笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

「作るだけのWeb屋」から脱却する5つの方法。

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めずらしく連投でございます。

基本、月に一回しか更新しないのですが。

 

えーと、先にどんな話かと伝えておくと「俺は青が好きだから青に」「キービジュアルはどーん!で、ばーん!な!」みたいなクライアントと出会ったときにどうするか、みたいな話です

 

さてさて、実は先日、WebSig1日学校に行ってきました。

 

思ったこと、すんげーーーーーーいっぱいあったのでレポ書こうかなと思ってたんですけど、もうだいぶ時間がたっちゃったし、やっぱり僕は完全に外様な人間ではないので、そんな奴のレポートって意味あるかなっていうか、意味はあるのかもしれないけどステマ感がぬぐえないのでやめました。まあ、ちゃんと中の人達と非常に近いところにいると明記すれば良いんでしょうけど。

 

で、最後のワールドカフェで「当たり前になったWebは私たちにどんな影響をもたらすか」みたいなテーマ(正式なタイトルはちょっと違ったかも)で同じテーブルに座った人と議論しました。そこに座った人たちが僕も含め受託制作の人が多かったからか、自然と受託制作を仕事としている側の影響の話になりました。で、出たのはこんな話。

 

・Webに対して決してリテラシーが高くない人からも発注されることが増えた

 →結果として、Webで解決できないようなところまでオーダーされるようになった

 →結果として、「俺の好みは青だから、緑から青にしてくれ」みたいな指示をもらうことも多くなった

・Webの価値を啓蒙するような部分も仕事になってきていると思う

・Web制作の単価もどんどん下がっている

・Webサイトをつくるだけじゃだめで、「Web+付加価値」がないと厳しくなってきた

 

 

うん。まあ、うん、うん。

今に始まったことじゃねーよなという思いはありつつ、まあ、うん(謎)

ではどうすれば良いのか?というところで、僕なりに頑張ってきて、チャレンジして失敗したり成功したりしてきたことを整理しようかなと、そう思ってみたわけです。ええ。なんだそれ。ええ。

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいディレクターのおじかんです。

 

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なんとなく残業で頑張ってる人の写真。ちなみにLIGのひろゆきさんですね。写真はPAKUTASOさんから。

 

 



 

つまるところですね、これの一つの結論って「ただ作ってるだけじゃだめだよね」になるわけですね。ただ、そうは言ってもクライアントのみんながみんな、マーケティングの知識があるわけじゃないし、当然Webのリテラシーが高いわけでもないです。僕は、今は割と大きな企業の方とお仕事させていただくことが多いのですけど、以前は楽天ショップとかYahoo!ショッピングに出店する方からお仕事をいただいてディレクションするようなところにいたこともあります。出版業界にもいたこともありますね。

 

いやあ、それこそ中華街でお土産売ってる個人経営規模の方とか、千葉の奥地(ってどこだ)でひっそりとアパレルショップをやられている方とか、そういう方々のECサイトを担当したこともあります。うん。大変ですね。マーケティングとかプロモーションに対する知識が深い大企業の方と伍してガッツリ話すのも大変ですが、日頃Webに触れてない方とのお仕事もこれはこれで大変。そりゃもう、ぜんぜん自社ビジネスと関係ないのに「私パンダ大好きだからパンダをTOPページに載せたい!」みたいなファンキーなご指示をいただくこともねぇ、ありましたよねぇ。上野動物園じゃないですよ?パンダ全然関係ない会社ですから。

 

そういうクライアント、本質論からかけ離れてしまうお客様を相手にすると大変なのは事実でしょうし、そして悲しいかな成果も出しづらい。質の高いWebサイトができなければ次のお仕事にもつながらず、ですね。付加価値、なんて言ってられんわけです。じゃあどうしたらよいのかってことです。うん。それを書いてみるお(謎)

 

 

【1】 読み物的資料「成果の出るWebサイトとは」みたいなのつくる

「俺は青が好きだから青に」「キービジュアルはどーん!で、ばーん!な!」っていう方は要するに、「Webサイトってこんなことができるけど、こういうことが苦手ですよ」「だからこういう風につくらなきゃいけないよ」ってことがわからないわけですよ。「Webサイトはユーザーが使うものである」っていうことがわからない。わかんないんだったら伝えれば良いですね。

 

でも、伝えようにも聞いてくれないですよね。打ち合わせにいったところで「IT屋の御用聞きが来る」ぐらいにしか思ってないから。「お客様である俺の話をしてやるから汲み取ってくれよな」っていう感じだったり。

 

「うーん、どうしたものか」と悩んだ僕がやってみたのがこれです。

打ち合わせで話を聞いてくれないのなら、読むか読まないかはお客様の自由として、事前にメッセージをまとめた資料を送ろうと思いました。そこには、こういうことを書いてました。

