ネット広告代理店の人々が“普通”の広告費を理解できない理由
http://www.mediologic.com/weblog/archives/001820.html
色々仕事をしていくうちに、ネット系広告代理店の人々はなぜ「獲得系」しか理解できないか、ようやく一つの答えが出た。
それは、取引のある広告主がいわゆる「コンバージョン系」「獲得系」の広告主だったり、そういう部署だったりするから(場合によっては広告費じゃなく販促費だったりする)。
Web屋にはちょっと耳の痛いお話です。
コンバージョンだったり単純な問い合わせ数や、アクセス数といったユーザアクションを数字として把握しやすいのはWebの強みであり、マーケティングツールとしての有用性の高さそのものだと思っているのですが、それが全てだと思ってしまっているということでしょうね。
普通の広告とWeb広告という切り口のお話になっていますが、つまり役割が違うと思うんですよね。全くの0からブランディング、販促をはじめると言うのなら、まず初めに消費者にリーチするべきなのは「普通の広告」だと思います。不特定多数の人にいっぺんにリーチできるから。
Webには「普通の広告」は向かないんですよ。
ユーザが情報を選択できるから。
どんなに面白いバナー貼ったって興味がなきゃ見ない。
バナーだけが万人に受けるようなものだとしたら、逆にマイナスのブランディングになるし。
訪れた先で自分のニーズを満たしてくれないから。
たとえば、僕は男性なのでワコールだとかトリンプに興味はないです。
でも、名前は知ってるしどんなものを売っているかもある程度は知ってる。
これは、「普通の広告」の中でも取り分けTVCMの影響が大きいでしょうね。
TVCMって基本的にこちらでは選べませんから。
CMを飛ばすこともありますが、基本的には15~30秒の間、消費者を独占した状態でアピールできる。しかも、驚異的な人数に対して。視聴率20%なら単純に計算すると2000万~3000万人にアピールしているわけですからね。Webでこれはほぼ不可能に近いです。この規模の不特定多数な人を15~30秒も画面の前にとどめておくのは相当難しい。
Webはその次のステップに強い。
どこかでそれに興味を持った人に、その人だけにその人用のコンテンツを用意してアピールすることができる。たとえば、僕はサッカーファンですが、日本代表特集がTVであることを知ったら、そのWebサイトに訪れて、魅力的なコンテンツをたくさん読みにくる。ただ、それが魅力的なのはサッカーファンである僕だからであって、サッカーに興味のない母にとってはゴミ同然と言っても過言ではないほど無用なものになる。
不特定多数に名前や存在を認知させることはTVや雑誌を初めとする「普通の広告」の方が圧倒的に強い。
しかし、CMではそれ以上のディープな情報を流すことができない。それほどの長い時間は用意されていないし、15秒にそれを詰め込めば物理的に無理が生じて、何を言っているのか理解できない内容になる。Webでは、それができるわけです。Webは、あらかじめ「ちょっと気になっている人」だけに対して「手厚いサービス」ができるメディア(と呼んでいいのかどうかわかりませんが)。自分のことをちょっと気になっている女の子だけに、自分のプチラブレターを送ることができるという感じでしょうか(笑)
だから、とかくTVや新聞から嫌われるWebですが、ある程度お互いが淘汰されることを前提に話せば、本来機能する世界が違う、共存していくメディアのはずなんですよね。
そして、一番大事なことは消費者が、ユーザがどういう環境におかれているのか。
そこから、必要となるリーチはどんな方法があるのかをWeb、TV,新聞等全ての方向から吟味し、組み立てることが重要なんだと思います。
その商品名をまず認知させたいならWebではなくTVCMでも一本打つべきだし、ニーズ喚起ができているなら、そこから情報を求めてくるユーザに対して魅力的なコンテンツをWebで用意する必要がある。
Webの本質と、既存マスメディアの長所を理解したコンサルティング会社っていうのがこれから残っていくんでしょうか。
身の引き締まる想いです。