笑顔を創りたいWebディレクターの日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。

そのサイトに訪れるバリューはなんですか?

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ECサイトの相談を受けました。

というか、弊社の中で別にECサイト管理ソフトのサポート窓口があって、そのサポート担当から僕への相談。僕はECサイト管理ソフトだけでなく、Webサービス全般の担当者というか管理者なので、Web戦略とかコンサルという意味では、僕の方が位が高いわけです。まあ、Web専門の人間と営業畑のサポートですから、そりゃ違う。

で、その内容が「自社ECサイトの集客が悪い。どうしたら良いですか?」とのこと。

で、そのサイトを見て、どうやってアドバイスしたら良いでしょうかと。

他にYahoo!、楽天にショップを持っていて、尚且つリスティング広告もやっているそう。

適切な提案であれば、SEO対策の有料サービスを依頼してもいいし、リスティング広告を変更してもよいし、アフィリエイトでもいいし、ともかくどうしたら良いかわからんので提案して欲しいらしい。

っていうか、それ施策の話ばっかりしてるよねぇ

スティングだろうがLPOだろうがSEO内部だろうがコンバージョンUPのための内部整備だろうが、すべて方法論に過ぎない。いきなり方法論の話から初めても意味無いと思うんですよね。だって、どれも一長一短あるし、そもそも何のためにそれをするのかが明確でないと意味が無い。SEO対策だって、「検索上位にあげる」=「集客力UP」と言われているけど、

 ・いや、そもそもそのキーワードにマーケットはあるのですか?

 ・っていうか、そのキーワードは御社のターゲットユーザが検索しているワードですか?

 ・そして何より、集客すれば売れるんですか?(集客しちゃっていいんですか?)

っていうことをまず決めないと。

するとこれは何を決めないといけないかというと

「一体何を売っているんですか?」

ということを、決めなきゃいけない。

といっても、その解は「靴」とか「ジュエリー」とかではないですよ。

それは売っている商品の種類とかカテゴリー。

そうじゃなくて、

 ・それを買うと、お客様はどんな体験(価値)を得られるんですか?

ということです。

結局、その価値を求めてお客様は商品を買うのだし、何の価値も無いものにお金を払ったりはしない。逆説的に言えば、Webサイトは「その価値を求めている人に、価値の在り処を届ける」のが仕事。「求めている人に、求めているものを」ですよ。ものすごーく単純な話。

料理で言うと、「どんな料理を欲しがり」「どんなサービスを求めているのか」がサービスや商品の核で

「いつお腹を空かせ」「どうやってお店に来て貰うのか」が、SEOとかDMとかバイラルマーケティングです。

「格安フレンチランチバイキング」をホテルで開催するとして、誰にそれを提供するのか。

リピーターのお客様がメインならDMやメルマガ一本打っておけば良いし、

もともとそのお店(ホテル)を知らないお客様には駅からの地図が必要です。

SEOリスティング広告というのは、駅でビラ配りをするに過ぎません。

誰もが知っているホテルやリピーターならSEOなどいらないし、

知らない人にアピールしたいならSEO(駅でビラ配り)は必要ですよね~。

※もっと言うと、どんなにSEOをしたところで中身のサービスが悪かったら何の意味もありませんね。

だから、施策や方法論の話をいきなりするのなんかナンセンスだと思うのです。

「誰に」「何を」売りたいのですか?

「その人」は今「どんな状態」なのですか?

「その状態」に対して、「知らせる」「連れてくる」ためにはどんな方法が必要ですか?

満足して貰うためにはどんな方法が必要ですか?

っていうことを、きちんとプランニングしなきゃだめですよね。

っていうことは、最終的には商品が与える価値に付随、連動する形で「Webサイトでどんな体験を与えるのか」ということが大事になってくる。作り手側から言えば「何のためにWebサイトを創るの?」ってこと。

聞いてみたら、楽天、Yahoo!のショップと(自社ECサイトの)価格を変えていないそうです。

うん。それ、ユーザは一体何のために自社ECサイトに訪れるの?