 

「お店にご来店する方も、Webサイトに来訪する方も同じ"お客様"です」

「来訪した"お客様"は何かしらの期待や問題を抱えてきます。それに応えることが大事ですよね」

「Webサイトは問題解決の場であり、サービスを提供する場です」

「そうしたらまず一番大事なのは『お客様は誰で、どんな要望を持っているか』ですよね」

「ロゴを懲りたい気持ちはわかります。でも、TVCMもやってない規模のサービスで、ロゴを思い浮かべられる企業ってどれくらいありますか?」

「その企業は、"ロゴが素敵だから"気に入りましたか?」

「家はいきなり部屋からつくりませんよね」

「ドアはどこにおく?もちろん廊下側ですよね」

「まず家全体の設計があり、そしてその前に"だれが住むのか"ですよね」

「Webサイトも同じです」

 

こういう話をPowerPointでつくってPDFにして送ってました。全員が目を通してくれるわけじゃないです。読んでくれたのは6~7割程度、共感してくれたのは4~5割程度ですかね。難しいですね。でも、4~5割でも相手が共感してくれるなら良いかなと思います。

 

ちなみにワークフローの話ではないです。あくまでも「Webサイトってこういうものだよ」っていうのを伝えるためのものです。これ、つくるのは結構大変です。でも、普遍的な話なので一回作ってしまえばあとはブラッシュアップしていくだけなので。僕はずいぶん前にこれをつくりましたが、結構いろんなところで活躍してくれます。僕自身の考え方がまとまっているようなもんなので。ただ・・・今振り返ってみると、反省しきりですね。もっと面白く、読みやすく作ればよかったなと。また今度つくりなおしてみようかな。

 

 

【2】 ヒアリングシートにビジネス的な項目を盛り込む

フリーランスや数人規模の制作会社の方でよく見かけるのが「ひたすら制作のことについて聞くヒアリングシート」です。これは僕個人的には危険だと思います。設計や開発の根拠がなくてブレやすいから。まあ、つくるものの形を手っ取り早く聞くのが手間が少ないってのはその通りなんですけどね。(別にこれが悪いというわけでもないですし)

 

ただ「つくるだけにならない」「考えることをサービスとして一部でも提供したい」なら、ヒアリングシートはよく考えてつくった方が良いと思います。具体的にはビジネスの項目をできる限り多く入れる。たとえば「競合他社はどこだとお考えですか?」とか「御社の強み、弱みは何だとお考えですか?」「業界における御社の位置づけはどのようなものですか?」とか。それだけじゃないですよ。この辺は案件やクライアントによって大きく変えていくものだと思います。たとえば「営業に対する問題や課題はありますか?」とか「広告や宣伝はどのようなアプローチを採用していますか」とかも。「顧客情報はどのように管理していますか」もあるかなぁ。

 

これを送るとだいたい聞かれますね。

「toksatoさんてWeb制作の人じゃないんですか?」ってw

相手は「Webサイトをああしてこうしてー」って考えてるので、「まずはその前にちゃんと"なぜWebサイトが必要なのか"を考えましょう」って言いたいわけですけど、前述のとおりまず相手にそのつもりがなければ難しい。だから、事前に「ああ、この人はWebサイトの表面的なことではなくビジネスの話をしにくるつもりなんだ」と思ってもらえないとつらい。だから、打ち合わせその場で見せても駄目です。相手が「Webサイトああしようこうしよう、御用聞き待ってます」という状態になったら手遅れなので。そう思われる前にメッセージを送って意識を合わせておきたいですね。

 

 

【3】 Web以外の手段を持つ

だいたい中小企業、個人経営規模だとWebだけでビジネスをしていることは稀です。そして、Webが受け持つ領域、サイズもそれほど大きくありません。大企業みたいにWebに大金をつぎ込めないし、同時にリアル、地場での活動も大事になってきます。

そうするとどうなるかというと、

 

・Webだけにかける予算はそれほど多くなく

・Webだけで解決できない依頼も多くなる

 

に、なります。

こうなると、いくら「つくるだけにならない」と思っても、考える幅も狭くなりますし、そもそも予算がありません。結局、サイトをなんとか形にするだけで終わってしまいます。どう考えても、Webサイトだけで話がすむほうがまれで、とくにこの規模の場合は連動が必須です。であれば、僕ら受託の人間がもっと幅広く対応できるようになれば良いのですよね。クライアントにとっても、いくつも発注先があるのは管理が大変です。とくに小さな会社だとその管理コストも大変なものですし。そして、その手段が増えれば提案できることも圧倒的に増えるはずです。そこでちゃんと各種媒体を連動して考えられれば、次からは「ちょっと困ってるんだけど」って相談してくれるんじゃないでしょうか。

 

