」と言いながら、産休を取った人の穴埋めを現場の自助努力のみに任せてるのは、経営者やマネージャーがクズなんですよ。外には「制度が整っている」と良い顔しながら、その制度では一円も得をしない現場がそのカバーをさせられている。

悪いのは産休を取った同僚ではなく、きちんと評価の濃淡をつけずにみんなに良い顔をしながら甘い汁を吸ってる経営者やマネージャーなんですよ。

だから、この話はすべてマネジメントの話なんです。

みんな騙されちゃいけないんですよね。