楽天やYahoo!のショップには高額な出店費がかかります。

自社ECにはそれがないのだから、一番簡単なのは価格を下げることですかね。

ユーザにしてみれば、わざわざそのメーカやブランド、お店のものしか売ってないECサイトに行くメリットなんて無いんですよ。だって、楽天やYahoo!で買えばポイントがつくし、他のお店のものも一緒に買えるんだし。自分の情報やカード情報を登録しいればわずらわしい入力をしなくて済むし。楽天やYahoo!が間に入ってるから安心だし。そう、同じ額で、同じ商品を買うなら、別に自社ECサイトなんていらないんですよ。

自社ECサイトができれば顧客の囲い込みができるなんてことを、数多のカートシステムを売っている企業は言うのですが(弊社も言ってますw)、それだけで囲い込みができるわけが無い。だって、ユーザにメリットがないのだから。もう、はっきり言っちゃうと「ユーザの囲い込みをしたい」っていう自社のエゴしかないサイトなわけですよ。

自社ECと大型ショッピングモールサイトの存在意義とポジショニング。

これをきちんと考えて、両者の長所を生かすビジネスモデルを考えないといけないわけです。

自社ECができたから、来てください来てください、ウチの専門店ですから、みたいなそんなんじゃ無理に決まってます。というか、結論から言うと、TVCMが打てるような大手メーカーやブランドでもない限り、自社ECのみで集客なんてまず無理です。だって一介の小さなブランドに興味が無いのだから。サービスの範囲も、商品数も、得意とするエリアも違うのだから。そこで集客が簡単にできたら、大型ショッピングモールはいらないしね(笑)。大手メーカーやブランドは幅広いサービス、圧倒的な商品数、全国津々浦々をカバーするエリアの広さがありますが、同時に相当な数を売らなきゃいけない。維持費や従業員の数が違うのだから。小さな自社ECサイトのみで集客をしようなんてのは、そんな大企業と戦おうってなもんです。相手は広告費に数千万とか数億とかかけられるような企業に戦いを挑むとはなんと恐れ多いことか。

どちらが良い悪いということではなくて、大型ショッピングモールに出店するような小売業、中小メーカーにはそれなりのやり方があるし、そして売る数が少なくても、利益をあげられる。良い意味でスモールビジネスってことですね。

とすると、自社ECの集客なんて二の次でいいと思うんですよ。というか、相当ニッチな商売じゃない限り費用対効果が薄いでしょうから。そうじゃなくて、そんなことするぐらいなら大型ショッピングモールで勝ち抜くことを考えた方がいい。いかに、目に留まるよう、買ってもらえるように施策を打つか。大型ショッピングモールで売ったところで利益が厳しいのなら、集客に特化すべきじゃないでしょうか。

要するにユーザのディープニングによる棲み分けです。

大型ショッピングモールでたくさんの人の目に触れさせて貰い、そこから購買した人にアプローチする。一度でも購入してくれたのだから、自社のファン予備軍です。そこにアプローチをかける方がよっぽど効率が良い。で、手厚いサービスを施し、モールではなく専門店に来て貰う。専門店に来たら、モールでは売ってない商品が手に入ったり、キャンペーンがあったり、価格が安かったりする。そうしたら、次からは自社ECサイトに直接来てくれるはず。

一見のお客様=モールで対応

興味を持ってくれお客様=自社ECで対応

とすべきじゃないかと思います。

すると、自社ECサイトでは何をすべきなのかも自ずと見えてくるはず。

きちんとサイトごとのポジションニングを棲み分けし、

「そのサイトでどんな体験をしてもらうのか」

を考えることが、一番大事。

ユーザにとって、そのサイトに訪れるバリューはなんですか?ってことです。