自分のいる制作会社がなんでもできる必要はなくて、名刺、動画、各種広告、カタログやパンフレットなどそれぞれ専門業者がいるはずなので、そこと一緒にお仕事すれば良いだけですね。なんとなく「私はWebの人間だから」とWebの範囲しかみない勿体ない人が多いんじゃないかなーとか、思います(本人が良ければそれでいいんですけどね)。ちなみに、各種専門業者は見つけるだけなら楽だと思います。相手も仕事ほしいからw そして営業費がかかってないはずなので割引してもらってもいいし、マージンをとってもいいでしょうし。ただ、難しいのは「ウマがあう、優秀な専門業者を見つける」でしょうね。そのためにも人脈は広く持っておいたほうが良いと思います。

 

 

【4】 お金が出なくても1ページは自分が思う素敵なページをつっこむ

これはもう、意地ですねw

予算もなく、こちらが考えて設計する余地もなかなか与えられない場合、それでもやっぱり「ちゃんと自分たちで考えて提案した、納得のいくクオリティのものを公開する」をやりたいわけです。であれば、やればいいじゃんっていう話ですねw ただ、予算がないわけですから儲からないですね。だからこそ、あれもこれもと求めずに、とにかくたった1ページだけでよいので「お安くします(orもしくはサービスします)ので、このページだけは入れさせてもらえませんか?」って言うようにしていました。悔しいからwでも、その熱意は、わかる人にはかならず伝わります。

「一生懸命やろうとしてくれてるんだ」と思ってもらえるし「なるほど、こう考えるのか」というプロセスを伝える場にもなります。

 

ただ、これは案件のお金の管理まで任されている人に限りますし、当然、全体で赤字になるほどの巨大な対応はすべきではないですね。あくまでも「少し無理をする」です。

 

 

【5】 小さく初めて小さく成果を出す

これは入れようかどうか迷いました。なぜなら小さくても成果を出すのはやっぱり難しいから。でも、Webに慣れていないクライアントほど、Webサイトがひどい状態にあるわけで、場所をちゃんと見極めれば成果が出やすいのも事実。たとえばLPを一枚作るとか、お問い合わせボタンを大きくするとか、ラベリングを変えるとか。そういう超絶細かい部分から手を入れるのが良いかなと思います。

 

なぜなら、予算が少なくて済むから。

 

クライアントはやっぱり不安なんですよね。大金を出すのに。そこまでこちらを信用してよいのかもわからないし、Webにどこまでお金をかけてよいのかもわからない。だから、まずは小さく、安く、短く。ちょっとやってみて「こういう成果が出ましたよ」っていうだけで、信頼は変わってきますし、たとえば経営者じゃない方が担当者の場合は、担当者の社内承認が取りやすくなりますよね。

 

 

番外編:やって失敗したこと

ここに並べた五つのことは、そのほかのこともやってきて、失敗を繰り返して得たものです。つまり、これと同じ数以上に失敗してきたわけですね。それも書いておこうかなと思います。

 

暑苦しく講釈を垂れる

お客さんが理解してくれないからと言って、打ち合わせで長々と説明するのは完全に逆効果ですね。たとえばぼく自身が「この人はちゃんと考えてためになる話をしてくれる人だ」という信頼を得ているなら別なんですが、その前にこれやっちゃうと煙たがられます。いくらこちらがプロで知識が長けていても、聞きたくないものは聞きたくない。自分の役に立つかどうかが相手には大事なのですからね。

 

手を動かさずに一人で考えて伝える

長々と説明するのもだめですけど、短いと伝わらないですし、「長い!」と思われるぎりぎり手前まで頑張ったとしてもだめです。話は理解したとしても、それは「言ってることはわかった」程度です。クライアント自身の「納得」にはつながってないことが多いですね。そういうときは、ワークショップ形式などにして「一緒に考える」を行うと良いと思います。

 

(あきらめて)指示の意図を聞かないで対応する

あまりにこちらと意識の方向に違いがありすぎると、ときに疲弊してしまうのはわかります。でも、できることなら(もし"ちゃんと考えてサイトをつくる"をサービスとして実現したいなら)、とにかくどんな指示でも、どんな修正でも意図を聞き出し、それに対してこちらからコメントを伝えるべきだと思います。結果的にコミュニケーションコストがあがりますが、でも、やはり日々のコミュニケーションに勝るものはないですし、実はこれこそが一番大事なことかなとも思います。毎度毎度、毎日毎日「それは、こうだと思うのだけどいかがでしょう?」というから「ちゃんと考える力のある人だ」と信用してもらえるわけで。

 

 

というわけで、以上です。

誰の役に立つのかわかんないけど、誰かの役に立つといいなと思います。

大企業相手にしているような制作会社でも、新人ディレクターなら意味があるかも?